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ドラゴンの転生  作者: 藤塲美宇
第五章 竜王と封印
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「しかし葉月、闇は確かに強力な魔法のかわりに魔力の消費も激しくなると聞く。今のままでは、たぶん使いこなすのは難しいぞ?」


「魔力の向上にミーティス……竜王様が修行を見てくれると言ってくれたの。だから週末は行ってこようかと思ってる」


「ほほう、竜王様が自ら見てくれると?」


「それでね。あの場所は瘴気がかなり濃いの。できれば浄化ができる弥生を連れて行きたいんだけど……弥生、一緒に来てくれない?」


「えー? 週末ー? 俺にもいろいろと都合が……」


「そうなの? 弥生にもミーティスさんに、会ってほしかったんだけどな」


「ミーティスさん?」


「竜王様よ? とてもかわいらしい方だったわ」


「葉月……あれって『かわいらしい』って言うのか?」


「え? 言うでしょう? 昊は『綺麗』って褒めてたじゃない?」


「うん、まぁ」


 何だろう? 葉月のこの、とげのある言い方は……。


「え? ドラゴンなのに『綺麗』で『かわいい』ってどういう事?」


「結構純粋な感じ? って、いうのかな? 竜王になった経緯も、なんか昊に騙されてなったみたいだし」


「まぁ、確かに、結果的に騙したことになったけど」


「え? ドラゴンって、もっとこう……威厳があるというか、怖いイメージがあるんだけど?」


「弥生。まず、ここに前世がドラゴンだっていう昊がいるのよ? 威厳がある?」


「え? ない」


「でしょう?」


「おい! ひでぇーな!」


「思ったより、気さくな方よ? ミーティスさんも『弥生も、良ければ』って言ってたし」


「へぇーちょっと会って見たくなってきた」


「俺、い……威厳が、ない?」


 前世ではそれなりに怖がられて威厳があると思っていただけに、俺はその言葉にショックを受けていた。




 葉月は闇の精霊との契約を無事に終えた。

 俺から闇の精霊が離れるときに、何となく『これで、アイツも安心するだろう』という声が聞こえた気がする。葉月に後で精霊のことを聞いたら、凄く穏やかな精霊だと言っていた。


「昊君。体調の変化とかはないかい?」


「はい、あまり感じません」


「よし! じゃあ、私と手合わせしよう! 魔力を使って問題ないか見ないとな!」


「えー……」


 樹さんは目を輝かせて、気合十分、掌に拳を打ち付けていた。何となく俺はそれが嫌だった。


「樹さん? それは後! まずはここを片づけないとでしょ! 昊くんだって引いてるじゃない!」


「えー? 昊君の体調も見ないとだろう?」


「い・ま・は、片づけ! ね?」


「ううー」


 泉さんにそう言われて、樹さんは引きずられるように連れていかれた。俺は正直、心の中で泉さんに感謝した。

 その横で、葉月は使えるようになったことを噛み締めていた。


「はぁ、自ら望んではいたけど、本当に使えるようになったんだ」


「葉月……そんなにも、うれしいのか?」


「うん。これで少し、近づけたから」


「何に?」


「昊は気にしないでいいよ」


 気にしないでって……気になる。もしかして、葉月は俺と一緒に、戦うために闇の精霊と契約したのか?


「なぁ、葉月……もし、バアルがもう一度俺のところに来たら、一緒に戦ってくれるのか?」


「うん、もちろん! 昊にだけ、戦わせないわよ。私は昊も皆も、守りたいの」


 笑顔で答える葉月に「どうして、そこまでするんだ?」と、言いかけたが、聞いても答えてくれないだろう、と思って辞めた。

 それと同時にミーティスが言っていたことを思い出した。


『今、義兄様の周りにいる者たちは、良き者たちが多いようじゃな』


 ドラゴンだった時に比べたら確かに恵まれているな。俺のことを助けてくれる人たちがこんなにいるなんて……。


 葉月が強くなろうと闇の精霊を求めたのなら、俺も皆を守れるくらい強くなろうと心に決めた。


「うん、そうか……なら、俺も皆を守るよ」


 すると、葉月は何故か、ものすごく珍しいものを見たような表情をして固まっていた。


「え? 昊……笑……った?」


「……え?」


「わぁ! 昊が笑ったの、初めて見た!」


「え? 何、驚いているんだ? 笑ってただろ? 今までだって!」


「え? 何? 昊笑ったの? オレも見たい!」


「弥生まで……今までも笑ってたって! 皆が見てなかっただけだろ?」


「そんなことないわよ。私、見たことないわよ?」


「オレもー!」


「んな、馬鹿な」


「知らなかった? 昊ってずっと仏頂面なのよ?」


 そう言えば昔、同じようなこと言われたな。


「えー? 昊くん笑ったの? わたしも見たぁい!」


「い、泉さんまで……」


「ははは、まぁ、誰が最初に見ることになるかと思ってたけど、やっぱり葉月だったか」


「え? 樹さんも?」


 その後、皆に顔をもみくちゃにされた。

 ここまで読んでいただき、ありがとうございます! 第五章完です。

 

 掲載がかなり遅いの作品にも関わらず、読んでいただき感謝しております。この作品も折り返しておりますので、あと少しお付き合いくださいませ。

 どうぞ、これからもよろしくお願いいたします。



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