☆4 ホワイト・ロック【挿し絵あり】
「やっと来たな、ってそのパンはなんだ? どこにあった!?」
律儀に部屋の前で待っていたらしいドッグが、コチラを向くと目を丸くして驚いて見せた。
「やっぱり、待っててくれたのかよ。そんなんだから、オメーはドッグなんだ!」
「な!? 失礼だな君は!? 僕には一応、ハウンズって名前があるんだぞ。君だけだからな、僕をドッグなんて呼ぶのは!! っておい、聞いているのか!!」
真面目ぶって説教を垂れているドッグを他所に、咥えたままパンを引っ張って半分に千切ると、ドッグに手渡す。
「“待て”が出来た良い子には御褒美だ。ほれ半分あげるぜー」
「ああぁ…… ありがとう、助かったよ、丁度小腹が空いていた所だ、って違うっ!!」
そう言うと、ドッグは半分になったパンを口に放り込みながら声を挙げた。
おお、なんて見事なノリツッコミだ。俺も見習わなければ……
「まったく、寝坊助め。ほら、今ならまだ始業の鐘に間に合う。さっさと食堂に行くぞ。それとも、このパンが僕達の朝食か?」
「んな分けねーだろ。これは小腹が空いた時に食べる非常食だ。朝飯は朝飯で別腹だ、しっかり食わなきゃ話にならねー」
「まったく、食いしん坊め! なら、さっさと食堂に行くぞ。そうだ、あとコレを……」
ドッグが自分のローブを中をガサゴソとあさり、何かを取り出すと俺の頭に乗せた。
乗せられた物を手にとって確かめると、それは白いベレー帽だった。
それには何だが俺の名前が書いてある。
と言うより、俺のベレー帽みたいだ。
どうして、ドッグが持ってるんだ?
そう思っていると。コチラの考えを察したのか、彼は少し笑いながらも、呆れた表情を作った。
「昨日、拾ったんだ……」
ああ、なるほどぉ……
そう言えば無いなと思った。今しがた渡されたベレー帽をかぶりながら「サンキュー」と申し訳なさそうに笑ってみせた。
「よし、なら早く行くぞ」
ドッグこちらを眺めながら満足気に頷いてみせると、背を見せて歩き出した。
装飾された石造りの壁が両端を飾り、長い長いタイル張りの通路が続いている。
バロック様式って奴だろうか。まあ、俺はそこら辺の知識は霞の向こう側に置いてきちまったから、全然わかんねー。
視線を戻すと、俺達と同じ様な姿をした人達が何人も歩いている。
中には亜人であったり、ドワーフであったり、エルフと行った様々な種族の人達がいる。
大変、多種多様な場所だ……
そう、ここが俺の住んでいる場所……
“白の師団”。その総本部ホワイト・ロックだ……
「何してるんだ、アルル。早く来ないと置いていくぞ!」
ドッグが不意に声を挙げた。
見ると、彼は既に遠くまで歩いており、こちらを振り替えり、早く来るようにと手招きしている。
俺は急いでに答えると、その後ろに付いて歩き出した。