前世は普通人で彼氏持ちだった
初投稿です。
最後までお読み頂けると嬉しいです。
メグはムカついていた。
「身体中痛いわ…。足なんてパンパンに浮腫んじゃってるし」
メグは緩めにお団子にして纏めていた髪をするりとほどく。ほんのり癖毛な灰緑色の髪がはらりと背中に流れた。マナー講座の中の姿勢矯正は地獄のトレーニングだった。
ここファーバァル王国は16歳になる歳に貴族の子らを中心に王立学院に入学する事が定められている。
平民でも商家の子供や割と裕福な家や優秀な子供等が入学する事ができる。
大体は貴族の子供が多いので王立学院が身分差をなくした平等を掲げていても、全く機能していない制度になっている。
7歳から今の年まで淑女教育はおろか勉学等はストップしている為、学院に行ったらかなり浮くだろう。マナーに至っては平民レベルといっていいんじゃなかろうか?
それを今から教育って、ダンスやらカーテシーやら姿勢矯正やらで全身筋肉痛でつらい!
言葉遣いも回りくどい言い回しをしないといけないし毎日毎日詰め込み教育、反対よ!
だがメグはふふっと笑う。
「私ったら前世の記憶があるから学問にいたっては全く問題ないわ」
そう、7歳の不遇の精神的ショックから夢を通して前世を少しずつ思い出していたのだ。
「しかも、学術教育レベルが前世より低すぎでしょ。私、絶対コーラルより頭いいわよ。もとはあんまり頭よくないけど」
鼻息あらく独りごちる。16歳なんて高等教育機関なはずなのに、調べたら小学校?中学生みたいなレベルだった。何それ、算数?数学じゃないんだって呆気にとられたわよ。数学は苦手だけれど…
私、これでも大学までいったよ。頭そんな良くなかったけども(大事な事だからもう一度言っとく)キチンと卒業して大手会社で事務も経験したし、その後は個人事務所の事務全般やってたのよ(ドヤぁ)あ、でもここはPCないなっ(汗)
前世の私はどうやってその生を終えたのかな?
覚えてないなぁー…。痛かった、かな?
でも、安心してた。なんか変。
そう、雪崩のように人が倒れてきて?圧死したのかな…。うん、でも私を抱きしめるように守ってくれてた人がいて。すごく大好きな人。私の彼氏。優しくて大っきい手でいつも頭撫でて、頬を撫でてくれる人で。すっごい無口でいつも私ばっかり喋ってたんだけど優しい顔して私の話聞いてくれる人。1つ年上で、付き合って長いし結婚しようって話してて…あれ?結婚してたかな?一緒に住んでたかな?とにかく、それから事故にあった。
ーー多分一緒に死んだ…?
ーーもしかして一緒の世界で生まれ変わってる?
わからないがメグの今の状態じゃ調べられないのは確かである。
彼を思い出してから恋慕は強くなって、きっと今生でも結婚はないだろう。できない、彼以外には無理だから。貴族は政略結婚が常だけど、こちらは何としても回避しようと思ってる。あの不遇をネタに脅してもいいかもしれない。父は多分それで折れるんじゃないかな。
頭がズキズキして心臓のあたりがキュッと締められるような苦しさを覚えて考えるのはやめた。
もしかしたら、一緒の世界にいたら会えるのかもしれない。会えてもわからないかな。前世と顔も声も全く違う、きっとお互いそうだろうね。
ここを出たら学院の寮暮らしなんだな、と少しにまにまする。新しい場所に少し期待、人との交流は久しぶりだから大丈夫かな?
口角が上がってしまうのを指で頬をむにむにと揉んでほぐす。
ーー会いたいな。あなたに。
私だって転生してるし、同じ時間で亡くなったなら一緒であってほしい。
ーーでも顔も形も違う私だから、あなたも違うよねきっと。
また考えてしまった、切なさで心臓がきゅーっとする。さみしい、会いたい。
それから、ぱんっと両手で頬を張って気合いを入れた。
最後までお読みくださりありがとうございます。