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幻想のセラリウス  作者: ふたばみつき
-新たなる旅立ち-
51/95

★50 暗闇

 やっと暗闇に目が慣れて来た……


 鼻をつくカビ臭さ、湿った空気特有の重く垂れるような空気感は相変わらずだが、視野が確保された分だけ、得体の知れなさは大分薄れて楽になってきた。


「そろそろ、目は慣れたか?」


 彼女の姿は良く見える。“白の師団”の特有の純白の服がこの闇には良く見える。

 果たして、これは戦略的な優位性が有るのだろうか。

 それこそ、こう言った場合は黒にした方が良いのではないか?

 いや、今はそんな事を考えている場合ではないか……


「もう大丈夫だ、ありがとうアルル」

「よし」


 すると、彼女は僕の手を離すし、ゆっくりと歩き出した。

 

 慣れた目で辺りを見渡すと、なるほど、人が使っていた形跡がある。

 天井や床が削り取られて整地されている。足元に転がっている筈の岩も明らかに少ない。


 これは少なくとも“何か”は居るだろう……


「ドッグ、あれ……」


 不意に彼女が呟く。


 彼女は洞窟の先を指差している。その指の先には明かりがあった。

 通路の先、何処か大きな空洞に繋がっているであろう、そこから光が漏れているのだ。


 無論、それはある事実を示していた。


「誰か居る様だね……」

「ああ、もしかしたら戦闘になるかもしれねー。ドッグ、オメーは初めての実戦だよな。覚悟は良いか?」


 彼女が僕に視線を向ける。


 脈が跳ね上がるのがわかる。心臓の拍動が高鳴る。呼吸も僅かに速まるのが自分でもわかる。

 

 正直言ってしまえば、今の僕の状況は「口から心臓が飛び出しそう」と言った所だ……


 だが恐怖は無い……


 彼女と共に戦える事が、これ程に僕を昂らせるとは、自分でも驚いている。


 恐怖はなく、緊張と、高揚感が僕を支配して行くのがわかる。

 果たして、僕がどれだけ役に立てるだろうか……


 だけど、それでも、彼女を一人で戦場に立たせる事だけは絶対にしない。

 彼女と共に戦える、それだけの事実で僕は戦える。


「ああ、大丈夫だ……」


 彼女は頷くと、剣を抜いた。

 その刀身が闇の中でも蒼白く光る。


 美しい色だ、彼女の魔力と良く似ている。

 透き通る様な蒼の刀身。杖の代わりともなる彼女の剣。


 果たして“それ”が彼女の術式にどう作用するのか。

 彼女の術式も気になるが、それも気になる。


「先ずは、ギリギリまで近づいて様子を見る……」

「ああ、わかった……」


 僕の返答を聞くと、彼女はゆっくりゆっくりと明かりに向かって歩き出した。

 

 その先に有る物を見定める為に……

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