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ドラゴンの転生  作者: 藤塲美宇
第七章 役目と追憶
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3

 それから数日後。

 学校のテスト期間が終わったこの日、大神に「遊びに行きたい」と誘われて、少しだけ付き合った。それでも、帰宅時間はいつもより早い。お互い、いつもと違う時間のはずなのに、渡瀬家の近くの交差点で葉月に出くわした。


「あれ? 昊、テスト明けだよね? もう少し早く帰るのかと思ってた」


「あー……まあ、大神にちょっと、付き合わされた。ついでに買いたいものもあったし」


「大神君? まだつるんでるのね」


 葉月は露骨に嫌な顔をした。


「葉月は大神のこと、嫌いなのか?」


「……昊の友人に文句つけるのは気が引けるけど、はっきり言って嫌いよ」


「へぇー、そうだったのか。いい奴なんだけどな」


「昊にとってはね! 私にとっては嫌いな存在よ」


「何か、されたのか?」


「ほら、前にも話してたでしょ? 『幽霊屋敷』の話。あの後、クラスが別になるまで、ずっとあの時のことイジってきたんだから! あー腹立つ!」


「あー……そういえば、そんなことしてたな」


「あの男! 今でも許せないわ!」


「今はそういうこと、言わなくなったけどな」


「当たり前よ! いつまでも子供じゃない……あれ? 昊、スーパー寄ってきたの?」


 葉月は俺が手にしている買い物袋が目に入ったらしく、中身を覗き込んできた。


「ああこれ? 冷凍パイシートと生クリーム。明日は俺、夕飯の当番だろ? ほうれん草とベーコンがあるから『キッシュ』を作ろうと思って」


「え? 『キッシュ』? わぁ! 楽しみ! って、なんか昊、随分料理が上手くなってない? まさか、フランスの家庭料理までできるようになってるなんて」


「そんなことねーよ。俺なんてまだまだ……ていうか、泉さんが教えるの、うまいんだよ。褒め上手でさ」


「それは言えてるかも。導師の修行の時はすっごい厳しいけどね」


 たわいもない話をしながら玄関に入ると、見知らぬ女性物の靴が置いてあった。


 依頼者かな?


 しかしその後、俺は何故だか懐かしい感じを思い浮かべた。


 ん? この感じ……知ってる。


 その時、応接室から一人の女性が出てきた。


「では、ご連絡、お待ちしております」


「「あ」」


 そう言って出てきた女性の顔を俺は凝視した。初めて会うのに何故か懐かしい。見た目はとても落ち着いた感じの綺麗な人、そんなイメージだった。ただ、その人の目には生気はなかった。

 お互い、何故だか目を離せない。しばらく、見つめ合っていた。


「あれ? 昊君、帰ってきたんだね」


 樹さんのその言葉にはっとし、俺はすぐに道を譲ろうと、その場を避けた。すると女性は樹さんのほうへ振り向いた。


「あの……渡瀬さん……すみません。先程の依頼、キャンセルさせていただけませんか?」


「え? 探し人の件ですか?」


「はい……今、見つかりましたので」


「え? 見つかった……って? もしかして」


「はい。今、目の前にいるこの子が、そうです」


「昊君……だったのですか?」


 女性はそう答えると俺の方をもう一度見てきた。


「私は守谷清香(もりやきよか)と言います。あなたのお名前を聞いていいですか?」 


「え? あ、はい。俺は真空寺昊……です」


 俺は何故か何の疑いもせず、答えていた。というか、話さなければいけない気がしていた。


「昊さん、というのですね。二人で話したいのだけれど、お時間はありますか?」


「……はい」


「それなら、守谷さん。ここを使いますか? 我々は出ていきますので」


「いいのですか?」


「ええ、構いません」


「では、お言葉に甘えさせていただきますね」


 この人からは嫌な感じはしない。でも、何故か胸がドキドキしている。何かに焦っているような、そんな感じがする。


 清香さんとはテーブルを挟んで対面に座った。すると、葉月がお茶を俺たちの前に置くと、何故か心配そうに俺のほうを見てきた。


「葉月?」


「あ、し、失礼しました」


 葉月は一礼すると、顔を赤くして恥ずかしそうに出て行ってしまった。


 何だったんだろう?


「さっきの子……とてもかわいらしいわね」


「え? ああ、はぁ……」


 清香さんは出されたお茶を一口すすり、それを茶托に置くと、視線を逸らさず、こちらを見つめてきた。


「あの、俺に何の用ですか?」


 すると、清香さんは口元だけニコリと笑い〈この言葉は分かる?〉と、古代のあの言葉で言ってきた。


 俺はその言葉に息を吞んだ。


 また、あの時代に使われていた言葉だ。この人は転生者で前世はあの時代にいた人だ。


〈分かる。あなたは何者ですか?〉


「やっぱり、あなたは前世の記憶を持っているのね」


「え? ああ、はい」


「あなたの前世はドラゴン族。『ソール』でしょう?」


「!? 何故、その名前を? あなたはいったい」


「私は前世であなたと同じドラゴン族だった『アクア』よ」


「え、ええ!?」


「久しぶりだね、ソール」

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