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幻想のセラリウス  作者: ふたばみつき
-新たなる任務-
73/95

☆71 コウモリ

 暗闇の中、思い出したように動く影が見える。

 眠れないんだろうな。彼にとってはこの野宿はかなり答えるはずだし。


「ライルくん、眠れませんか?」

「あ、ああ。すまない、アルル、起こしてしまったかい?」


 仕方ないよね。今までは白の師団のあのベットに横になって寝ていたんだ。

 アレはイイ。スラム育ちの私からしたら、極上の睡眠環境だ。そのせいで寝過ぎて遅刻の常習犯になっちゃったけど。


「いいえ、私も眠れなかったんで」

「そ、そうか、それはよかった」


 本当は今の今まで寝ていたけど、別にそこに角を立てるつもりはない。冷静に考えると、一人くらい起きてないと不用心だし。


 私は数分寝れれば問題ない。

 スラム育ちの特性だ、根性、雑草魂でどうにかなる。


 だけど……


「ライルくんはキツイでしょ。こんな環境で眠るなんて」

「ああ、正直、君や彼が羨ましいよ、こんな所でも眠ることが出来て……」


 暗闇の中で徐々に目が慣れてきたのか、ライルくんがロックさんを方を見たのがわかった。


 ロックさんは、大剣を抱くようにし、木に背中を預けて眠っている。

 規則正しい寝息が聞こえてくる。


「彼も完全に眠ってる訳じゃ無いですよ。何かあった時の為に半分は起きてます。夢うつつって感じですかね」

「成る程。彼も、と言うのとアルル、君もかい?」


 ライルくんの言葉に頷いて見せる。

 この暗闇の中で私の動きが見えたか、それはわからないけど、反応からして何となく見えたように感じた。


「そうか、凄いな君は、ほんの少し前まで同じ候補生だったのに、僕も速く君達に追いつかなければ……」

「ゆっくりで大丈夫ですよ。これは長い期間を通して馴れるしかありませんから」


 私の言葉を疑問に思ったのか、暗闇の向こうでライルくんガサリと音を立てた。


「馴れる? ああ、そうか君はスラムで……」

「ええ、スラムで能天気に寝ていたら、次の日には冷たくなってますからね。何かあった時には咄嗟に反応できるように成るんですよ」


 しばしの沈黙が訪れる。

 ほんの少し風が頬を撫で、香りが鼻先を通る。


 そんな沈黙の後にライルくんの声が暗闇から絞り出される。


「すまない、羨ましいなんて言って。君は望んでそうなった訳じゃないのに……」

「いいですよ、私は私でホワイト・ロックに居た時は散々寝坊しましたし」


 とは言うものの、ライルくんの事だから必要以上に木にやんでいるのだろうな……

 はてさて、どうするか、なんか気でも紛らわしイイ話題はないかしら……


 あ、そうだ!


 私は近くにあった石を拾ってライルくんに見せた。


「今から、この石で面白いことをしてあげましょう」

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