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ドラゴンの転生  作者: 藤塲美宇
第一章 記憶と魔力
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 昔から何回か葉月の家に上がらせてもらっているが、なぜか居心地がいい。


「見た感じ、皮膚はだいぶ再生してきてるけど……まだ所々、赤くなってるわね。あとこの裂傷、血は止まってるけど治りが遅いと思うわ」


 葉月は慣れた手つきで、傷口を消毒し、塗り薬とガーゼを当てて包帯を巻いていった。


「葉月は……包帯を巻くの、上手だな」


「え? そ……う? 昔からやってたから、褒められたことって、あまりないんだよね。と……とりあえず、傷は大したことがなさそうで良かった」


 葉月は少し照れながら、救急箱に薬と包帯をしまい、元の棚に戻していた。


「あ……そう言えば……さっき拭いてた時に……」


「ん……? うん」


「この背中の傷」


「背中?」


 葉月はその傷がある場所をそっと触れた。丁度、肩甲骨のあたり。感覚的にドラゴンの姿になった時、羽があった場所に近い。


「ここね、えぐれたようになってて……赤くなってるの。この裂傷より少し深いんだけど、血が出た様子はないんだよね。痛くない?」


「ん? うん。別に」


「そう……この傷、何かの形に見える」


「へーそうなんだ。背中だから見えないな……何の形?」


「これは……蝙蝠の羽? みたいな……」


 ああ……そうか、それは――


「……ドラゴン」


「え?」


 ずっと話すべきか迷っていた。前世の記憶があることを理解してくれるものなのか。それに、葉月の家は導師だ。元の姿の事がわかったら、捕獲、もしくは退治されるのではないか。そんな不安があった。


「葉月……俺は前世の記憶がある」


「……うん」


「前世は……魔物、ドラゴンだった」


「ドラ……ゴン? 伝説に出てくるあの魔物?」


「信じるか?」


 俯きながら話す俺の前に葉月は静かに座った。俺が顔を上げると葉月は真っすぐ目を見て頷いた。


「葉月はさっき……頂上に来たとき、俺がどんな姿になっていたか見てないか?」


「ああ……うん。あそこに着いたとき、昊は全身焼かれたような状態だったから……そう、魔物なのね」


「俺はずっと、葉月は気づいているんだと思ってた」


「……うーん。『気づいてた』……というか、なんか普通じゃないなとは感じてた。私たちと同じように、異能者だとは思っていたんだけど……まさか、前世が魔物とは……」


「小さい頃は、こんなこと言っても、きっと笑われるだけだろうし、面倒だから言わなかった。でも、日に日に自分でも感じるくらい、力が強くなっていくのがわかった。それに……」


「それに?」


「葉月の家は導師だ。もし、バレたら最悪……殺されるんじゃないかって……それで、言うか迷っていた」


「……っ」


 葉月は、何かを言おうとしてやめた。伏し目がちになって、悔しそうな顔を浮かべる。しばらく沈黙していたが、不意に葉月が口を開いた。


「ねぇ……前世のこと、教えてくれない?」


「え?」


「嫌だったら……別に……いいんだけど……」


「んー……別に嫌ではないけど……あまりいい話ではないな」


「私は……昊、あなたのことが知りたい」


 葉月は、何を思って俺の話を聞こうと思ったのかわからない。ただ、葉月の強張る顔と握り締めている手を見て、聞きたいのは興味本位ではなく、理解したいからだということは伝わってきた。


「はぁ……わかった、話す」


「ありがとう……昊」


 葉月は軽く頷き、微笑んでいた。しかし、話すと言ってもどこから話せば良いか悩んでいると、「今、思い浮かんだ事からでいい」と葉月が言ってくれた。


「……俺は、西の大陸から追われてここにたどり着いた」


 毎晩のように見ている夢の事、小さい頃から思い出されてきた前世の記憶の話をした。傍若無人な振舞い、最期を迎える生々しいあの瞬間。葉月は、そのことをずっと目を逸らさず聞いてくれていた。


「あの時から、前世の記憶はだんだん鮮明になっていった」


「そうだったの……もしかして『魔法』のことを知ってたのもその夢で?」


「まぁな。よく人間たちが使ってきたな。ああ……今って『魔法』って言わないのか?」


「え? 言うけど、今は使える人もそんなにいないし、大っぴらに使われていないから」


「ああ……それで二人して驚いていたのか」


「うん……大半の人が見たことないと思う。うーん。でも……」


「何だ?」


「何でこれは前世の記憶だと思ったの?」


「ああ、それは……確信を持ったのが、あの木……」


「ウチの山の?」


「ああ……前世の俺は、あそこで殺された」


「!」

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