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光輝は目をつむり、胸に手を当てた。一瞬、顔を歪ませると静かに目を開けた。
雰囲気が一気に変わる。光輝の体の中に別の何かの気配を感じた。背筋が凍る。これは、魔物の気配だ。
でも、この感じ……懐かしい。
姿は光輝だが、内側の気配はまったく別の何か。この雰囲気は――
「……コウ……か?」
伏し目がちだった顔を上げ、俺と目が合うとふわりと笑顔を見せた。
〈……久しぶり……ソール〉
「! そ、その言葉……」
『ああ、こっちのほうが今はいいか』
「コウ……何だな?」
『うん、そうだよ、僕はコウだ』
「……っ」
俺はたくさんあった言いたいことを、飲み込んだ。
今はコウの状況を聞いてみないと――
「何で、今まで……光輝の中に?」
『……たまたま、見ちゃったんだよ。光輝くんが暴走してるところを……それで、思わず、ね?』
「それで、光輝の中に入ったのか」
『うん。君たちに見つからないようにするの苦労したよ』
光輝は苦笑いをしながら、頬を掻いた。
「……光輝はコウがいないと不安だといっていた」
『うん、でももう本当は離れても大丈夫なんだ』
「そうなのか?」
『光輝は興奮すると、力が溢れてしまうことがあるんだけど、もう落ち着いているだろう?』
「うん、まったく魔力を感じなかった」
『それはね。ソール、君のおかげでもあるんだよ』
「え? どういうことだ?」
『魔力は君が吸い取っていた。だから、僕は自我を保って光輝と話すことができたんだ。おかげで、光輝の中は居心地が良かったよ』
光輝は幸せそうな顔をした。
「魔力を吸い取ったって……昊、そんな能力があったの?」
「し、知らない」
俺は大きく首を振った。
『うーん、なんていうか、君と光輝は……あとで説明するよ』
「なんだよ」
光輝は「ふうっ」とため息をついた。
『今は光輝の体を通じて話してる。体に負担がかかるから、手短に話そう』
「ああ、うん」
『それで、ソールが僕を探してるってことは……切羽詰まってるね?』
「……ああ、俺の力を取り戻したい」
『そっか……やっぱり、力が必要になっちゃったか』
光輝は残念そうに目線を落とした。
「それに戻らないと、本当に……」
『うん、僕もそろそろ戻らないといけないとは、思ってたんだけど……光輝がかわいくて、つい』
「お前……それが離れられない理由か?」
『……エヘ』
「エヘって……それじゃあ、戻れるのか?」
『うん、さっき光輝と入れ替わる前に話をしたんだ。少し寂しい思いをするけど、また会えるからって。そしたら、納得してくれたよ』
「そうか。でも、光輝から急にコウの魂が抜けて、本当に大丈夫なんだろうな」
『うん、大丈夫。必要だったのはほんの少しの勇気だった。でも、それはソール、君がさっき教えてやっていたから、大丈夫だよ』
コウはまるで光輝に言い聞かせるように胸に手を当て言っていた。
『それじゃあ、僕を光輝の体と一緒にミーティスのところまで連れて行ってくれるかい?』
「え? 光輝も? 魂だけで行くのは?」
『体が生きてる状態の魂って、浮遊してると結構危ないんだよ』
「そ、そうなのか。でもあそこは瘴気が強い。まだ小さい光輝が行って大丈夫か?」
『うーん、あまり吸わないようにしないとね』
光輝が俺の後ろにいる二人をじっと見た。
『……ソール、君の後ろにいる子たちは導師だろう?』
「え? ああ、葉月と弥生だ」
俺が光輝に紹介すると、二人は会釈した。
光輝は二人をまじまじと見るとにこりと笑った。
『なら、大丈夫だね』
「なんで、言い切れる?」
『瘴気を浄化できる光属性の使い手と、僕の苦手な闇属性の使い手がいる。何かあった時のために君たち姉弟もついてきてくれるんだろう?』
「はい」
「……はい」
葉月ははっきりと答えたが弥生は不安そうにしていた。
『この二人も来てくれるなら、こんなにも心強いことはないね』




