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幻想のセラリウス  作者: ふたばみつき
-新たなる任務-
66/95

☆65 紅茶ケーキ

「なあアルル。これで許してくれるか?」


 そう言うと、ドッグが俺に四角い箱を渡して来た。


「え~ どうしよっかな~」


 こう言う時、女の子は便利だぜ。


 正直、昨日の事件は恥ずかしかったが。冷静になってみると面白かったから別にいいやってなった。


 かと言って、只で許すのは癪ではある。だから、ホワイト・ロックにある。ラ・グリジェの紅茶ケーキを買って来て貰う事で手を打つことにした。


 何を隠そう、俺は紅茶ケーキが好きなのだ……


 おもむろに、ドッグの待っている箱を受け取り、中を確かめる。


 ふふふ、これよこれよ……

 

 箱を開けるとアールグレイの香りがふわりと私を包み込む。


 丸いホールケーキではなく、四角のスクエアケーキ。

 クリームには紅茶の香り、スポンジにはアーモンド、そして、全体からほのかに香る紅茶リキュールの香りと、心地好い素敵な茶葉の苦みばしった香りがする。


 はふぅ……

 ああ、良い香り……


 ふふ、やはり俺は紅茶ケーキが大好き。

 なんなら、前世でも好きだったと思う。たしか……

 

「どれどれ……」


 胸を踊らせながら、ケーキを三等分に切り分ける。

 一つは俺。一つはドッグ。そして、最後の一つはロックに残しておく……


 わくわく……


 いつか買おうと思ってたけど、高いから二の足を踏んでたんだよな。

 この世界のケーキが、前世の世界のケーキとどれだけ違いがあるかもわからなかったし。

 高い金出して、美味しくなかったら嫌だしな。


 今回はいい機会だ、皆で試食会と洒落込むぞ。


「はい、ドッグ」

「ん? あ、ああ……」


 さて、いただきまーす。


 用意していた、フォークでケーキを裂く。そして、突き刺し口へと運ぶ。


「ふん!」


 口の中に紅茶リキュールの香りが広がり、クリームの柔らかい甘味と共に、ほろ苦い茶葉の苦味が風味として現れる。

 スポンジに混ぜられたアーモンドの感触が心地いいアクセントになり、口の中に存在感を出しながらも、他の甘味と調和を取りながら優しく広がっていく。

  

「ふひひ~」


 思わず、頬がほころぶ。

 おいひぃ~


 満点ですよ、この世界のケーキ。前世の世界と比べても勝るとも劣らない。

 正直、前世の記憶も曖昧だから、変に思いで補正がかかっちゃって美味しく感じないかも、と不安に思っていたけど、そんな事なくてよかった。


「うむ、これは中々行けるな。紅茶に合いそうだ」

「うんうん、そうでしょそうでしょ」


 行ける口だねぇドッグ。

 

 俺がニヤリと笑うと、彼も朗らかに笑った。

 へへへ、今回はドッグの驕りだから得しちゃったぜ。


 そして、この世界のケーキも美味しいと言う事がわかった。これは人類にとっては別に関係ない一歩だけど、俺にとっては大きな進歩だ、


 ふひひひ……


「よかった、君が機嫌を直してくれて……」

「うんうん、もうバッチリ!」


 何度も頷きながらケーキを口に運ぶ。

 再び、紅茶の香りが口に広がる。


 はう、幸せ……


 しかし、この時はまだ俺達は知らなかった。


 この数分後、俺達に追加の任務が下される事を……

 そして、その任務が俺の運命を大きく変えてしまう物だと言う事を……

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