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ドラゴンの転生  作者: 藤塲美宇
第五章 竜王と封印
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 夕飯も食べ終わり、中川は影原さんに魔力を使う許可をしてもらった。


「本当はこんなに早く許可するのはあまりよくないんだ。一応、渡瀬家内だけで、ということで許可するのだからな!」


 影原さんに注意事項をたくさん言われていたが、俺は早く行きたくて聞いていなかった。

 竜王の所に『瞬間移動』をするため、修練場へ向かっていると、葉月と樹さんが一緒に行きたいと言い出した。しかし、竜王のいる場所は異界の門がある、そのせいで瘴気が濃い。二人にそのことを説明し「今回は、俺と中川の二人で行きたい」と伝えると、樹さんは諦めてくれたが、葉月はなかなか折れてくれなかった。


「ねぇ! どうして、私は行っちゃダメなの?」


「だからさっき言っただろ? 『竜王』は異界の門番。あの場所は、瘴気がすごいから生身の人間は行かないほうが良いんだよ! 葉月は留守番!」


「昊もテオさんも、今は人間じゃない!」


「俺と中川は別! 魔物の魔力を持っているから、そんなに影響はない! と、思う」


「確証はないんでしょう? だったら、私も一緒に行ったって同じじゃない!」


「だから……」


「うーん、珍しいですね。お二人が喧嘩しているなんて、まるでふーふ……」


 俺と葉月は、それを言おうとした中川を同時に睨んだ。


「なぁ、中川お前も反対だよな?」


「どうなんですか? テオさん!」


「うー……ボクもソラ君の意見に賛成です。あそこはあまり、人が行っていい場所ではありませんから。正直、今はボクも人間なので、行きたくありません」


「そ、そんな……」


「まぁ、ハヅキさんが行きたい気持ちもわかります。生のドラゴンなんて滅多に見られませんからね。でもボクの負担も考えていただけると嬉しいのです。たぶん、三人……行けるとは思いますが、人間の体で初めて『瞬間移動』を行うので、できれば二人で行きたいですね」


「そうだぞ! 中川のことも考えろって」


「……分かった」


 葉月は不満気に、修練場の端へと下がっていった。

 修練場の真ん中で俺と中川は向き合い、お互い手を握った。


 うーん……俺、何でか最近、男の手しか握ってないな……。


「では、ソラ君ボクが片目を瞑ったら、一気に飛びますからね」


「ん、わかった」


「では……」


 中川かそう言って片目を瞑ろうとした瞬間、葉月が走り出し、俺達の手を握った。


「え? 中川! ちょ……まっ」


 葉月を振り払う間もなく、俺達は光に包まれた。





「「うわぁぁぁぁ!!!」」

「きゃぁぁぁぁ!!!」


 ドスン!


 葉月が急に飛び込んできたせいなのか、着いた先では体が宙に浮いていた。いきなり地面に足が着いていないことに驚き、三人してバランスを崩して折り重なるように倒れ込んでしまった。

 気がつくと、誰かを下敷きにしている。葉月は俺の上にいた。下敷きになったのは中川だった。


「いてて……中川、大丈夫か?」


「ああ、はい……何とか。ハヅキさん、ちゃんといますか?」


「はーい! いまーす! あはは……着地失敗!」


「……葉月! あれほど、ついてくるなって言ったのに!」


「えへへ」


「二人とも無事ですね。とりあえず目的地にはちゃんとついたから良かったですけどね」


「はぁ、ついてきちゃったものは仕方がないか……」


 葉月は立ち上がり、周りを見渡した。


「うわぁ……ここが『竜王』の住む場所?」


 真っ白い石で囲まれた空間。壁も床も円柱も、見えるところは全て綺麗に削られた石でできている。天井は遥か上で暗くて見えない。それが、奥の方まで続いている。


「ねぇ、昊……ここって、海の上にあるの?」


「いや、海の中だ。この場所は、魔物と人間が激しく戦った大陸に立てられていたから」


「ええ? じゃあ、外に出たら周りは海水?」


「そうだな。でもここは、特殊な結界で周りを守っているみたいだな。普通の人には見えていないみたいだし」


 静寂に包まれた回廊。本来なら、建物の中まで日の光が注がれていたのに、深海に沈んだため闇夜のように暗い。その場を一歩進むごとに魔法の火が道標のように灯される。足音が鳴り響き、この奥にいる守護者に侵入者のことを知らせているようだった。

 長い回廊を進むと、大きくて重厚な扉が聳え立っている。


「懐かしいな」


「こんな大きくて重そうな扉、どうやって開けるの?」


「魔力があれば開きますよ。ハヅキさん、良かったら触れて見てください」


「え? 私?」


 葉月は戸惑いながら俺を見た。


「うん、折角来たんだから、やってみれば?」


 葉月が扉にそっと触れると、ズズズッと大きな音を立てゆっくり開き始める。


「か……勝手に開いた」


「言ってしまえば魔力のロック解除システムですね」


「あー……なるほどー、そーですねー」


 葉月は中川の冗談に合わせるように、笑いながら答えていた。


 扉が開いて行くと、内から外へ押し出される空気に瘴気が混じる。

 大きな広間の先に高座がある。そこにあるのは人間界と異界をつなぐ門。今は閉ざされているが、そこから瘴気が漏れ出している。

 そして、その門を守るのが竜王だ。


「あ、あれが竜王?」


「うん、竜王ミーティス。異界の門番だ」


 ミーティスは前世の俺と同じく背中に翼が生えたドラゴンだ。地水火風の属性を使えるが、一番得意としていたのが地属性だった。その力で大地を通じて、いろいろな知識を蓄えていた。


 俺の知りたいことも知っているはず……。


「あれ? でも、ソラ君。本人は『女だから竜姫(りゅうき)と呼べ』って言ってましたよね?」


「そういえば、そんなこと言ってたな。そのほうが、響きがカワイイからって……でも、呼んでる奴、見たことねぇけど」


「竜王って、そういうことを言うのね」


「さて、葉月と中川はここから入るな。ここの瘴気は人間がギリギリ耐えられる強さではあるが、あまり長居しないほうが良いから」


「もちろん! ボクはここで待っていますよ! ね? ハヅキさん?」


「昊は大丈夫? なの?」


「まぁ、たぶん? じゃあ、話してくるか」

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