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幻想のセラリウス  作者: ふたばみつき
-新たなる任務-
71/95

☆69 見送り

「メイちゃん! 元気だった?」


 そう言うと、メイちゃんは可愛いらしい満面の笑みで答えてくれた。


「うん! お姉ちゃんのお陰で元気一杯だよ、お母さんもね、直ぐに元気になったんだよ!」


 見ると、メイちゃんのお母さんが丁寧にお辞儀をして見せた。

 私もそれに返事をするように、軽くお辞儀をする。


 よかった、無事だったんだね……

 本当によかった……


 私も少しは、何かを守れるようになったのかな……


「お姉ちゃん、見てみて!」


 そう言った、彼女の手には花の冠が握られていた。


「わあ、綺麗だね! メイちゃんが作ったの?」

「うん!! お姉ちゃんの為にね作ったの!!」


 そう言うと、彼女は私の頭に花冠を乗せた。


「えへへ、お姉ちゃん!! 妖精さんみたい!! 綺麗!!」


 驚いた、わざわざ私の為に作ってくれたんだ。嬉しいなぁ……


 思わず頬が綻ぶ。


「ありがとうね、メイちゃん……」


 見ると、他の人達も私の周りに集まってきた。

 不意に、一人の老婆が私に近寄ると手を握ってきた……


「私はあの日、貴女の指揮する隊に助けられたんだ。もし、貴女が居なかったら、私は黒の師団にやられてた。どうもありがとう」


 ああ、覚えてる。

 たぶん、この人は最後に逃げていた集団にいた人。


「いえ、いいんですよ」


「アルル隊長!」


 また不意に声をかけられる。

 見ると、そこには白の候補生がいた。


 確か、彼女は……


「君は私の隊にいた……」

「はい、ミリルと申します」


 やっぱりそうだ。

 彼女は私についた血を見てみて真っ青になってた娘だ。


 前回、会った時は腰まで伸びた金髪だったんだけど……


「髪切ったんですか?」

「は、はい……」


 私がそう言うと、彼女は赤面した。

 どうしたんだろ?

 

 ハッ、と思い。彼女に耳打ちする。


「もしかして、失恋ですか?」


 私がそう言うと、彼女は大きく首を振った。そして、私の手を強く握ってきた。


「あ、貴女に憧れて、お、同じ髪型に……」


 そう言うと途中でゴニョゴニョと言い淀んでしまった。


 ああ、なるほど、確かに私とお揃いだ!


「本当だぁ、お揃いですねー!」

「は、はい!!」


 なんか、わからんが私に憧れているらしい。なんででしょう?


 ま、まあ、いいけど……


「貴女も頑張って下さいね!」

「は、はい! 貴女の隊には入るために頑張ります!」


 お、おおう……

 そ、そうか……


「アルルや……」


 聞き馴染みのある声変わり私に届く。

 パウル師範だ……


「師範、行ってきます!」

「ああ、気を付けるんだぞ!」


 そう言う、師範は花冠をした私の頭を撫でてくれた。

 なんだか、恥ずかしい……


 皆が笑顔を浮かべている……


 私が守りたかった物が、今ここにある……


 皆の笑顔……


 そして、これから。それをまた守る為に旅に出る……


 皆の笑顔を守るために……

 

 行って来ます、皆……


「皆、行ってきます!!」


 そう言って、私はホワイト・ロックを後にした……


 皆の手を振る姿が徐々に小さくなっていく。そして、いつしか点となり、またいつしか見ることも叶わなくなった。


 そんな様子を目にして、思っても見なかった感情が私の中でも溢れだしてきた。

 

「へぐっ!! ひぐっ!! ひっぐ!!」

「おい!! アルル!! お前、泣いてんのかよ!?」


 ロックさんが私が顔を見て驚愕の表情を作る。

 

 ふぇ~ん、だって……


 だって、こんな感じに成るなんて思わなかったんだもん。

 もっと、事務的な別れになると思ってたのに……


 それなのに皆が、皆がいい人で優しくて、私…… 私……


「えぇぇーーーーん!! えぇえーーーん!!」

「だ、大丈夫かい、アルル?」


 ライルくんが心配そうに私の顔を覗き込んでくる。


 咄嗟に、私は顔を隠した。


「み、見ないで下さい!! い、今、酷い顔ひてると思うので!!」

「あ、ああ、そうだなすまなかった」


 そう言うと、ライルくんは何事もなく歩き出した。


 うぅ、情けないよぉ、中身はおっさんなのに号泣してしまっているよぉ……


「ははは、そうだよな、冷静に考えりゃ、お前もまだ子供だもんな。仕方ねぇよな……」


 そう呟くと、彼は私のために頭をグリグリと力強く撫でた。


「湿っぽいのは好きじゃねぇが。ははは、いいじゃねぇか。こう言うのも悪くねぇぜ……」

「ふえぇぇーーん!! みんな、優しいよーーー!! びえぇぇーーーん!!」


 号泣してる私の肩に、ライルくん手が触れる。そして、優しく私の肩を掴んでくれた。


「今は思う存分に泣くといい。君は少し頑張りすぎなくらいだ。少し泣いたって、バチは当たらないさ……」

「ふぐぇ! ひぐっ!! ふぇ!! ありがとう、ライルくん……」


 そう言うと、二人は私が泣き止むまで、何を言わずに、ただただ静かに見守っていてくれた。


 その静かな沈黙に二人の優しやを確かに感じた……

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