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ドラゴンの転生  作者: 藤塲美宇
第四章 恐怖と失敗
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 葉月の部屋の前に行くと泉さんが言っていた通り、二人は喧嘩していた。


「あーーーーーー! もう、うるさいな! 着替えるから入ってこないで!」


「葉月! この事はどういう意味か、分かっているんだろうな!」


「だから、聞こえなかったって、何度も言っているでしょう! 私は選ばれてないの! これ以上話すことない! 終わり!」


 バン!


「葉月!」


 思いっきり絞められたドアの前で、樹さんは不安そうにしていた。


「いったいどうして?」


「樹さん」


「ああ、昊君。葉月がこんなことするなんて今までなかったのに……すまないね。みっともないところを見せて」


「いえ。でも、本当に聞こえなかったのかもしれませんよ? もし、そうなら結構ショックなんじゃないですか?」


「うう……そうだな。昊君の言うとおりだ。あの子にはどうしても、期待してしまって……」


「とりあえず、俺が話聞いてみてもいいですか?」


「うん、そうしてくれるか? 葉月……疑ったりして悪かったな」


 そう言って、樹さんは寂しそうにその場から離れた。


 コンコンコン。


「葉月……俺だけど、少し話せないか?」


 すると、静かにドアが開いた。そのドアの隙間から、葉月はこちらを伺っている。


「昊、一人?」


「ああ、うん。樹さん、謝ったら行っちゃったよ」


「そう……とりあえず、入って」


「え?」


「何? 嫌なの?」


「嫌じゃないけど……」


 女の子の部屋、入るの初めてなんだけど……。


「じゃあ、どうぞ」


「お……お邪魔します」


 入って見ると、葉月の部屋はきちんと整理されていて、かわいいぬいぐるみが並べられている。部屋の真ん中に小さいテーブルがあり、座布団が敷いてあった。俺はそこへ座るように、案内された。葉月はベッドの上へ座り、「ふぅ」っと息をつく。

 座ってもなんとなく落ち着かず、つい、キョロキョロしてしまう。


 やばい、これは、思いのほか緊張するぞ。


「あまり、ジロジロ見ないでくれる?」


「あ、ごめん」


「で? 昊も父さんと同じく説教しに来たわけ?」


「いや、実際どうだったのか気になっただけ。本当は聞こえてたんだろ?」


 葉月は少し、顰めっ面をしながら頷いた。


「やっぱりか……何で、聞こえてないって言ったんだ?」


「父さんには……言わないでほしい」


「? うん」


「私、闇の精霊と契約したいの」


「え? 闇と? それはどうして?」


「光属性の魔法は素晴らしいんだけど、ほとんど援護の魔法しか使えないの」


「ん? うん」


「闇の力は攻撃魔法が多くて……その」


「ああ、戦いに徹したいと?」


「う……うん。そう……何だけど、それと、もう一つ」


「それと?」


 葉月は俺の顔をじっと見てきた。しかし、俺と目が合うと、すぐに逸らされてしまった。


「あ、ううん……それと、闇との契約は難しいから、できるか分からないんだよね」


「? ふーん。そうなんだ」


「あと、弥生には言わないとかなって」


「精霊の声が聞こえてたこと?」


「うん。相当びっくりしていたみたいだし」


「うん、そうだな。でも、何で弥生は葉月が聞こえてること気付いたんだ?」


「え? ああ、それは……精霊の口があまりにも悪くて、心の中で叫んじゃったのよね『うるさい』って」


「ああ、そー、なんだ」


「それで、精霊が『やっぱり、こいつら泉の子供だわ』って言っていたから、それで?」


 泉さんの言う通り、この精霊はあまり良い性格じゃあ、なさそだな。


「闇属性も今日と同じような継承の仕方をするのか?」


「ああ、うん。やり方は一緒だと思う。誰が継承しているのか、分かっているのは一人」


「へー。誰?」


「『魔導士』様」


 アイツか……ことごとく出てくるな。


「それ以外は? 何人かいるんだろ?」


「うーん。闇を使える人は、伏せられているのよね。あとは自力で探すしかないかな」


「まさかその辺に、ふよふよ浮いてるとかじゃないだろ?」


「……もしかしたら、浮いてるかも」


「え?」


「所有者が突然亡くなっている場合、次の後継者がいないから……解放されて、その辺に飛んでるかも」


「そんなアホな」


「というのは、冗談よ」


 真顔で言うなよ。マジだと思うだろ。


「所有者が亡くなっている場合、媒介を探すの」


「媒介?」


「所有者が持っていたもの、若しくは、その人の最後に立ち会ったもの」


「それは物か?」


「人の場合もあるわ。その場に居合わせたとか……」


「とりあえず、使っている人を探さないといけないんだな」


「そうね。それから、後継者に認めてもらわないと」


「時間かかるんじゃないか?」


「それも覚悟の上よ。それに、今回の事で弥生も少しは、自信がつくでしょ?」


「ああ、弥生と言えば、何か俺、避けられているような気がするんだよね」


「弥生に?」


「ああ」


「それは……うん。そうかも」


「? 何か、知ってるのか?」


「あー、んー……本人に聞いてみたら?」


「聞きたくても、すぐどっか行っちゃうんだ」


「うーん。まぁ、そのうち話してくれると思うけどね」


 何か含みのある言い方だな。とりあえず、弥生と話をしてみるか……。

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