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幻想のセラリウス  作者: ふたばみつき
-また?新たなる旅立ち-
61/95

♡60 会議

 円卓の会議室で言霊が飛び交う。

 会議は熱を帯び、舌戦の余り何処の誰がその声を発したのかもわからない程に荒れていた……


「レイム・ロックとライバールは十年前。ライバールがレイム・ロックの内乱の隙を突いた形で続いているが、現在はほぼ冷戦状態になっている。ほぼ両国で旨味の無い戦争状態になっている。停戦の仲介は容易では?」


「確かに仲介事態は容易かもしれぬ。レイム・ロックに借りを作れるのも魅力的だ。だが、協定しだいでは帝国を敵に回すことも有り得る」


「うむ、そうなれば、我々が中立であると言う前提が崩れる。小国ならばいいが、あの大国を相手にそれを行えばこの大陸の均衡が崩れるやもしれん」


「だが、上手く両国の顔を立てる事が出来れば、我々の立場は揺るぎ無い物となるだろう。そうなれば……」


「まて、先程も言った様に協定の次第ではあの帝国を敵に回すのだぞ。それがどれだけのリスクが考えているのか!?」


 はあ、馬鹿馬鹿しい。

 思わず頬杖を着いてしまいそうになる。


 あの王子様事態は面白い人だっただけに、この会議は糞程つまらない。


 別に仲介すればいいのに……

 やらない偽善より、やる偽善でしょうに……

 

 この議論を交わしている人達は何の為に“白の師団”に入ったんでしょうかね。

 どうせ、言い出しっぺに責任を押し付けて、自分だけ上手く成り上がろうとしてるんでしょう。

 恐らく、ガヤガヤ騒いでる殆どの人達が、“魔元帥殿”の失脚を狙ってるんでしょうね……


 全く、下らない……

 もう出ますかね……


「私が仲介の使者として出ます」


 私が発したその言葉に、会議室の温度が一気に下がって行くのがわかる。

 無理もない、御大を蹴落とせるチャンスだったのに、ショボい若造が出てきたんだ、テンションも下がる。


 別に良いさ、私はこれ以上の地位には興味ないですし。“白の師団”を抜けても良いすら思ってますし。


「ならん!!」


 凄まじい勢いで反対の声が響いた。

 声のした方向に視線を向ける。


 驚くべき事に、そこには“魔元帥殿”がいた。

 ちょっ、ちょっと、なんで貴方が出て来るんですか?


「何故ですか“魔元帥閣下”」

「御主には別に頼みたい任務がある」


 な? え? な、なら仕方ないか……

 うむ、うむむ、納得行かないけど……

 彼が言うなら、何か留学有るのでしょうけど…… 

 いやでも……


「“魔元帥殿”ならばどうするのですか!? 何か考えがあるのですか!?」


 そらでた、ここで彼が出て来たら、貴方の失脚を望む人達が噛みついて来るに決まってるじゃないか……

 まったく、私に責任押し付けとけば良いのに……


 いや、もしかして、私が余計な事をしたのか?


「あの二人に任せよう」

「あの二人?」


 会議室の全員が一斉に首を傾げてみせた。


 あの二人? ま、まさか……

 その二人って……


「アルルとドッグ。あの二人に任せよう……」


 彼から驚愕の言葉が飛び出して来た。


 その瞬間、会議室中が騒ぎ出した。

 当たり前だ、私でも耳を疑う。


 彼は一体何を考えているのだ。いくら、アルルちゃんを信頼しているとは言え、任せる案件の責任が大き過ぎる。


「“閣下”正気ですか? 何をおっしゃっているのか、自分でわかっているのですか!?」

「うむ、至って正気だとも……」


 再び、会議室に熱気が満ちる。

 

 当たり前だ、燻った者達に取っては絶好のチャンスだ。目の上のたんこぶである“魔元帥殿”を蹴落とせるんだ。


 成り上がりを狙う者からすれば、千載一遇のチャンスだ……


「“閣下”その人選に間違いはないと仰るのですね」

「うむ……」


 その答えに会議室が更に熱気を帯びる。

 ほのかな唸り声すら聞こえてくる様だ……

 

「では、この協定。上手くいかなかった場合、責任は“閣下”が取られるので?」

「うむ……」


 その答えに会議室中に動揺が走る。


 数百年に渡り、“白の師団”の幹部に座す“魔元帥”がその責に置いて動くと宣言したのだ。


 何て言う事だ……

 これは厄介な事になるぞ……


 辺りの喧騒を他所に“魔元帥”はおもむろに立ち上がり、ある一点を見詰めて口を開いた。


「以上が今回の会議となります。よろしかったですかな“総帥”……」


 その言葉に“白の総帥”は何を言わず、ただ一度だけ頷いた。

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