~ 切り札の問題点1 ~
数日後、鍛冶屋から試作品を完成させたとの知らせが入り足を運ぶ。
店内には2人が複雑そうな表情で試作品の銃を眺め、不穏な空気が流れています。
「どうかなさったの?」
「どうもこうもねぇ。一応作ってみたが、使い物にならねぇぞ。嬢ちゃん」
「そう。問題点を聞かせてもらっても?」
手を差し出し、銃を受け取りながら話を聞きます。
「弾はなんとかなったが、本体がすぐにいかれちまうか初期不良が起きちまう」
弾を入っていない事を確認して、トリガーを引いてみますが特に異常なし。
「どのように壊れたのかしら」
「引き金引いた際に、すぐに弾詰まりを起こしちまう。たまに発砲に成功するが、2発目以降撃てやしない」
「原因はわかってますの?」
「わかってたら苦労しない」
「暴発……銃が爆発したりは?」
「そんなもん起きるのか」
「火薬が使用されているもの、当然ですわ。2発くださる?」
助手さんから弾を受け取り、マガジンに詰め込み引き金を引いてみます。
ガシャンと小さく金属音が聞こえ、弾詰まりを引き起こしている。
マガジンを外すとポロっと1発の弾が落ち、マガジン内には2発目が入っている。
銃を振ってみるとシャカシャカと音が聞こえ、原因がわかったかもしれません。
「大体わかりましたわ」
「ほんとか」
「その前に、分解して確かめましたの?」
「いや、してねぇが」
「そうだと思いましたわ」
少しため息をつき、呆れた表情を見せます。
「はぁ~」
「だから分解しましょうといったじゃないですか
「そんな余裕なかっただろ」
「そうですけど。鍛冶師は何事も見ただけでわかるって言って、頑固として」
「喧嘩はあとにしてくださる?」
口論になりそうな空気を止め、静まり返った事を確認した上で話を続けます。
「話を続けますわ。原因はバネですわね」
「バネだと? あんなもんが原因なのか」
「原理はわかってますの?」
「知らん」
「よく、ここまで作れましたわね」
「褒めるなやい」
「4割程しか褒めてません」
「4割は褒めてくださるのですね」
「……こほん。ボウガンの原理とほとんど同じです。しなやかな木を引っ張り、反発の力で矢を撃ち出します。その原理をバネに置き換えているので、弦の部分が耐えられなければ意味がありません」
シャカシャカと銃を振りながら、原因を聞かせます。
「予備のバネ、持ってきてくださる?」
「それならここに」
準備していた様で、カウンター下から取り出す。
巻き具合がバラバラで、直線に跳ねず横へ飛び出してしまう作り。
「ふん、ゴミですこと」
「ゴミだと!? これ作るのにどれだけ苦労した事か」
「どの様に作りましたの?」
「あぁ? そんなの、手で作ったに決まってるだろ」
「……はぁ~、だからですのね」
バネをポイっと床に捨て、呆れた表情を見せてあげます。