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結晶化されたコウの体の前に光輝と手をつないで二人して立った。すると、光輝はクスクス笑い始めた。
『こうして手をつなぐの、なんか変な気分』
「そうだな」
『僕、このまま光輝の中にいたほうが、ソールと仲良く一緒にいられそうだなー』
「馬鹿なこと言うな。そしたら、光輝がかわいそうだろ」
『ええ? そこは、うまくやるよー』
光輝は口をすぼめていたが、少し嬉しそうだった。俺はそんな顔をみて少し、自分でも口角が上がったのを感じた。
「もう、嫌ったりしないから、素直に戻れ」
すると、光輝はこぼれんばかりの笑顔で「うん」と答えた。
「コウ……全力で挑むぞ」
『できる限り、僕も抵抗はしてみるよ』
光輝の体が光りだすとその光が胸のあたりに集まりだした。その光が結晶に包まれたドラゴンの胸のあたりに入っていく。それと同時に、光輝はその場に倒れこんだ。
「光輝!」
葉月はすぐに光輝の顔を見ると「大丈夫」といって弥生を呼んだ。
「弥生! 光輝君を連れていったん家に! テオさん!」
葉月は中川に光輝を背負わせた。
「了解! 行こうヤヨイくん」
「うん! オレも光輝の様子が安定してるのがわかったら、すぐ戻るから」
「弥生、急がなくていい。光輝を優先してくれ」
「わかった! 姉さん、無理はしないでね」
「うん」
「昊もね」
「ああ」
俺と葉月は目を合わせ、同時に頷いた。
ビキ!
コウの体を覆う結晶は大きくひび割れ始めた。
「義兄様! コウがわらわの力を上回った。結晶が割れる!」
光輝を連れ、弥生たちがここを去ると同時に結晶は砕かれ、ドラゴンが姿を現した。ドラゴンの姿をしたコウは地べたに這いつくばった。
「グォォォォォォ………」
コウの意識は感じられない。すべてを憎むように牙をむき咆哮を俺たちに浴びせてきた。その圧は建物の壁を揺らす。
「人間になると、こんなにも恐ろしい生き物だったとは」
「これは腕が鳴る! ボーンドラゴン以上だね。よし! 結界を張る。しばらくはここが崩れる心配はなくなるだろう」
「お願いします」
樹さんはやる気満々で結界を張ると走り出した。俺は樹さんとは反対方向に走り、背面へ向かった。
コウは何かを拒むように、大きく口をあけながらもがいている。
中でコウが抵抗して抑えてくれてるんだ。
樹さんは走りながら、魔法の詠唱を始めた。
「地の精霊よ。縄を作り出し彼の者の動きを止めよ〈拘束〉!」
コウは床から出てきた縄に縛られ、身動きが取れなくなった。俺が葉月に目をやると詠唱の態勢に入ったのが分かった。
「闇の聖霊よ。波動をもって滅せよ〈闇打〉」
「パン」とコウの体の周りから破裂するような音が鳴った。
ド……ド、ド、ドドドォン!
破裂音に重なって、強い衝撃が何度も打ち込まれた。
コウはその衝撃の反動を利用して、尻尾を大きく振りまわした。樹さんはそれをよけつつ詠唱を始めた。
「火の精霊よ。地獄より破滅させし劫火、我が手に召喚〈灼熱地獄〉」
ズドォォォォォン!
大きな炎の塊は樹さんの手から放たれコウの全身を焼き尽くす。
しかし、コウは雄たけびを上げながら、炎を払うと魔力の縄もほどいた。
「おお? もう解かれてしまったか!」
じりじりと近づいていた樹さんは距離をとった。
その隙に俺はコウの後ろに回り込み、壁を使って頭めがけ三角蹴りをした。
「うぉぉぉぉりゃぁぁぁぁ」
ドォォォォォーーーーン!
「グォォォォォーーーー」
コウは意表を突かれたのかバランスを崩し、頭をぶるぶる振っていた。
これでもコウが中で抑えてる。今のうちに核の場所を特定しないと……。
魔眼球で見てもなかなか核の場所が特定できない。
コウは意識がはっきりしてきたのか、俺の方をゆっくり睨んできた。




