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俺は左肩がなんだかうずいた。思わず左肩を押さえると、隣にいた葉月が心配そうにその肩を見つめてきた。
「昊……その肩、気になるの?」
「え? ああ、何だか……嫌な感じがした」
「義兄様……魔物が力を奪う時、どうするか覚えておいでか?」
「ん? ああ、確かどこでもいいから、噛みちぎるんだよな。だが、心臓に近いほど力を奪える……あ、そうか」
「うむ、その左肩、今は傷すら残っておらんじゃろうが、コウが義兄様の力を奪う時に肩を噛みちぎった」
「……っ」
葉月は思わず口を塞ぎ、驚いた声を押し殺した。
「そうか……それで、なんか嫌な感じがするのか」
俺は何となくうずく左肩を強く掴んだ。
「義兄様。奪い返す時はどうするのか、覚えておるか?」
「……うん。俺の力の核となるものを見つけ出して奪う」
「そう。本来なら、力を奪うのは魔物を食えば済む話。じゃが、義兄様の力は強力だったゆえ、宝石のような結晶にして核にしたのじゃ」
「どうして?」
「そうしなければ、逆に己が力に食われてしまう」
「俺って……一つの属性でも、そんなに強かったんだな」
「義兄様! お忘れか?! 義兄様の力の中で火属性は最も強い力だったではないか!」
ミーティスはイライラしながら歯を食いしばっていた。
「はい、そうでした」
「ふぅ……まさか、あの時はコウが義兄様の火属性を封印したとは思わなかったがのう」
「そういえば、ミーティスは知らなかったんだな」
「うむ。聞くどころではなかったからのう。コウがここに来たときはすでに邪竜化し始めておったし」
「え? 待って、その核は個体だから誰でも扱える……ってこと?」
葉月は恐る恐る俺を見た。
「まぁ、そうなるな」
「だから、コウは自分の中に取り込むことにしたのじゃ」
「どういうこと?」
「結晶化すれば、道具となるから扱いやすくなる代わりに、奪われたりしやすくなるんだ」
「じゃが、体内に隠せば、己を倒さない限り、奪われることはない。ただ、それには危険が伴うのじゃ」
「危険?」
「うむ……過剰な力のせいで自我が崩壊するのじゃ」
ミーティスはこぶしを握り締めた。
「『邪竜化』って、そういうことだったの?」
「それをわかってて、コウは力を取り込んだんだ。ほんと、馬鹿なやつ!」
俺は悔しくて、頭を掻きむしった。
「でも、そしたら……どうやって取り返すの?」
「その核は義兄様にしか見えんはずじゃ。義兄様、今、眠っているコウの姿から何か見えるか?」
目の前にいる結晶の中に眠るコウを『魔眼球』で見たが何も感じ取れない。
「いや、何も」
「……そうなのじゃな。やはり、魂がないせいで核の場所はわからぬ、ということか」
「そういえば、魂がいなくなったってレイスは言ってたが」
「うむ、丁度一年ほど前じゃ。コウの気配がなくなってな。気配を追ったのだが、痕跡が消えてしまったんじゃ。まるで、わらわたちから隠れるように……」
「そうだったのか……でも、一年経ってるとなると、タイムリミットが近づいてるな」
「そうなのじゃ! 早く魂を見つけて、この体に戻さねば……本当に死んでしまう!」
ミーティスは俺にすがるようにしがみつき、その手は小さく震えていた。




