24話 似合ってる
桃色の花柄マーメイドスカート、黒いシャツに、白いカーディガンを肩にかけている。ウエストがキュッと絞られていて、天羽さんのスタイルの良さがより分かりやすくなっている。
そして、朝付けていたシュシュを外し、ストレートロングの髪型にしている。いつも見るはずの栗色の髪だが、ショッピングモールの照明に照らされて、明るい茶髪に見えもする。
そしてそして、髪先やカーディガン、マーメイドスカートなど、どの部分もひらりひらりと揺れ動く。人が近くを歩いて起きる風でさえ、ふわりふわりと遊んでいるようだ。
「……どう、かな」
天羽さんが、目を合わせずに小さく問う。
それもそうだ。今日このタイミングで僕と会う約束はしていない。僕に魅せるための服を着ているとはいえ、心の準備は出来ていないはず。
でも、堂々と服装を見せてくれているこの雰囲気から、何となく、もっと見てほしい、会えて嬉しい、と思っているようにも見えて、途端にこう口に出てしまう。
「似合ってる。可愛いね」
「っ! あ……ありがと」
いつもの僕のように噛み噛みで言っている。相当に恥ずかしいのだろう。あまりジロジロと見ない方が賢明か。
「あ。天羽さんも並ぶ?」
「……うん」
天羽さんが、静かに僕の隣へ。
やはり。距離感の近さから、オレンジジュースを買いに来たのは分かっていた。
「なんか偶然だね」
「だね。びっくりしたよ」
「僕もびっくりした。天羽さんの声がすると思ったら、違う人に見えてさ。大人な感じで雰囲気が違うね」
「……えへへ。そんなにびっくりしてもらえて良かったよ」
なんて言って、天羽さんはいつもと変わらない笑顔になる。
「あ。そうだ、石上くん。他に誰かと来てる?」
「え? ううん」
「そっか……私、今日は文実ちゃんと鈴子ちゃんと来てるの。この後、お昼ご飯とか、ゲームセンターに遊びに行くとか、カラオケ屋さんに行くんだけど、良かったら一緒に来る?」
「!?」
チャンス到来。ここで僕が付いていけば天羽さん達をカラオケ屋に行かせないように誘導できる。天羽さんから提案してくれるなんて、運が良い。
「ありがとう。僕も一緒に遊びたい」
「うん、分かったよ。じゃあ、あとは2人にも聞いてみ……あれ? 鈴子ちゃんからだ。もしもーし」
そう言って、天羽さんは携帯で電話をする。
その時、同じタイミングで、僕の携帯電話も振動する。……苺谷さんからの電話だ。
「もしもし」
「ごめん、オレンジジュースいらない」
「え? あ、分かった」
「あと。私と鈴子ちゃんは帰るから。……くっくっく。じゃあね」
「えっ? ちょ、何笑ってんの! ……切れちゃった」
苺谷さんと涼風さんが、帰る。このタイミングで。
天羽さんを見てみる。ポカンとした表情をしている。
「鈴子ちゃんがね、急用が出来て帰るんだって。文実ちゃんも、塾があるみたいで」
……ああ。これは、間違いない。
「……石上くん。どうする?」
「どうするって……僕は全然、大丈夫」
「そっか……わ、私も……だよ」
顔が見れない。目線を上げられない。
その代わり、僕は、隣に並ぶ天羽さんの右手を左手で握る。一瞬驚いた天羽さんだけど、ゆっくりと軽く握り返してくれた。
「……あの、あのさ」
「うん」
「一緒に、カピバラざえもん、見に行こ」
「…………うん。行こ」
僕は天羽さんの手を引き、人混みをかき分けていく。
ここが人混みで良かった。心臓の音がバレなくて済む。




