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幻想のセラリウス  作者: ふたばみつき
-新たなる任務-
72/95

☆70 キャンプ

 星が瞬き、暗い夜空を飾る。

ほんのり肌寒い夜風に冷やされた身体を、眼前にある焚き火が暖めてくれる。


じわりと血が巡っていくように、身体が暖かくなっていく。


「はぁ…… あったかい……」


ホッとすると同時に漏れた溜め息。

少しだけ、肩の力が抜けた気がする。


「ああ、アンタはさかなを取ってたからな、酷く冷えたろ。冬でなくても、川の水は冷たいからな……」


 ロックさんがそう言うと、焚き火で焼いていた魚の具合を見た。

 日が落ちる前に、私が取った魚だ。


「ええ、そうですね」

「それにしても、アンタの魚の取り方は傑作だったな」


 そう言うと、ロックさんは笑って見せた。


 まあ、確かに傑作だろうな……


 何せ、私の術式で川に電気を流して、一気に魚を気絶させたんだ。

 一瞬で大漁である。傑作以外の何者でもない。笑いが止まらない、私はこれから、これで生きていこうかしら。


「それは良いんだが、君自身は感電はしないのかい?」


 そう言いったのはライルくんだった。


「ははは、そんな間抜けな話、有るわけ無いだろう。なあ、アルル!」


 ライルくんの言葉に、ロックさんが笑い声をあげた。

 その言葉にライルくんも「そりゃそうか」と言った具合に頭を掻いた。


 まったく、そんなデンキウナギみたいな生態な訳あると思いますか?


「……感電してます」


 すいません、デンキウナギみたいな生態でごさいます。


 私の言葉を聞いて、二人が目を丸くする。


「な! じゃ、じゃぁなんでお前さんは無事なんだぁ!?」

「あ、余りにも危険すぎる。き、君は何をやってるだ!?」


 二人の大声が夜空に吸い込まれていく。

 

「ああ、大丈夫です。私は雷との相性が良いんで、感電した瞬間、電気を魔力に変えてるんです。だから、無事なんです!」


 そう私は凄いのだ。


「それは大丈夫と言わないだろう、自然エネルギーに変換した魔力を魔力へ戻すのは高等技術だぞ!! 下手したら、そのまま感電して死んでたんだぞ君は!!」


 そう言うとライルくんは私のおでこをつついて見せた。


「いだい、暴力だ……」

「これは暴力じゃない!! 指導だ、いいか!! これからはそんな無茶はしないように!! 次からは皆で釣りでもして魚を取るぞ!! わかったな!!」


「は、はぁ……」


 私はおでこを擦りながら頷く。

 

 ライルくんは私の様子を見て満足したのよくわからないが腕を組むと頷いてみせた。


「ま、まあ、俺は詳しいことはよくわからねぇが、今回は飯にありつけるんだ、それでいいだろ。今度からは皆で取ろうぜ」


 私達をなだめるようにロックさんが声をかけてくる。

 しかし、それを見てもライルくんは満足していなかったらしく、さらに口を開いた。

 

「まったく君は、先日から闘いっぱなしなんだ。休んだのだって、一日程度だろ。少しは休まなければ、気力も体力も集中力も持たないぞ。それなのに、こんな無茶なことを、君に何かあったら……」

「だって、ライルくん。魚を喜んで食べてたから……」


 私は、思わず不満げに頬を脹らませる。

 

 ライルくん、あんなに美味しい美味しいって言ってくれたから、今度は一杯ご馳走してあげようと思ったのに……


 見ると、ライルくんが固まっている。


「ぼ、僕の為かい?」

「そうですよ。一杯ご馳走してあげようと思ったの!」


 私の言葉にライルくんが口をぽかんと開けている。

 

 へーん、どうせ私はバカですよ~

 前世の記憶が有っても、バカですよ~

 ふーんだ!!


 取り敢えず、私は体操座りのまま、お知りを中心にくるくると回ってみせた。

 これよくやってたんだよね、私~


「そ、そうか…… そ、それはすまない。だ、だけど、これからは、こう言うの無茶はなるべくやめてくれ。僕達は仲間じゃないか。まあ、君からしたら、いささか頼りないかもしれないがね。だから、次からは一緒に魚を取ろう、な?」


 あれ? これ、私はなだめられてる?

 わがままお嬢様みたいになってない?


「ほら、僕も君に頼ってばかりじゃ情けない。こんどからは一緒に取った魚を、君と食べたい。そしてら、きっともっと美味しいだろ?」

 

 そう言うとライルくんがにっこりと笑って見せた。


 な、な、なんて非効率的で非現実的な話をするんだ!

 別に、魔術を使った方が効率的だし。それで美味しさが変わるわけでもない、なんて非現実的な思考なんだ!


「ま、まさか、ライルくんがそんなことを言うとは!!」

「な、なんだい? 僕がこんなこと言っちゃあいけないかい?」

「いえ、良いです! とってもとっても良いです。素敵です!!」


 そう言うと、ライルくんが再び固まる。

 

「ライルくんはもっと効率主義かと思ってました!」

「い、いや。確かに効率は重要だが、それとこれとは話が違うだろ?」


 わからん、違うのか?


 思わずロックさんに視線を向ける。

 見ると、彼は何やらニヤニヤと笑っている。


 そして、手を叩いて「パン!」と小気味良い音を立てながら口を開いた。


「さっ!! そろそろ、焼けたぜ!! 今回はアルルに感謝して飯にありつこうや!!」


 その気持ちの良い言葉と雰囲気に釣られライルくんは頷いた。


「あ、ああ、そうだな!」

「うん、そうだね!」


 私も二人に釣られた様に手を合わせた。

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