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ドラゴンの転生  作者: 藤塲美宇
第八章 和解と再会

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「レイス……来るならもっと早く来いよ」


「はは、本当にすまぬな。さて……昊よ、その手は回復できてるのか?」


「ああ、もう少し時間がかかりそうだが……」


 俺の手は魔物の手に変化していたにもかかわらず、火傷でだいぶ傷ついていた。


「ふむ……お主の力を封印した核をどうにか奪わねば、コウは収まることはない。ミーティス!」


「な、なんじゃ!」


「門を開ける準備はできているのか?」


「う、うむ……いつでも!」


「よし。なら……異界(あちら)に行くぞ。昊、お主は回復し次第参戦可能か?」


「ああ」


「うむ、ミーティス!」


「今度はなんじゃ!」


「儂が合図したら、門を開けよ。コウと儂は異界(あちら)で戦う」


「り、了解した」


「昊、回復が間に合わなくても、一緒に来い。お主がいなければ意味がないからのう」


「わかった」


 俺は静かに頷いた。


「儂らが門をくぐったら、すぐに閉めよ。よいな?」


「承知した」


「葉月殿は絶対に門をくぐるな」


「なぜです?」


「将来……子を持ちたいのであればな」


 レイスは目線をそらし、つぶやいた。


「え?」


「異界の瘴気は……長く残りやすいんだよ。特に女の人には」


 葉月は一瞬驚いていたが、自分を納得させるように頷いた。


「……わかった」



 そこへ、弥生と中川が戻ってきた。


「みんなー!」

「ご無事でしたか?」


「弥生! 中川! 光輝は? 大丈夫そうか?」


「うん、母さんが今見てる。魔力も落ち着いてたし、起きたら施設に送るって」


「そうか」


 それを聞いてほっとした。


「ふむ、お主は樹殿のご子息だったかの?」


「あ、はい。えっと、弥生です。え? もしかしてレイス様、ですか?」


「うむ、いかにも。なるほどお主が……」


 レイスは弥生のことをまじまじと見た。



 弥生はあたりを見渡すと、驚きを隠せない。


「え? あれ? あそこで倒れてるの父さん? そ、昊、その手どうしたの? いったい……何があったの?」


「今から、異界の門を開く。俺とレイスはコウとあっちで戦う。ここで戦うのは危険だし――」


「儂も全力を出せんしな」


 レイスは肩をすくめ手を広げた。


「弥生もここに残っていたほうがいい。むこうの瘴気は本当に強いから」


「え? 異界の瘴気って……そ、そんなに、なの?」


「うん」


「そうだな。弥生殿は体ができておらぬゆえ、異界(あちら)に行くのは控えたほうがいいだろう」


 弥生は何かを決意したように手を握り締めた。


「昊、オレも行く!」


「ダメだ! 弥生も残れ!」


「昊は半分人間みたいなもんでしょ? 浄化の力が必要になるかも」


「…………」


 レイスはそれを聞いて何も答えない。ただ、顎に手をやり考え込んでいた。


「大丈夫、門の近くで待機するだけ。ねぇ、ミーティス、門は閉めたら、すぐ開かないかな?」


「いや、すぐ開けられるが……」


「なら、何かあったら逃げ込めるね」


「そ……そうじゃが……しかし」


 ミーティスは異界がどんなものか知っている。だから、弥生の身を案じているようだった。


「ダメだ! 俺だって自分のこの状況で何が起こるかわからないんだ。それにもし弥生に何かあったら樹さんに顔向けできない」


「前に、経験をもっと積めって言ったの、昊じゃん」


「いや、そうだけど……」


「弥生! あんたねぇ……」


 葉月は止める勢いで、弥生との間に入ってきた。すると、今まで黙っていたレイスが口を開いた。


「ふむ、なかなか良い心がけだな」


「レイス?」


「よいのではないか? 弥生殿は光の精霊と契約したのであったな」


「あ、はい」


「体に影響が出るやもしれぬが、それでも行くか?」


「はい!」


「レイス! お前は止める立場だろう!」


「昊よ。こういった経験も少しはさせねば育つものも育たぬぞ。それに、正直浄化できる者がいた方が助かる」


「でも……」


「大丈夫だよ、昊。オレ、光属性の魔法、だいぶ使いこなせるようになってきてるだろ?」


「……弥生、本当に行くのか?」


「うん」


 俺はため息しか出なかった。



「では、弥生殿。お主には異界に行ったら、結界を張ることを頼みたい」


「わかりました」


「うむ、瘴気はそれで少しは軽減できるが、浄化魔法はかけ続けるのだぞ」


「はい!」


「弥生……何の装備もなしで行くから、俺もどうなるかわからない。だが、もし何か体に変化が起きたらすぐに引き返せ。いいな?」


「うん!」



「では。葉月殿。先程の魔法を頼む」


「は、はい」


「――彼のものに力を。〈影禍双刃〉」


 葉月がかけた魔法はレイスの周りを覆う。その光は心臓の方へと集まり、吸収されていった。


「すまぬな。葉月殿は樹殿と一緒にいるがよい」


「……はい」


 レイスは葉月がその場から離れたのを確認すると、コウの方へと歩いて行った。


「さて、コウよ。こうして戦うのは久しいのう」


 レイスは拘束されたコウの前に立つと、「ふうっ」と息をした。


「全く、お主も手間のかかることをしてくれたわ!〈疾風(シハル)〉!」


 レイスの手から出た鋭利の刃物のようなものがコウを切り刻む。


「……あれ?」


「どうした? 弥生」


「レイス様が使ってる魔法……オレらと一緒のはずなんだけど、少し言葉が違う」


「? ああ、魔法名が違うって?」


「うん」


「あれは古代語の中でも最も古い言い回しだからじゃないか?」


「古い?」


「うん、古臭い言い方だから、違って聞こえる」


「そうなんだ。全く違う魔法みたいだ」



 レイスが本気を出せていないせいもあって、コウとの攻防はしばらく続いた。

 コウは〈拘束〉を解こうともがいている。だが、レイスの魔法が解かれることはなかった。

 レイスが近づこうとするとコウは縛り上げられているにも関わらず炎を吐き、応戦していた。


「仕方ないのう……その口も塞ぐか〈拘束(ヤヌラ)〉」


 レイスはさらにコウを縛り上げるとしっぽをつかんだ。


「ミーティス!」


「レイス! 開けるぞ!」


 ミーティスが門に触れ少し押すと門はゆっくり開き始めた。それと同時に濃い瘴気が流れ込んでくる。


「うぉぉぉぉぉ!」


 レイスは雄たけびとともに、コウを門に向かって投げ飛ばした。


「よし! 昊! 行くぞ」


「ああ!」


「昊! 弥生!」


 葉月が心配そうに俺たちを見ていた。


「二人とも、気をつけてね」


「ああ」

「うん」


 俺と弥生は頷いた。

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