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幻想のセラリウス  作者: ふたばみつき
-また?新たなる旅立ち-
62/95

☆61 夜、騒動

「この馬鹿者ぉぉぉ!!」


 ひいぃぃぃぃぃぃん!!


 ビックリする程の怒号が俺に向かって放たれた。

 起こっているのはドッグ。そして、起こられているのは俺、アルルちゃんです。


「君は休んでいろと言ったじゃないか!! なのに君はここで何をやっているんだ!!」

「ほ、ほえぇ?」


 何って……


 自分の手に持った物を交互に見る。

 

 左手に砥石。

 右手に剣。

 場所は井戸の前。


 やってることは剣のお手入れ。


「少しばかり、剣のお手入れをしておりましたわ」

「そんな、お貴族様みたいな口調になっても許さんぞ、君は直ぐに部屋に戻って休んでなさい!!」


 ひぃぃぃぃぃぃん、ゆ、許してくれないのぉぉぉ!?

 な、なんでぇ!? 

 さっきまで、さっきまであんなに優しかったじゃん!?


 俺の事、好きだったんじゃないの?


「で、でも。剣が……」

「剣も何も無い! 今は休むんだ!! 君はここ数日、動きづめなんだぞ!! 少しはベッドの上で休むんだ!! 君は大して身体も強くないだろ!!」


 うぅ、た、確かに……

 ぐ、ぐうの音も出ないよぉ……


「ほら!! アルル、それを大人しく渡すんだ!!」


 その圧に思わず砥石を落とす。


 周りを見ると、ドッグの怒号を聞いたのか白の団員達が何処からか、ぞろぞろと現れた。


 全員が奇異の眼差してコチラを眺めている。

 

「なに自殺?」


 あれ? なんか思ってた言葉と違う事を言う人がいるな?


「え? マジかよ!」

「おいおい、マジだ、剣持ってるぞ、ヤベェ!」


 え? 剣は持ってますけど。剣の手入れしようと思ってただけなんですけど?


「おい、あの女、自殺するってよ」


 いや、いやいやいや。

 いつの間にかに、俺が自殺しようとしてるみたいになってるじゃん!!


 確かに、パジャマに剣を握ってたら、なんか変な雰囲気もしますよね。そうも見えるかもね!!


「ほら!! アルル、大人しくそれを渡すんだ!!」


 いやいや、それメッチャ自殺を止めようとしてる人の言葉っぽいから止めて!!


「おーい、なんだこの騒ぎは!?」


 人だかりの向こうからロックの声が聞こえる。

 そして、人だかりを掻き分け、彼が姿を現した。


「おいおい、アルル!! お前、なんのつもりだ血迷ったか!?」


 ロックが俺を姿を見ると、凄まじい勢いでこちらにやって来た。


「おい、冷静になれ! 何があったか知らねぇがお前ならやり直せる。あれだけの剣の腕だ、何処でも生きて行けるだろ? そうだ、ウチの国に来い。お前の腕ならどうにでもなる。だから、その剣を直ぐにこっちに渡すんだ、な!?」

「ち、違う…… 違う……」


 ま、まさか、こんな大事になるなんてぇ。

 周りが奇異の目でコチラを見ている。


 な、なんて居心地が悪いんだ……

 

「何が違うんだ、何が気に入らないんだ!? 良いから、先ずはその剣をこちらに渡せ!! 君の様な人間を失うのは損失だ。必ず、俺が、我が国が責任を持つ。だから、今は俺を信じてその剣を渡せ!!」


 何故か、ロックが人一倍真剣に俺の自殺を止めようとしてくれてる。本の数日前に会っただけなのに……

 

 意味がわからん。


「ち、違うんだ!!」

「何が違うんだ、言ってみろ、話なら幾らでも聞くぞっ!?」


 やはり、ロックが新味になって話を聞いてくれる。

 でも、聞いて欲しい話の方向性が全く違う。


 当のドッグに視線を送ると、思っても見ない方向に話が広がってしまった事に驚いたのかポカーンとしている。


 オメー、マジぶっ殺すぞ!!

 少しは、話を収束させる為に動けや!!

 オメーが話をややこしくしたんだろうが、ダボこら!!


 辺りの喧騒が徐々に大きくなっていく。


 もうこれ以上は不味い。速く、迅速に事態を収拾させなくては……

 俺は腹の底から大きな声で叫んだ、辺りの喧騒を切り裂く様に……

 まるで、助けを呼ぶように……


「俺はッ!! 剣の手入れをしてただけなんですぅ!!」


 その瞬間、辺りを沈黙が包み込んだ。


 急激に場が冷え込むのがわかる。

 なんか、俺がスベったみたいな雰囲気が流れる。


 終わってる。


 そして、おもむろに一人、また一人とその場を後にして行く。

 徐々に群衆はまばらに成っていき、遂にその場に残っていたのは俺とドッグとロックだけになった……


「お、お、おうそうだったのか……」


 ロックが申し訳なさそうに自らの後頭部を掻いた。


 死にたい。


「す、すまない、アルル。ま、まさかこんな騒ぎになると……」

「バカ……」


 俺の言葉に二人は同時に目を丸くした。

 

「バカバカバーーーーカ!!」


 俺は剣を鞘に納めるとドッグに向けて投げつけた。


「うわ!! 何するんだ、あ危ないだろ!!」

「バーーカ!! バカバカバカッ!!」


 そして、ロックには足元に落とした砥石を拾って思いっ切り投げつける。


「おっと、石だけにロックってか……」


 ロックはちゃっかり、それをナイスキャッチしてみせた。

 コノヤロー!!


「受け止めんなよ、バカ!! もう、二人とも知らない!!」


 俺は一目散に駆け出し、自室へと走った。

 多分、その俺の顔は大層真っ赤っ赤だった事だろう。


「ああ、マジで最悪だよ!!」

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