25話 お揃い
さて。程なくして僕たちはカピバラざえもんフェアの会場に到着。
前にも後ろにも進みづらいほどに人が多い。それなのに、天羽さんは、僕と繋いだ手を引いて、様々なカピバラざえもんを見ては手に取ってみたり撫でてみたり、時々僕にも笑顔を見せてくれる。
「あ」
ふと見て、すぐ分かった。ちょんまげが生えてる、焦げ茶色のストラップ。
「天羽さん。これ」
「あーっ! 私持ってる!」
そう、天羽さんの通学カバンに付いてるのと、全く同じストラップだ。
「これ、すぐ売り切れるから、中々見ないんだよー!」
「そうなんだ。すぐ売れるくらい大人気なんだね」
「うん!」
……ふと、思う。
これを拾った所から、天羽さんと話せるようになれた。いくじなしの僕だったけど、これを失くした天羽さんを悲しませたくない一心で、勇気を出せた。
……初めての、繋がり。
「……これ、買っていいかな」
「え?」
「その……お揃いと言うか……カバンに付けても、いいかな」
やばい。だいぶ恥ずかしい。
さっき手を繋いだ時は、目を合わせられなかった。なのに、今は、恥ずかしいけど目を見ていたいと思えてきて。
「……うん。お揃い、だね」
天羽さんが、恥ずかしさを隠しきれないはにかんだ笑顔で、頷く。
その瞬間、人混みの鬱屈さが花びらと共に吹き飛ぶようで。
繋いだ手をお互いに握り返す、2人だけの秘密の会話が、尊くて。
この幸せが……続けばいいのに。
そう願っても。
死の運命が……僕の幸せを許さない。




