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幻想のセラリウス  作者: ふたばみつき
-闘争それはある日突然に-
28/95

☆27 査問

 あの戦いの次の日。

 何故か、俺は査問会に招集された。


 俺の感覚的には、戦場で気絶して目が覚めたら「はい、直ぐに来なさい」である。


 思わず溜め息が漏れちまうよ。


 身体中は筋肉痛でビキビキだし。

 腰はなんか浮いてる感じがするし。

 殴られた所は大きなたんこぶになってるし。

 もう満身創痍だよ。


 なのに、査問会ってなんだよ。

 少しは労ってくれないもんかね。

 こちとら中身は男でも、身体は女の子なんだぜ。


 まったく、それにしても、この査問会で俺が何故呼ばれたか、それが一番の問題だな。

 ろくでもねーことの予感がプンプンするぜ。


 今回の戦いで何があって。どうなって、現在に至るのか。

 そこら辺は恐らく、パウル師範等が呼ばれて、あらかた説明しているはすだ……

 

 なら、なぜ俺が呼ばれたのか。

 まあ、なんとなく想像はついているんだがな。


「……それでアルル候補生は自らが生み出した“術式”を用意て、“黒の師団”の隊長格を討ったと言う事で間違いないかな?」


 ここはホワイト・ロック第三階層、太陽の間。

 大きく巨大な室内に、太陽を模した様な大きな大きな円卓が置かれている。


 そのド真ん中に俺は立たされている。

 何か悪いことでもしたのかな、俺は?


 高く段々になった席の数々から、“白の師団”の御歴々達がこちらを見下ろしている。


 まるで裁判か何かだ。


 だが、よく見てみると半数程の席が既に空いている。

 つまり、空いた半数の人達にはとって、この査問は既に意味の無い事だと思われているのかもしれない。


 そんなんでいいのだろうか査問会。

 まあ、なんかしら訳があるんだろうけどな。


「はい、間違いありません」


 大人しく問いかけられた質問に答えて見せる。

 そして、その問いを投げ掛けて来た人物を見る。


 魔術師然としたと黒くつばの広い尖り帽子に真っ白な長い髭。髑髏を彷彿とさせる骨と皮ばかりの皮膚。そして、その皮膚に深く刻まれた皺の数々。

 老いて落ち窪んだ瞳は暗く、骸骨の眼底を彷彿とさせる。しかし、それにも関わらず、時折見せる凄まじく鋭く光る眼光は、その老練さと、その凄まじい生命力を強烈に印象付けさせる。


 彼こそ、“白の師団”が誇る師団長の一人。

 サルバザール・ガルバディアスその人である。


 恐らく、この“白の師団”にいる魔術師の中では最古の魔術師だろう。

 そして、最強の魔術師の一人でもある。


 彼は“白の師団”で使わらる“魔術”の基礎を造り出した人物でもある。

 それこそ、全ての属性の魔術体系から、呪文。その論理を独りで造り出した御人だ。

 数学的に言えば、公式を産み出した張本人とでも言えばいいのだろうか。


 まさに偉人と言って過言ではない。

 そんな人が今まさに目の前にいる。

 

「して、その“術式”の内容とは如何様な物であるか…… その、開示するつもりはないか?」


 いかにもバツが悪そうに口を開く。


 まあ、そうだろう。

 自分の“術式”を開示する魔術師なんてそうそういない。

 居るとすれば、金銭目的で“術式”を開示するか。あるいは、先代から受け継いだ“術式”が自分には使えないから、一定の契約の元、誰かに開示するか、と言った所だな。


 実際に、俺もこの“術式”を開示すればかなりの富を得るだろう。

 少なくとも、俺の代は遊んで暮らせるだけの資金は手には入る。


 正直な所、魔術師としての誇りはない。

 俺に取って“魔術”は、飽くまで何かをする為の手段でしかない。


 だから、研究者として名を挙げるつもりも、魔術師の大家として成り上がるつもりもない。

 と言うことは、“術式”を売り払って、この戦争から、一抜けするのも選択肢としては悪くない。


 俺の“術式”は簡単だし。原理さえわかれば、多くの魔術師が使用出来るだろう。

 だから、きっと良い値で売れるハズだ。そうすれば、随分裕福な暮らしが出来ると思う。あのボロっちい孤児院も改修できるかも……


 だがな……


「申し訳ありませんが、“術式”の開示をするつもりはありません」


 俺は一切の迷いなく、そう答えた。

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