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幻想のセラリウス  作者: ふたばみつき
-日常それは白昼夢の様に-
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☆6 食堂

 目の前に焼き立てのパンとシチューが置かれる。温かそうな湯気と香りを立てて、俺の食欲を誘う。

 その次に、熱々の湯気が立つ目玉焼きと、ベーコンが置かれた。

 香ばしい匂いが、これまた更なる食欲を誘う。


「さあ、アルルちゃん、たんとお食べ!!」

「はい、いただきます!!」


 食事を持ってくると同時に、食堂のおばあちゃんが快活に笑う。


 彼女の白い割烹着にバンダナ姿が妙な親近感を感じさせる。

 明らかに世界観とあってない気がするが、本人の快活な性格もあって、俺としては親しみやすくて助かる。


 手を合わせ、透かさず食らい付く!! 

 うん、熱い、旨い!!


「ほほほ、アンタは本当に良い食べっぷりだね!」

「おばあちゃんの料理、美味しいからね!」


 おばちゃんの声に頷くと、再び食事に注意を向ける。


 パンにシチュー!! 

 パンにシチュー!!

 ベーコンに卵!! 

 ベーコンに卵!! 

 そひて、シチュー!!


 俺の様子を見て何か満足したのか、おばちゃんは嬉しそうに厨房へと戻って行った。


 あの人は良くわからんが、ちょくちょく俺の食べてる姿を見に来る。

 良くある、若い子が一杯食べてるのを見るのが、好きって奴だろうか?


 まあ、それはいいとして食べる!!

 食べる食べる食べる!!

 食べろ食べろ食べろ、食べろべろ!!


「おいおい、いくら僕が急げと言ったって、そんなに急ぐ奴があるか。別に食堂(ここ)の食事は逃げないだろ……」


 呆れた様子でドッグが語り掛けてくる。

 彼はと言うと、お上品にパンを千切っては口へ、千切っては口へとしている。

 

()や!! 逃げる事だってあ()!!」


 そう言いながら俺はパンとベーコンを一緒に口に放り込んだ。

 何処と無くベーコンエッグバーガーの味がして旨い。

 パンも焼き立てで旨い。て言うか、出来立てはなんでも旨い!! おばちゃんの飯は基本旨い!!


 そして、冷めると基本美味しくなくなる!!


 だから、覚める前に食う!! 

 俺が逃がさないのは飯ではない!!

 飯の旨さなのだ!!


 旨さを逃がさず食う!!

 俺は空腹サバンナの最速チーターだ!!

 ぎゃおおおん!!


「おい、人殺し。タダ飯は旨いか?」


 不意にそんな声が届いてくる。

 これは俺に向けての言葉だろう。


 きっと、俺が師団に入る切っ掛けになった事件の事を揶揄しているのだろう。

 後にも先にも、人殺しをしたのは“あの時”だけだからな……


 声のした方向を見ると、一人の青年が立っていた。


 真紅、まさに燃える様な髪色に、これまた燃え盛るような髪型。登頂部だけを異様に伸ばしたその様は、何処と無くモヒカンに見えなくもない。


 服の上からでもわかる、恵まれた体躯に引き締まった肉体。

 そして、燃える様な紅い瞳が、コチラを真っ直ぐと睨み付けている。


 彼は、俺と目が合うと不適な笑みを浮かべた。

 俺はと言うと、シチューを啜った……

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