☆10 魔術の授業
俺の意識を睡魔が襲う。
船を漕いでいるのが自分でもわかる。
途切れ途切れ、意識を失う。
その度にドッグに脇腹をつつかれ、我に帰る。
なんとか、意識を集結させ、授業に挑むが、睡魔はその度に俺を襲ってくる。
そんな最中、先生の声が耳と頭に響く。
「我々、“白の師団”では、それぞれの“属性”に対し“魔導書”が存在し。そこには一章から百章に及ぶ様々な“魔術”が記載されています。これらは後半の章になる程、高位で強力な術となっています」
栗色の長い髪をした女性が黒板を叩く。
「これには一章毎に個別の“詠唱”が用意されており。内容は“魔術”を行使する為に必要なイメージを呼び起こす文言となっています。これに“魔力”を流すことで“言霊”と成し“魔術”として行使する形になります」
栗色の長い髪が揺れる度に、彼女の豊満な胸が揺れる。
それを目にして、更に眠気に誘われる。
「主に一章から九章までが“基礎魔術”。十章から十九章が“応用魔術”となります。貴方達は正式な団員になるまでに少なくとも、どれかの属性をこの位までは修めて下さい」
彼女の名前はウルララ。
二十代で白の師団の講師となった天才だ。
白を薄い紫で装飾したケープとワンピースを纏った可愛らしい格好をしている。
そのケープから覗く大きな胸が揺れる。
「二十章から三十九章が“初級魔術”。四十章から七十九章が“中級魔術”。八十から百が“上級魔術”と言う区分になっています」
彼女の教鞭が熱を帯びる。
しかし、そんな事とは関係なく、俺は眠くなっていく。
「これらの“魔術”は“白の師団”で独自に作られた“魔術体系”となります。無論、他の“魔術体系”を習得するのも悪はありません。しかし……」
教鞭の熱が更に帯び、講義が佳境を迎える。
俺の睡魔も佳境を迎える。
「しかし、十九章までの魔術は、あらゆる体系の“魔術”を修める基礎と成り得ます。なので、どのような魔術師を目指すとしても、そこまでは修めることを強く勧めます!」
ドッグが俺の太股を仕切りに擦る。
それはセクハラなんじゃないか? と思いもしたが、俺が起きないのを見て、全力でつねって来たのでマジで起こしに来ているらしい。
「また、基礎である十九章まで修めた後も、更なる章を習得すれば、いずれ、あらゆる技術を修めた魔術師となり。その最高到達点として“術式”を産み出すこと出来るやもしれません」
“術式”それこそが、魔術師の最高到達てん……
てん、じゅつしきとはー、えーと、あーと……
ああ、もう駄目だ、眠いよ……
「“術式”とは……」
彼女の声が耳に届くが、それがどんどん籠った物へと変わっていく。そして、徐々に途切れ途切れになっていき、何時しか完全に途切れてしまった……
俺の意識はここで消失した。




