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ドラゴンの転生  作者: 藤塲美宇
第三章 過去と魔王
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 意識がはっきりした時、すぐ目の前に葉月の横顔があった。俺はバアルの首を左手で掴み絞めようとしていた。それを葉月ともう一人、知らない女が制止しようとしている。


 何が……どうなっている?


 その場は絡み合っていた。

 葉月は女に木刀を突きつけ、攻撃に備えているようだ。俺の右手はバアルを狙っていたらしく、葉月が腕を掴み止めていた。女は、バアルの首を絞めている俺の左腕を折ろうと掴んでいる。


「そこのあなた! もう昊の手を放して!」


「危なかったですね。このままバアル様を倒せば、ここは跡形もなく吹っ飛ぶところでしたよ」


 バアルはこの状況が楽しいのか、ただひたすら笑っている。


「それも面白かったのに……なぁ? ソール」


「はぁ……はぁ……バ、アル」


 自分自身、何が起こったのか把握できなかった。気付けば、息が上がりバアルの首に手をかけているこの状況……。


 魔眼球に溜めておいた魔力も使い果たして……体もガタガタだ。


 バアルの首から手を外すと力が抜け、腕がだらりと垂れた。

 俺は段々立っていられなくなり、その場にへたり込むと、葉月がとっさに支えてくれた。


「昊? しっかり!」 


「あーあ、あともう少しで、ソールが完全にこちら側になるところだったのになぁ」


「昊はもうこれ以上、魔物化になんかならないし、させないわ!」


 葉月? 何でそんなに焦っているんだ?


 意識が飛ぶ前、明らかに体が軽くなったのを覚えている。それと樹さんの驚いた表情。


 まさか……。


 息を整えながら、自分の姿を確認すると、致命傷はないものの至る所が傷だらけ、人間の姿を維持しているが、右半身はドラゴンの体に近い状態だった。


「はっ……っ……こ、これは」


 いったい、何が? どうしてこんなことに?


 今は息をするのがやっとで、葉月に支えられなければ、座っているのも難しい。そんな俺をバアルは首を傾げながら覗き込んだ。


「うーん。よし! ソール、お前は生かすこと決定! 次来る時までに、その力ちゃんと使えるようにしとけよ」


「……っ」


 俺はバアルを殴りたかったが、体に力が全く入らない。

 バアルを睨みつけていると、止めに入っていた女が跪き頭を下げた。


「ソール様、こうしてお会いするのは、初めてですね。ティナと申します。今日はバアル様とご挨拶に来ただけです。またお会いしましょう」


 女はバアルと共に去っていった。 


 これが俺の全力か……何て様だ。あれがアイツの挨拶? 全く歯が立たないじゃないか。


 バアルが去り、一気に力が抜けた。

 すると、横で支えていた葉月が、俺を抱きしめる。


「昊……昊……昊は大丈夫……大丈夫」


 葉月は今にも泣きそうな顔をしている。俺は大丈夫だと言いたいが、なかなか息が整わない。それより、泉さんはどうしたのか気になった。これだけはちゃんと聞かなければと、できるだけゆっくり息をする。


「……っ。は……づき、っ……はぁ、はぁ。いずみさん……は」


「! か……母さんは」


「だ……い丈夫?」


「今は……自分の事だけ考えて……ね?」


 なぜ教えてくれない? もし泉さんに何かがあったなら、俺のせいなのに……。


「はぁ、はぁ……っ。教え……て」


 葉月は泣くのをこらえながら、笑顔でいた。


「風の精霊よ。この者を眠りへと誘え。〈熟睡〉」


「!? はづ……き」


 俺は葉月の魔法で、眠らされた。

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