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幻想のセラリウス  作者: ふたばみつき
-闘争それはある日突然に-
27/95

☆26 切り裂く剣

 ぶっつけ本番でやれるか!? 

 いや、やるんだッ!!


 刹那、自分の回りを包む磁界に全力の“魔力”を込める。

 アチラの手に握られた鉄棍と強く反発する様に磁力を操る……


 言わば、アイツの持っている鉄棍は一本の磁石だ。

 そして、俺の周りの空間自体にも磁力が立ち込めており、この空間事態が一つの磁界になっている。


 磁石は、反発する面同士が衝突しようとすると、凄まじき勢いで反発し、それとほぼ同時に、お互いが一つの磁石なる為に直ぐ様反転し、吸着しようと動き出す。


 なら、この磁界に全力の“魔力”を注ぎ込めば、彼の持つ鉄棍も凄まじい勢いで反転する可能性がある事を意味する。

 彼の突進力も相まって、それはそれは凄まじい勢いで反転するはずだ。


 これが上手く行けば、磁界の磁力に鉄棍弾き飛ばされるはず。

 そうすれば、勝てる!!

 やるしかねぇ!! やってやるぜぇぇッ!!


 彼の手に握られた鉄棍がこちらに迫る。

 そして、それは俺の喉元でピタリと止まった。


「なッ!!」


 男が目を丸くする。

 俺も目を丸くする。

 

 アチラとしては当たり前だ、この土壇場で鉄棍が突然動かなくなったのだ。目を丸くするのも無理はない。


 こちらとしては反発する磁力を利用して、武器を吹き飛ばそうとしたが失敗した。目の丸くするだろーが、それは……


 だが、この一瞬の動揺は大きく戦況を変える。

 剣を握る手に、力と魔力を目一杯込める。


《専権磁界》


 この“術式”は電気を帯びる物すべからなく対象になる。

 勿論、それは人間も例外ではない。そして、彼はもう何度も俺と切り結び、俺の磁力の宿った剣を何度も受けている。


 彼の身体は、俺の支配下にある磁力が既に宿っている。

 そして、鉄棍が動かなくなった今、彼を守る物はない。


 ただ思いっきり“魔力”を剣に込め、剣が向かうおうとする先へと腕を振り下ろせば、彼を自動的に切り捨てることが出来る。


 つまり、俺の勝ちが確定する。

 その時、彼が笑いながらおもむろに口を開いた。


「アンタ、やっぱりやるじゃない。アンタみたいなのが最後の相手って言うのも中々悪くないわね♪」


 彼は優しい口調でそう呟いた。

 その声色に思わず手を止めてしまいそうになった。

 

 しかし。“術式”が起動してるせいで、俺の意思に反して、機械的に剣を振るう手は、その切っ先を彼の身体へと振り下ろし、意図も容易く彼の身体を切り裂いてみせた。


 鮮血が目の前に飛び散る。

 彼の身体から、まるで赤い花が咲いたかの様に血が吹き出した。


 そして、彼は力無く地面へと倒れ込み。

 ゆっくりと眠る様にその瞳を閉じた。


 その美しいとも思える姿に思わず見とれてしまう。

 本物の戦士とは、その散り様も美しいのだろうか……


 余りの衝撃に言葉を喪う。

 だ、だが……


 か、勝った……


 そう思った瞬間、身体中の力が抜け、地面へとへたり込んでしまった。


 突然、視界が霞む。


 きっと、精神力も“魔力”も限界だったのだろう。意識が遠退いて行くのがわかる。

 やがて、上体を起こしておくのすら億劫になり、力無く地面に横たわってしまった。

 

 三角屋根の街並みが目には入る。


 その街道の彼方から、こちらに向かってくる人影が見えた。


 誰だろうか……


 最後の力を振り絞り視界を定める。


 すると、こちらにやって来ていたのはパウル師範であることがわかった。

 いつもの冷静な顔からは想像も着かない程に血相を変え、こちらへと走って来る。


「ああ、師範。よかった生きてたんですね」


 そう呟いたのが最後。

 そこから、俺の記憶は無くなった。

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