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幻想のセラリウス  作者: ふたばみつき
-新たなる旅立ち-
46/95

☆45 剣

「貴方の剣です」


 そう言うと彼女はニッコリと笑ってみせた。

 突然の言葉に口を開いていると、彼女はその剣を俺に差し出して来た。


 純白の鞘に金の装飾。僅かに、漏れる魔力。

 間違いなく、ただの剣ではない。


 恐る恐る、それを受けとるとズシリと重い感触が腕にのしかかる。


 おもむろに柄へと手を伸ばす。


 不意に視線を彼女に向けた。すると、彼女はゆっくりと頷いて見せる。


 その手で剣を抜いてごらん、と諭してくれた。


 ゆっくりと剣を引き抜く。

 重たくも、心地よく引き抜かれ、その姿を現す刀身。


 それからは僅かに漏れ出る魔力が光を発し、うっすらと蒼く輝いている。


「きれー……」

「ええ、これは仗剣(ケイン・ブレード)。貴女の様な魔法剣士に作られた剣です。特殊な魔石を鍛えて産み出された刀身は杖の役割も、剣の役割も果たすそうです」


 最後の「だそうです」ってなに?


 俺が疑問の表情を彼女に向けると、バツが悪そうに答えた。


「それは私の贈り物ではなく。“魔元帥”からの贈り物です。貴女の事をエラく気にかけていました。まあ、覚えておいてあげてください」

「“閣下”がか!?」


 彼女の言葉に、俺はなくドッグが驚愕の声を挙げた。

 まあ、仕方ない事だろうよ。


 “白の師団”において、“あのじいさん”は雲の上の存在だからな。そんな人が何故だか贈り物をしてくれたんだ、ビックリするはずだ……


 因に、当の本人である俺は正直良くわからん。

 ありがとう、おじいちゃん、大好き、長生きしてね、位の感想である。


 だって、一回会っただけだもん。

 俺は、そこまで魔術師の世界にドップリ浸かってないんだよ。


 なんなら、ドッグの家がどんだけ由緒ある家なのかも知らん。


「これはエラい事だ。“閣下”が味方についてくれているとは、なんと心強いことか!!」


 ドッグが今にも小躍りしそうな勢いで捲し立てる。

 その内、犬みてーにグルグル回り出しそうだ。

 嬉れションとかするなよ……


 まあ、そうなる気持ちもわかるんだどな……


「だけど、直接渡しに来ないと言う事は、表立っての援助はないって事ですね?」

「察しが良くて助かります。他の幹部達の手前、手助けは出来ないとの事。組織図としても“魔元帥”ではなく、私“舞姫”の部下と言う運びになります。覚えていて下さいね」


 ゆっくりと頷くと、剣を鞘へと納める。


 寸分の狂いも感じさせない収まりだ。この剣を作った者はかなりの腕前だろう。

 出来れば、一度会ってみたい物だ……


「おい、アルル。そう言えば君は何を聞く為にここに来たんだ?」


 ドッグが俺の肩をパシパシと叩く。

 それに我に帰ると、彼女に向かって疑問を投げ掛けた。


「そ、そうだ! その、先日の“黒の師団”はどこから来ましたか?」


 その問い掛けに、彼女は首をかしげる。そして、おもむろに頬杖をつくと口を開いた。


「それがわからなくて調査中なの。アッチの森の方から来たらしいのだけど。一体どうやってあんな大軍が隠れていたのかわからないのよ……」

「なるほど、わかりました。なら俺達も森の方を探してみます」

 

 取り敢えず、手掛かりらしい物も無いんだ、ここら辺りから手を着けてみるか。

 まあ、何も見つかんねーだろうが。なんかあったら、ラッキーだ。やってみる価値はある。


 なんせ、時間はいくらでもあるからな……

 この任務が期限つきじゃないのが、せめてもの救いだな……


 部屋の端っので、鶴を折るのが任務じゃなくて良かった。

 形だけでも、やり甲斐があるのは助かるぜ……


 おもむろに森に向けて歩き出す。


「おい、アルル! 探すって、何か当てはあるのか!?」

「森には山賊とか、“黒の師団”の残党が居たりするんで気を付けてください!! いや、倒してください!!」


 無論、そのつもりよ。

 彼女の言葉に答える様にし。先程頂いた剣を高く掲げて見せる。


「この剣の試し切りもしたいんで丁度良いです。ばぱっと行って来ますよ」

「そう、じゃあ、行ってらっしゃいね!」


 後方から彼女の声が聞こえて来る。


 なんだか気持ちのいい人だ。それでいて、どこか不思議な力強さを感じる。

 恐らく、実際の実力もかなりの物だろう……


 先程、頂いた剣に視線を落とす。


 “魔導元帥”だか“魔元帥”だかは知らないが、あのお爺ちゃんも中々面倒な立場にあるらしいな。

 

 もしかしたら、俺の置かれた状況も実は大した事ないのかもしれないな。

 そう思うと、少し気が楽になるな……

 

「おい、アルル。宛も無いのにどうするつもりなんだ?」

 

 ドッグが息を上げながら小走りでやって来た。

 恐らく、今現在、俺の為に積極的に動けるのは彼だけだろう。


 まったく、そう考えるとほとほと奇特な奴だなー。

 他人の為に必死になったりしちゃって……


「なあ、ドッグ……」

「ん? なんだいアルル?」


 ありがとうな……


 そう、声にならない程の言葉と、笑顔を彼に向けて放った。


 この言葉が彼に聞こえたかどうか、それはわからないが、彼は俺の後ろを何を言わず着いて来てくれた。

 

 その足音が俺を勇気づける。

 また新しい一歩を踏み出す、勇気と力をくれる。


 本当にありがとうな、ドッグ……

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