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くそ……タイミングはよかったのに……。
その間に、葉月は魔法の詠唱を始めていた。
「闇の精霊よ。冥府よりいでし大いなる影。重き苦痛を与えよ〈漆黒之闇〉!」
黒く大きな塊がコウの頭上に出現するとコウをその中に引きずり込んだ。
「な、なんだ? この魔法……」
「闇属性の上級魔法なんだけど……」
「もしかして……圧縮魔法か?」
「うん……やりすぎ?」
その中でコウのうなる声が聞こえる。球体は少しずつ小さくなっている。
「いや、それくらいじゃないと、たぶん――」
黒く大きな塊から何も聞こえなくなった。だが、その瞬間、球体がはじけ飛び、コウが姿を現す。
ほとんど無傷。さらに眼光が鋭くなったところを見ると、怒りを買っただけのように見えた。
「……効いてないな」
「あれぇ? おかしいな」
葉月は眉間にしわを寄せて首を傾げた。
葉月や樹さんの魔法がここまできかないなんて……それほど、コウの力が強いのか?
真っすぐ降り立ったコウの姿を魔眼球で見た。胸のあたりに光るものが見える。
ん? まさか……あれは?
それが核なのか確認したくても、コウがすぐに這いつくばり、見えなくなってしまった。
樹さんと葉月は身構えた。
葉月は即座に、次の魔法の詠唱を始める。
「地の精霊よ。奈落の轟音、裂かれし大地の怒りを受けよ〈大地憤怒〉!」
這いつくばっているコウの足元にひびが入り、そこから勢いよくマグマが噴出した。
コウはそのマグマに氷の息を吹きかけ固めてしまう。そのまま、その吐息は葉月の方へと向いた。
「ダメか!」
葉月はそれをよけ、樹さんの方へと駆け寄る。
「なら、これはどうか……風の精霊よ。天より降りし光刃、招来せし神風、切り裂く剣となれ〈迅雷烈風〉!」
樹さんはすかさず、コウの氷の息にぶつけるように風の魔法を使った。
ぶつかり合ったところで風は勢いを増し、稲光がコウを襲う。しかしそれすら、コウに払われてしまう。
「上級魔法をことごとく……さすがコウさん!」
「父さん! 感心してる場合?」
コウは大きく羽を広げ羽ばたく風の塊が樹さんを襲う。
その風の勢いを樹さんは上手く利用していた。風にのってコウの頭上へ飛んでいた。
「火の精霊よ。我の拳に力を! 我流・業火鳳凰拳!」
樹さんはその拳に炎をまとい、一直線にコウへ降下した。
ドォォォォォーーーーン!
まともに受けたコウはその場で倒れこんだ。樹さんは近づき、様子を伺う。
「気絶してる」
目を覚ます様子はない。
俺はコウの胸のあたりをのぞき込み、光っていたものを魔眼球で確認した。
「うん、これだ。俺の魔力の核」
「よし! 昊君、今のうちに核を」
「でも、どうやって取り出すの?」
「コウには悪いが抉り出すしか……」
その時、コウはいきなり目を覚まし、爪を立て樹さんに振り下ろされていた。
「! しまっ……」
樹さんは吹き飛ばされ、壁に打ち付けられる。
「ぐぁぁぁぁ……!」
「樹さん!」
「父さん!」
「くそ!」
コウを見ると体が光っている。
「力をためてる! 葉月! 樹さんとこの場から……」
間に合わない。この二人は守らないと!
俺はこの二人の盾になるように立ち、コウの方に両手を広げた。
できるだけ、魔力の壁を作って防御すれば二人は助かるはず。
魔力を手に集中させる。その手だけ魔物のように変化していった。
「昊! 何を……」
コウの体にたまった光が一気に開放される。それが大きな爆発となって俺たちを襲った。
魔力の壁を作ったにも関わらず、広げた手のひらは焼け始めた。
爆発が収まり始めると爆風が魔力の壁を壊した。
俺たちは爆発の衝撃波に吹き飛ばされ、壁にたたきつけられた。




