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ドラゴンの転生  作者: 藤塲美宇
第四章 恐怖と失敗
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番外編1

 この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません。

 小学五年生。夏休み前、最期の登校日。


「なぁ。肝試ししようぜ!」


 明日から夏休み。暑いから早く帰ろうとしている中、前の席の大神透真おおがみとうまが話しかけてきた。

 大神は好奇心旺盛で、みんなを良く先導していた。そんな大神とは、このクラスで初めて一緒になって、仲良くなった。


「学校から一番近くの公園に林があるだろ? そこに家が建ってるの、知ってるか?」


「あたし知ってる。洋館が建ってるよね? 昔、あの土地を管理していた人の家だったって、聞いてるけど?」


 俺の隣の席の女の子、赤岩芙美花あかいわふみかが、嫌そうな顔をしながら答えた。芙美花は俺と同じ養護施設にいる。昔から俺と葉月と芙美花は、よく遊んでいた。でも、芙美花が何であの養護施設にいるのかは、知らない。


「お! 赤岩は知ってるのか! あそこって空き家のはずだろ? おかしなことにあそこで人影を見たんだ」 


「くだらない!」


 大神の隣の席の葉月が、横目で見ながら強めの口調で遮った。


「おお? なんだ? 渡瀬」


「くだらないわよ! 不法侵入して何が面白いわけ?」


「面白いだろミステリーの探求! 謎の解明!」


「わざわざ危険なところに行く必要ないでしょ! その人影だって、どうせ光の加減か何かで、そう見えただけなんじゃない?」


「渡瀬……お前って、意外と夢無いなぁ。はっはーん! 分かった! お前、導師の娘のくせして幽霊とか怖いんだろ?」


「怖くないわよ! 幽霊くらい!」


「じゃあ、大人の代わりにお前来いよ! これも導師の仕事だろ? 導師の娘なんだからこれくらいできるだろ?」


「いいわよ! 行ってやろうじゃない!」


 あーあ、葉月は大神の挑発に、完全に乗せられたな。まぁ、俺には関係ないけど……。


「じゃあ、俺は帰るな」


「何、一人で帰ろうとしてるんだよ! 真空寺!」

「何、一人で帰ろうとしてるのよ! 昊!」


 怖い顔をしながら、大神と葉月は同時に言ってきた。


「え、ええ? まさかコレ、俺も参加なの?」




 夕方五時。

 あまり遅くなると、「親が心配するから」と、この時間になった。

 夏のこの時間はまだ明るい。日中の暑さも冷めていないので、汗が噴き出してくる。


 広い敷地の中に、公園と林がある。公園は遊具などが置いてあって、子供たちの遊び場になっている。林のほうはジョギングコースが敷かれていて、木陰が涼しくさせている。この時間に走っている人や、散歩している人を多くを見かける。

 だが、その林の一角に、誰も立ち寄らない場所がある。林の奥に進んで行くと、草木がうっそうと茂っていて、同じ敷地内とは思えないほど雰囲気ががらりと変わる。誰かが踏んで作った道を進んで行くと、そこに古い洋館があった。

 その洋館は、地域の人から、『幽霊屋敷』と呼ばれていた。


「ねぇ、葉月ちゃん。今は……空き家、なんだよね?」


「うん、そのはず。やっぱ雰囲気あるわね……大神君、本当に人影を見たの?」


「おうよ! 人影が見えたのは二階なんだ」


「んー……」


「どうしたの? 葉月ちゃん」


「何か、この屋敷……変よ?」


「ちょっと! 怖いこと言わないでよ! 葉月ちゃん!」


「渡瀬、その、手に持ってるのは何だ?」


「ん? ああ、これ? 一応、護身用の木刀」


「渡瀬、お前……結構ビビってるんだな」


「失礼ね! 何かあった時用よ! こういう所は、何があるか、分からないんだからね!」


 洋館の玄関は当然、施錠されていて入れない。


「大神くん、鍵がかかっているから、玄関から入れないよ?」


「へへ、表からは入れないんだけど、裏の勝手口の近くで、入れるとこ見つけたんだ!」


 大神に案内されるまま、葉月と芙美花はついて行った。


「真空寺! 何してるんだ? 置いて行くぞ!」


「……ああ」



 勝手口の近くの窓が、大人の腕が入るくらいの大きさで割られていた。大神はそこから手を突っ込み、窓の鍵を開ける。

 上手く入り込めた俺たちは、一階から部屋を一つ一つ確認していった。

 部屋の中は、暗く、足元がほとんど見えない。


「わあぁ!」


「何? 大神君! どうかしたの?」


「いや、足元見えづらくて、椅子があるの……見えなかった」


「ちょっと! 気をつけてよ!」


 葉月は何故かピリピリしている。気合が入りすぎているのか、この後も空回りの状態が続いた。ことあるごとに、声を上げ、木刀を振り回していた。


 一階、最後の部屋に入る。誰もいないことを確認していると、大きな布がゆらりと揺れ、覆いかぶさってきた。


「危ない!」


 葉月は、持ってきていた木刀でその布を切ると、そこには誰もいない。


「葉月……これ、カーテンだな。窓が開いてて、大きく揺れたんだ」


「何よ! 間際らしい!」


「おい、渡瀬。ビビりすぎじゃね?」


「そ、そんなことないわよ」


 みんなは次の部屋へ進むため、この場を後にした。でも、誰もいない洋館のはずなのに、なぜ窓が開いているのか、皆、気にも留めていなかった。

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