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光輝は少しずつ落ち着きを取り戻し、真っ赤に腫れた目をこすりながら、鼻をすすった。
「光輝……辛いこと言わせて、ごめんな」
「ううん……でも、前にコウはそろそろ……お別れの時が来るって……言ってたんだ」
「コウが?」
「うん、コウはぼくに力の止め方をずっと教えてくれてた。ぼくは溢れやすいから、静められるようにって、おまじないを教えてくれた。大きく息を吸って、六つまで数えてって」
「それで、溢れなくなった?」
「うん、あと、そらにいちゃんと一緒にいるといいって、教えてくれた」
「ん? それはどうして?」
「んーっと、カンシ? できるからって」
カンシ? 監視か! アイツ、五歳の子供に何言ってんだ?
「でも、ぼくそらにいちゃんといると、なんか……うれしいんだ! コウに言われたからじゃないよ? そらにいちゃんといると、ほっとする」
「そっか」
「ぼく、コウと離れるの……怖い。だって……また傷つけちゃうかもしれない」
「光輝……実はな。俺も光輝と同じ力を持ってる。それも、俺もうまく力が使えてない」
「! え? そらにいちゃんも?」
「うん、今はいろんな人の力を借りて、少しずつ使いこなせるようになった。ある程度力の使い方が分かったから、普通に暮らせてるんだけど、それじゃダメになったんだ」
「ダメになった?」
「強いやつと戦わなくちゃならなくなった」
「強い……ヤツ?」
「うん、俺の周りの人たちをそいつから守りたいんだ」
「……まもる」
「それには、弟のコウに力を貸してもらわないといけないんだ」
「……コウに?」
「うん、だからもし光輝が良ければ、コウとお話させてくれないかな?」
「え? でも、どうやって?」
「前に光輝の体を借りて、コウが話をしているところを見たことがあるんだ」
「そうなの?」
「本当に一瞬だけどね。だから、もしかしたら光輝がコウに話しかけてくれたら、光輝を通じて話ができるんじゃないかと思ったんだよ」
「……うん、でもぼくどうすればいいか、わからないよ?」
「あー……えーっと?」
俺は後ろにいる葉月を見た。葉月は俺の横でしゃがみ、光輝の目線に合わせた。
「光輝君、目をつむって心の中で話しかけてみて、きっと答えてくれるはずよ」
「……うん」
「光輝、別に無理にとは言わない。嫌だったら断ってくれていいから」
光輝は目線を下にすると少し黙ってしまった。俺が背中をさすってやると顔を上げ、俺の目をまっすぐ見てきた。
「……そらにいちゃん、聞いていい?」
「うん? 何?」
「ぼく、コウがいなくなっても、ママと暮らせるようになるかな? ぼく、ちゃんと力、抑えられるようになるかな?」
「……俺は、光輝ならできると思う」
「本当?」
「うん。光輝は今までちゃんと力を抑えてたよ? 力を持ってるのに、全くその気配を感じなかった」
光輝はほっとしたように力が入っていた肩が下りた。
「それに……もし、コウが抑えてたら、ここにいるおねーさんたちが真っ先に気付くはずだから」
俺は隣にいる葉月をさすと、光輝はびっくりしながら、葉月と弥生を見た。
「そうなの?」
「え? ええ、そうよ」
「オレはそうでもないけどね」
「でも、コウはあのお兄ちゃんには気をつけろって、言ってたよ」
光輝は弥生をさした。
「え? オレ?」
「なんで、弥生を?」
「えっと、なんか……ジョーカ? させられちゃうからって」
「ジョーカ? 浄化か……弥生、そういう……魂の浄化とかできるのか?」
弥生は大きく首を振った。
「いや、そんな簡単に魂の浄化なんて、オレできないよ?」
「え? そうなの? コウはあのお兄ちゃんは光が強すぎるから、近づかないでって……」
「オレ、まだ見習いの身分だから、できないよ。……ああ、だからか。もしかして初めて会った時、怖がってたのって、それで?」
光輝はこくんと頷いた。
「そうだったんだ……姉さんじゃあるまいし、見つけたからって、すぐに浄化はできないから、安心して」
「弥生? なんか、考えなしに私がやってるような言い方ね」
その葉月の低い声に弥生は震えあがっていた。
「オホン、もし、光輝がコウと離れたくないならそれでもかまわない。でも、少しだけお話させてくれないか?」
「うん、じゃあ、コウに話しかけてみるね?」
「うん、頼む」




