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幻想のセラリウス  作者: ふたばみつき
-日常それは白昼夢の様に-
3/95

☆2 アルル【挿し絵あり】

 ふう、これでやっと落ち着けるな。


 溜め息を吐くと、クローゼットについている小さな姿鏡に視線を移す。


 子供っぽい顔に金色の瞳。肩で切り揃えた白っぽい金髪に、子供っぽい身体。そして、子どもっぽく細っこい四肢。

 いちおう、女の子とわかる程度の膨らみはあるがそれだけ。

 このローブを纏ってしまえば。さあ、男の子女の子どちらでしょうと言った感じだ……


挿絵(By みてみん)


 まあ、それはそれでやりやすい。

 なんせ、俺の前世は男だったからな。


 ただ、この前世の記憶と言うのも微妙な物でかなり霞がかっている。

 記憶の中にある前世の世界は不思議な場所で、鉄の塔が幾百とそびえ。鉄の箱が走る世界だった。

 この世界よりも遥かに文明が発達していて、何もかもが進んだ世界。

 俺には、そんな世界で生きていた時の記憶がある。


 だけど、なんで俺が死んだのか、どういう人生を送ったのか。それはいまいち思い出せない。

 霞がかかっていて、ハッキリと思い出せないんだ。


 しかも、その世界の知識も思い出せる範囲と思い出せない範囲がある。

 この世界で一体、この記憶をどう扱ったらいい物か、と言う感じだ……


 もしかしたら、この記憶は只の妄想で、俺は電波を受信してしまった、只の変人なだけかもしれない。


「なんで、こんなことになったのかね……」


 そう、なんでこうなったか……


 今世での俺は戦災孤児で、物心ついた時には既に路地裏の泥水を啜って生きていた。

 よく変な病気を貰わなかったなと思うが、今にして思えば、あの時の俺は既に前世の記憶を頼りにし。何とか食べられそうな苔だの、虫だの、キノコだのを選別して口にしてたのかもしれない。


 まったく、幼少期の生存本能とは大した物だ。


 そんなこんな生きていた俺に、ある日転機が訪れたんだ。


 大して色香のない。しかも、幼い俺を組伏せようとする男に出会ったのだ。


 そう、あの夢の男だ……


 あの日を思い出すと、今でも恐怖で僅かに手が震える。


 暗闇の中、顔も何もわからなかったが、あの手の恐ろしさと、醜さと、ニオイだけは今でも鮮明に悪夢として甦る。


 そして、その時に俺の中に眠る一つの才能が覚醒した。


 それが“魔術”の才能だった。


 後で聞いた話、俺の先天的な“魔術属性”は雷らしい。

 それこそ、無我夢中でがむしゃらに発動させた“魔術”は凄まじい稲光となって放たれ。その男を一瞬で消し炭にしてしまったのだ……


 晴れて、俺は人殺しである。


 あの時の凄まじい轟音と、目を見張る程の稲光は今でも忘れはしない。

 そして、その恐ろしい程の威力も決して忘れはしない。

 なんせ、人一人の命を意図も容易く絶ってしまったのだ。


 忘れようにも忘れられない。

 いくら、自分を犯そうと襲って来た男でさえだ……


 結果、その騒ぎを聞き付け、現場に駆け付けた“白の師団”の人間に俺は後々保護された。

 最初は訳もわからず、逃げ回ったりもしたんだが、最終的には捕まり今現在へと至る。


 それが今までの俺、アルルの物語だ……

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