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次の日。
「昊くん、連れて来たわよ」
「ありがとうございます。園長……。それと、急にごめんな、光輝」
俺は若葉園長のもとに行き事情を話し、渡瀬家の修練場へ光輝を連れて来てもらった。
「ううん、どうしたの? そらにいちゃん」
「昊くん、本当に大丈夫なの?」
「はい、光輝には危険がないようにします。ただ、万が一のことがあるので、ここで話させてください。それに、葉月や弥生もいますので大丈夫です」
「なぁ、昊……本当に光輝の中に?」
弥生は信じられないようで、俺に耳打ちをしてきた。
「それを今から確認するんだよ。魔物の気配とか見つけるの、得意なんだろ?」
「それは、姉さんだけだよ。オレは得意じゃないって」
「ちょっと! 何、こそこそ話してるのよ!」
「「いや別に」」
俺と弥生は隠し事を話していたわけではないのに、なぜか怒られてる気分になった。
「まぁ……分かったわ。光輝くん、また後で迎えにくるから」
「えー? 帰るのやだ! そらにいちゃんと一緒にいたい! ここにお泊まりしたい!」
「園長。もしかしたら遅くなるかもしれないから、今日はこちらでお預かりしますよ?」
「そう? でも一応、夜にまた来てみるわね」
「そうですね」
修練場はいつもと変わらずひんやりとしている。そこに光輝を座らせた。
「さて、光輝。今日はちょっと聞きたいことがあるんだ」
「聞きたいこと?」
「うん、光輝は……起きてる時とか、夢の中で真っ白いドラゴンに会ったことない?」
「!?」
光輝は体をこわばらせて、目を見開くとすぐに俺から目を逸らした。
「光輝?」
「し、知らない! 知らない! 知らない知らない!」
光輝は大きく首を振り、耳を塞いだ。
俺はそっと、その塞いでいる手を外した。
「光輝、知らなければ、別にいいんだ。ただ、俺はその白いドラゴンを探していてね」
「え? 探してる?」
「うん、そのドラゴンはずっと昔、俺の弟だったんだよ。だから、お話したいと思ったんだ」
「そらにいちゃんの、弟?」
「うん、今は本当の弟じゃないけどね。光輝はちょっと、不思議な力があるだろう? だから、夢とかに出てくる可能性が高いんだ。会ったことない?」
光輝は俯いたまま、しばらく黙っていた。
やっぱり……違ったのか? レイスが来たあの夜、確かに光輝は古代の言葉を言っていた。それに、あの気配はコウにとても近いものだった。
「光輝……違うんだったら――」
俺はこれ以上は聞き出せないと思い、俯いてる光輝に頭に手をのせた。すると、光輝は小さい声で答えた。
「……ある」
「え?」
「その、真っ白いドラゴン、ぼく、会ったことある」
「あ……あるのか? そのドラゴンに?」
「……うん。いつも夢に出て来てくれて、ぼくを助けてくれる」
「そうか……光輝を助けてたのか。相変わらずなんだな……。もしかして、そのドラゴン『コウ』って名乗ってないか?」
光輝は少し困った顔をして俺から目を逸らすと、小さく頷いた。
「そうか、やっぱり……『コウ』なんだな?」
俺は少しほっとした。コウはやはり近くにいた。あの日の夜、光輝が喋っていたのはコウだったんだ。光輝の中にコウはいる。でも、何で?
「なぁ、光――」
「ねぇ……そらにいちゃん、どうして会いたいの?」
「え?」
「もしかして……連れて行こうとしてるの?」
「光輝?」
「コウはぼくの大切な友達なんだ! お願いだよ! コウを連れて行かないで!」
光輝は両手で着ているシャツをぎゅっと握りしめ、今にも泣きそうな顔をした。
俺は小さくため息をつき、震えている光輝の手を優しく握りしめた。
「どうして……連れて行って欲しくないんだ?」
「ママ……」
「ママ? 光輝のママ?」
「コウがいないと……ぼく、力でママ、ケガさせちゃう」
「コウがいなくなると?」
光輝は大きく頷いた。
まさか、と思っていたが――
「コウが光輝の力が溢れるのを止めてるのか?」
光輝の目には今にも溢れんばかりの涙が溜まっていた。
「ママ、ぼくのせいでケガして……目……覚まさないって……だから、ぼく……ぼく……みんなと一緒に、いないほうが……いいかもって」
「それで、みんなとも距離をとっていたのか」
光輝は必死に涙を流さないように堪えてきたが、大粒の涙が頬を伝った。辛かった気持ちが溢れだすように光輝は大声で泣いた。俺はそんな光輝を抱きしめることしかできなかった。




