★52 蒼い騎士【挿し絵あり】
《術式展開》
彼女がそう呟く……
その瞬間、視界の端で蒼白い光が弾ける。
思わず彼女の方を振り向く。
彼女の姿が僕の目に飛び込む。
蒼白い稲光がアルルを包み、その光が彼女の染め上げて行く。
薄い緑色の髪は、薄い青色に発色するプラチナブロンドに染められ。
彼女の、大きなその瞳は青く輝き出し、宝石の青玉を思わせる物へと変色して行く。
そして、その手に握られた剣も蒼白い光を増していき、小さな稲光が弾け、小刻みに破裂音を発している。
「アルル…… そ、その姿……」
僕の言葉なんて、聞く余地も無く、彼女が跳躍する。
彼女は凄まじい速さで移動し、あっと言う間に盗賊の懐に飛び込んだ。
次の瞬間には盗賊は切り伏せられ、地面へと倒れる最中だった。
な、なんと言う早業だろうか。と言うより、彼女はあれほどの早さで動くことが出来たのか!?
その様は正に流星。
あまりの出来事に、僕は言葉を失う。
「な、なんだテメェら!!」
一人の盗賊がそう口にした瞬間、彼女が剣を投擲する。
大した力も入れていない、そう思える程に軽々しく投げた剣は、その様とは裏腹に、凄まじい勢いで、しかも真っ直ぐに盗賊へと飛んでいった。
「あぐっ!!」
盗賊の苦悶の声が上がる。
見ると、剣は盗賊の肩に深々と突き刺さっている。
「返して貰うぜ!」
その言葉をアルルが吐いた時には、すでに距離を詰めていたアルルが、剣の柄を握り、そのまま盗賊を切り捨てて見せた。
あと三人……
彼女は所持していた、もう一本剣を引き抜き様に投げる。
先程と同様に、軽く投げただけに見えるが、それは一直線に標的へと向かって行き、深々と刺さった。
残り二人……
彼女はもう一本の剣を投げる。
しかし、これは盗賊が咄嗟に腕で防いで見せた。
盗賊の腕に剣の切っ先が突き刺さる。
「ぐっ、くそッ!!」
盗賊は苦悶の表情を浮かべながら、自らに刺さった剣を引き抜く。
その時、アルルは人差し指で、その盗賊を指差した。
《雷の書 四章 指雷》
その詠唱と共に、彼女の指先から蒼白い稲光が放たれ、それは一直線に盗賊へと向かう。
本当に初級も初級の魔術《指雷》。
しかし、それは彼女の手に掛かっては、十二分に人を無力化する事の出来る魔術に仕上がっている。
それは剣の柄を避雷針にする様にして、盗賊に直撃した。
凄まじい破裂音と共に、盗賊の断末魔の声が響く。
残りの一人……
しかし、その最後の一人にも直ぐ様に彼女が飛びかかった。すると、独りでに二本の剣が動き出し、彼女の手元へと中を飛んで帰って行ったのだ。
彼女は手に剣が戻ると、すかさず片方の剣を投擲する。
盗賊も先程までの戦いを見ているので、直接受けるのは不味かろうも思ったのか、持っていたナイフで襲い掛かってくる剣を弾いて見せた。
その隙に彼女はがら空きになった懐に飛び込み、剣を振るった。
鮮血が飛ぶ。
それとも同時に、最後の盗賊が地面へと倒れた。
「ふぅ、なんとかなるもんだな……」
そう言うと、アルルは笑みをこちらに向けながら、剣を納めた。
すると、それを合図にするかの様に、稲光は収まり、彼女の見た目も元に戻って行った。




