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ドラゴンの転生  作者: 藤塲美宇
第五章 竜王と封印
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 樹さんに報告をしに行ったら、質問攻めにされた。

 竜王のこと、そこで何があって何を話したのか、これからアクアを探さなければいけないこと……それと、俺の中に闇の精霊がいることを伝えた。すると、樹さんは「隼士君が……」と呟いた。

 そして問題は、葉月が闇属性の精霊と契約したい、ということだった。


「葉月……やっぱり、この間の儀式の時、声が聞こえていたんだな?」


「う……うん。ごめん、父さん嘘ついて」


「弥生は、葉月からこのことを聞いていたのか?」


「……うん」


「葉月、お前もしかして……弥生が継承できると分かったから、聞こえないと言ったのか?」


「えっと……はい」


「……葉月。なぜ闇の精霊と契約したいと思ったんだ?」


「昔読んだ文献に『闇は他より強力な攻撃魔法あり』と書いてあったのを見たの。私は光の属性の様な癒しの力じゃなくて、戦う力が欲しかった」


「闇はそれだけじゃないことは、知っているだろ?」


「はい、知っています」


 樹さんは、大きくため息をついた。


「樹さん。闇が他より強いということ以外、何があるんですか?」


「『諸刃(もろは)(つるき)』という特殊魔法があるんだよ」


「え?」


「闇属性の与えられている最も危険な力だよ。この魔法を使用すれば、全属性の攻撃力が二倍以上増す。だが、その反動で使った本人も傷つけられてしまうんだ。この魔法は下手をすれば死に至る」


「そんな魔法があるんですか?」


「それも、自分だけでなく、他の人にかけることもできる。使い方によっては、とても危険なんだ」


「! もしかして、わざと魔法を使わせて、果てさせることができる?」


「そう……その場合、お互い危険が伴うけれど、ね。しかし、こういった使い方ができるから、闇属性の契約者は狙われることがあるんだ。だから、今、誰が行使できるのか、隠しているところもある」


 え? 待って……『諸刃の剣』? 狙われやすい? それを知ってて、葉月は闇の力が欲しいといったのか?


 俺は急に頭が痛くなった。脳裏に映った光景はまたあの炎の中。血まみれで倒れている父さんの姿が思い浮かぶ。


 前の闇属性の使い手は父さんだ。あの火事の時、父さんはなぜ血まみれだったんだ?


「父さん……私、『諸刃の剣』は絶対に使わない! それを使いたいわけじゃない! 私はただ闇属性の攻撃魔法を使えるようになりたいだけ!」


「はぁ……葉月、お前のことだ、ちゃんと理解して、闇属性を求めたのだろう。私はそれより、葉月が嘘をついていたことが一番悲しいんだ。それも弥生まで……」


「オレは嘘というか、黙っていただけだけどね。でも『媒介』って、物は聞いたことがあったけど、人もなるんだ?」


「人の場合は稀だけどね。でも、もし人だった場合、何等か影響が出るんだが、昊君は元魔物のせいか、あまり影響が出なかったみたいだね」


「影響? どんなふうに?」


「普通の人だと、遠くの声が聞こえてしまったり、ちょっと物が動かせちゃったり」


「へー、超能力者みたいだ」


「まぁ、そうだね」


「で? 父さん、継承の儀式はしてくれるよね?」


「うーん……」


「大丈夫! 本当に使わないから!」


 樹さんはしばらく、腕を組みながら、葉月の願いに悩み続けている。俺は、葉月のその言葉を信じられないでいた。


 何故だろう……葉月がその力を使わないと言っていても、ものすごく不安なのは……。


「なぁ葉月、本当に闇の精霊と契約したいのか?」


「え? 何? 昊、どうしたの?」


「どうして、そんな危険なものと、契約したいんだ?」


「? え? 『諸刃の剣』の事? 使わないよ? だって……使ったら……」


 俺は体が急に震え出した。寒いわけでもない。ただ、恐怖していた。


 前任者の父さんはもしかしてバアルとの戦いのとき、『諸刃の剣』を使ったんじゃないのか。もしその力を葉月が使ったら……。


「昊? どうしたの?」


「っ! あ……いや」


「昊……私は昊の力になりたいの。だから強くなりたい」


「何で、俺の?」


「え? っと……」


 葉月は俺から目を逸らして、しばらく固まっていた。


「……葉月?」


「私、昊のこと……心配! そう、心配、何だよね! 私、導師見習いだから、ほっとけない!」


「そっか……」


 ああ、なんだ、使命感か。ん? 『なんだ』って、なんだ?


「それに、『諸刃の剣』を使用したら、戦い続けることができなくなっちゃう! だから、絶対! 使うことはない! うん」


「絶対……ない、よな?」


「うん、ない!」


 葉月との会話を横で聞いていた樹さんが、不思議そうな顔をした。


「昊君? どうした?」


「父はたぶん、バアルとの戦いで『諸刃の剣』を使った可能性があります」


「そうか、なるほど……」


「バアルを倒すため、使ったんじゃないかと……でも記憶があいまいで、本当に使ったのかはわかりません」


 思い出そうとすると、頭が痛くなり霞みがかる。確かに血だらけで倒れている父さんの姿があった。でもどうしてそうなったのか、思い出せないでいた。


 すると、葉月は俺の目の前に立ち、真っすぐ見てきた。


「使わない! 昊、私絶対に、使わない!」


「葉月……」


「言ったでしょ? 私は昊の力になりたいの。だから、絶対使わない! 私が闇の精霊と契約したいと思ったのは、他にもっと強い魔法があるから! 『諸刃の剣』を使いたいからじゃない! ね?」


 葉月は俺の不安を解消させるかのように強い口調で言ってきた。「……うん」と言って頷くと、葉月はニコッと微笑んだ。

 予告ではここまでと告知しましたが、あと一話ありますのでよろしければ最後まで読んでいただけると嬉しいです。

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