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幻想のセラリウス  作者: ふたばみつき
-新たなる旅立ち-
48/95

★47 二人の歩み

 ホワイト・ロックを出て、直ぐに存在する森中を僕達は歩く。

 

 歩を進める度に、目の前にあるアルルの軟らかそうな髪が揺れる。

 果たして、彼女は何処に向かっているのだろうか。何か宛がが有るのだろうか?


「アルル、“黒の師団”の本部を探すとは言うのは構わないんだが、何か当てはあるのかい?」

「ねーよー」


 驚愕の答えが返って来た。

 何となく予想はしていだが。もしかしたら、彼女は馬鹿なのかしれない。


 よく馬鹿と天才は紙一重と言われるが、彼女もそう言う類いの人間なのだろうか。


 それとも、“黒の師団”の本部を探すと言うのは建前で、彼女本人はそこまでヤル気が有る訳ではないのだろうか。

 それならば、それで構わない。彼女に余計な負担を掛けるくらいなら、のらりくらりとやり過ごした方が良いだろう。


 賢い選択だ……

 だが、彼女がそう言う選択肢を取るだろうか……

 いや、取らないだろ……


「当ては無いんだがよー、少し調べたい事はあるんだよ」

「ほう、なるほど。是非とも聞かせ貰えないかい?」


 やはり、彼女には何か考えがあるようだ。

 

「“黒の師団”の本部云々とは直接関係無いんだがな。先日の“黒の師団”が、何処から現れたか教えて貰ったろ?」

「ああ、成る程。そこら辺に手掛かりが無いか調べるのか……」


 うむ、やはり彼女は馬鹿ではないらしい。

 少し心配になったが、ちゃんと頭は働いているらしい。

 地頭が良いと言う奴だろうか。


「クオン師団長は、“黒の師団”が何処から来たかまでは、わからないと言ってたが。突き止める当てがあるのかい?」

「さあ?」


 その答えに思わず眉を吊り上げる。

 まあ、いい。彼女は頭が切れる。何かしらの思惑があって、動いているのだろう。

 きっと、そうに違いないさ……


「あ! あんな所に巡回の団員さんがいるじゃねーか!! おーい、ここら辺で黒の団員の痕跡とか山賊の形跡とかあったかー!!」


 見ると、木々の合間から団員の男がこちらを眺めている。


「おーい!! 聞こえてっかー!! なんか、痕跡ありましたぁー!?」


 声を掛けられた団員は露骨に狼狽えている。


 そして、しばらくまごつくと、団員の男は目線をコチラから外し、彼女の声が聞こえている筈なのに、何故か彼女の声が聞こえていないかの様なフリをしだした。


 まったく、なんて奴だ……

 

「おい、彼女はこれでも師団の隊長だぞ! それ相応の態度を取るべきだろう!?」

「これでもって……」


 団員の男は、僕の声に僅かに震えた様子を見せたが。それでもこちらの声が聞こえないと言った様子で森の奥へと歩いて行ってしまった。


「まあ、干されてるし、仕方無いか」


 アルルが苦笑いを浮かべる。

 そんな話があるか、これはいくらなんでも度が過ぎるぞ。“白の師団”はここまで腐ってるのか!?


「アルル、ちょっと待ってろ!!」

「ほえ?」


 彼女はキョトンとした顔でコチラを見上げる。

 それを確認した僕は全力で駆け出し。彼の後を追う、そして追い付くと勢い良く、その胸ぐらを掴んだ。


「おい!! 君はそれでも白の団員か!? 人の為に働く者を何故意図的に無視するんだ!!」

「いや、待ってください!! 貴方の事は無視しておりません!!」


 ここまで来て言う事がそれか!?

 こんな奴が同じ“白の師団”なんて、ありえるのか!?


 思わず、彼の胸ぐらを掴む手に力が籠る。

 

「僕がなんだ、今は彼女の話をしてるんだ!! いい大人なら、人に声をかけられたら最低限の反応位したらどうだ!!」

「ドッグ!! ドッグ!!。落ち着け、落ち着いてくれっ!! それは不味いって!!」


 アルルが僕のローブの袖を引っ張るが、もうそんなの関係ない。もう我慢の限界だ、許せん!!


「これが落ち着いていられるかぁッ!! 前々から気に入らなかったんだッ!! 師団の彼女への対応が!! それが人の為に身体を張って、命がけで戦った彼女への態度ッ、ぐへッ!?」


 な、な、な、な、なんだ!? 

 く、く、首が苦し、く、くる!?


「うぐ、うぐぐッ!!」


 し、視界が白く、白くなって行く。


 その瞬間、全身の力が抜けて行く。不思議な虚脱感と解放感が身体を襲う。


 そして、気づいた時には地面に横たわっていた……

 

「す、すまん。ドッグ。でも流石に暴力はいけねーよ……」


 そんな言葉を彼女が耳元で囁く。

 

 僕の首を、彼女の細い腕が締める。

 彼女の身体が足が、蛇の様に僕にまとわりつき、徐々に、徐々に僕を締め付けて行く。

 その度に、彼女の感触が僕に強く押し付けられる。


 薄れ行く意識の中、僅かな興奮を覚える。


 ま、不味い。ちょっとクセになりそう……


 その瞬間を最後に僕の意識が途絶えた。

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