☆67 思わぬ珍客
私達の旅路がこれから何処に向かい、どんな終わりを迎えるのか、それは誰にもわからない。
私と言う存在が何をお越し、何を成すのか……
それに私の前世の記憶は関係するのか、それともしないのか……
それは果たして……
柄にもなく黄昏ていた時、私の部屋のドアをノックする音が聞こえた。
ライルくんかな?
それと、ロックさんかな?
私はドアに駆け寄ると直ぐに扉を開いた。
「夜分遅くに申し訳無い、入ってもよろしいなか?」
「は、はい。ど、どうぞ……」
思わぬ客人に言葉を失ってしまう。
私は客人を中に招くと、勉強机の椅子を勢いよく引っ張り出して差し出す。
「うむ、すまんな……」
「い、いえ、そ、それでこんな夜分遅くに、ど、どんな御用ですか……」
名前を呼ぶ前に思わず唾を飲み込んだ。
な、なんでこの人が私の部屋に来たんだ、意味がわからない。
「ガ、ガルバディアス閣下……」
見ると、御仁は私の部屋を少しは見渡している様子だった。そして、しばらくすると、私が差し出す椅子に、ゆっくりと腰かけた。
相変わらず、骨張った様な見た目だ、黒いローブのに唾の広いとんがり帽子。
その骸骨の様な出で立ちとは裏腹に、その落ち窪んだ眼底からは力強い眼差しがコチラを除いている。
「あ、あの……」
「此度の任務にこれを持っていけ……」
そう言うと、御仁はローブに裾から何やら取り出して見せた。
「それは……」
それは一個のペンダントだった。
銀のチェーンに紫黒の宝石がぶら下がっている。
なんだか不思議な宝石だ、紫黒とは言ってみたが、漆黒にも見えなくもない。
時折、星の瞬きの様な輝きが垣間見える。その瞬間だけ紫が浮かびは漆黒へと戻っていく。
果たして、これがどれ程の価値が有るものかわからなあ。
しかし、ある事だけはわかった。
「魔力が込められてますね。しかも、かなりの……」
「うむ、これには転移の魔術が込められてある」
転移。それはこの世界の何処から、何処かへと空間を繋げる魔術。
それ事態が、術式と同等の難度を誇る超魔術だ。
「これを持って行き、協議の場にて私を呼べ。さすれば直ぐに馳せ参じる」
「ああ、成る程。となると、私達の任務は正しくはこのペンダントを運ぶことですね」
私の言葉に御仁は頷いた。
なるほど、それなら、この人選は少しは納得できる。
最悪、私達のどちらかが死んでもペンダントさえ、協議の場に待っていけばいい。
そしたら、あとは閣下の出番だ……
なるほど、ライルくんも荷が勝ち過ぎているとは言っていたが、結局、私達は囮のような物だった訳だ……
それなら納得だ……
「了解しました、閣下」
私は恭しげにペンダントを拝借する。
「それでは頼むぞ、アルル」
そう呟くと御仁はのそりと席を立ち、部屋を後にしようと歩き出した。
そして、のそりのそりと歩くが不意にその歩みが止まる。
「どうしました、閣下?」
思わず息が詰まる。
な、なんだ、どうしたんだ?
そう思っていると、老人はおもむろに口を開いた。
「お主の術式についてなんじゃが……」
思わず、自分の鼓動が速くなるのがわかる。
か、彼は一体、何を言うつもりなのだろうか?
私の術式を彼はどうするつもりなのか。まさか、死ぬ前に、ここで開示しろとでも言うんじゃないだろうな……
そうなったら、私は……
「お主の術式の答えは空にある」
「ほえ?」
思わぬ答えが老人から飛び出した。
そ、それは……
「それは一体どういう事ですか?」
「それは、お主自身で見つけるのじゃ……」
……教えてくれないんのかい!!
「よく空を見る事じゃな、特に夜空を……」
そう言うと、老人は満足したのか私の部屋を出ていった。意味がわからん。
「……深夜徘徊老人」
私は思わずそう呟いてしまった。
仕方ないじゃん、最後の奴、本当に意味不明だったんだもん。




