☆3 アルル
以上が、今世での俺の過去だ……
つまり、アルルと言う一人の少女の物語だ……
自分の過去に思いを馳せながらローブに袖を通す。“白の師団”と言うだけあって、配給される衣服の類いも白が多い。本当は洗濯が大変だし、汚れも目立って大変だから好きじゃない。
配給される衣服類の中でも、唯一の黒色であるタイツを手に取り、それに足を通す。
細くて、綺麗な足が強調される。
ローブに隠れていて見えはしないのだが、俺のチャームポイントと言えるのは、この脚線美ぐらいだろうな。
次に、スカートか短パン、どちらを履くか少し迷い、短パンに手を伸ばす。どうしても、前世が男性だからなのか、スカートと言う物にはまだ慣れねーでいる。
どうしても短パンを選んじまう。
「まあ、これでいいか……」
再び姿鏡を見る。
そこには立派な“白の師団”の魔術師が立っていた。少しばかり髪が寝癖で跳ねているが、まあいいだろう、どうせ誰も気にしねーさ……
ああ、そうだ。俺の所属する組織の説明をしなければならねーな。
“白の師団”ってのは世界を守る自警団。“黒の師団”と相対する集団の総称とでも言えばいいのだろうか?
古く歴史上は何百年前にまでさかのぼるらしいが、俺はよく知らねー。目下、知るつもりもねー。
なんなら、勉強するつもりもねー。
簡潔に言うなら「“黒の師団”が世界征服をしようとしてて、それを止めようとしてるのが“白の師団”」と言う認識でいいだろう。
“白の師団”はあらゆる種族や国民が集う世界規模の組織で、それ故か国家間の橋渡し役や交渉役になることも少なくない。
そんな理由で、平和の使者とも呼ばれたりしている。
実際にはそんなことはないが、勝手に呼ばれているので止めることも出来ない。
実際はもっとえげつない組織なんだが。それはまあ、別に話さなくてもいいだろう。
またの機会にって奴だ。
さて、授業に遅刻したら面倒だ。
さっさと朝食を済ませて授業に出るか。ドッグも、もしかしたら待っているかもしれないし。早く行くとするか。
もう一度だけ、姿鏡に移る自分を見る。何度か寝癖を直そうとするが、直らないので諦め、他におかしな所がないか確認し、自室を後しようとする……
その時、クローゼットの奥に紙に包まれたロールパンが目に入った。
「なんでこんな所にパンが?」
思わず口にしたが、これの犯人は俺自身だ……
昨日、夜のオヤツに食堂のおばちゃんから貰って来たパンだ、すっかり忘れてた……
忘れてたが、これはラッキー。
「へへへ、流石は昨日の俺♪」
喜びの言葉と共にパンを咥えると、部屋を後にした。