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ドラゴンの転生  作者: 藤塲美宇
第二章 鑑定と紋章
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「おいしかった。ありがとうソラ君」


「お粗末様でした。満足できたみたいだな」


「それにしてもソラ君、よく気づきましたね。ボクが食べ物を口にしていないと……」


「悪魔は昔から食べないから、もしかしたらって……それに、かなり痩せて顔色悪いし」


「そうでしたか。『人間は食べる』ということを忘れていましたよ」


 食べ終わった食器を下げようとした時、中川は申し訳なさそうに言ってきた。


「ソラ君。申し訳ありませんがヤヨイ君を呼んでくれないか?」



 そう言われて呼んできたが、弥生はずっとそっぽを向き、中川と顔を合わせようとしない。だが中川は、弥生が入ってくるなり真正面に立ち、頭を下げた。


「本当に申し訳ないことをした」


「…………」


「ボクも先入観で人間から魔力を奪わないと生きていけないと思っていた! 本当に申し訳ない!」


 弥生は、頭を下げ続けている中川の姿を見てぎょっとしている。暫くすると仕方がないという顔をして、ため息をついた。


「……はぁ、もういいです。わかりました」


「……ヤヨイ君」


「今回のことで、死んだ人もいなかったみたいだし……ちゃんと食べれば、もうこういうことが起きないと、わかったんですよね?」


「はい」


「なら、代表して謝ってもらいましたが、術をかけた人のこと、ちゃんと治してくださいよ!」


「はい! もちろんです!」


「ねぇ……昊。もしこの『悪魔』が人間の食べ物を断固食べないって言ったら、どういてたの?」


「その時は、俺の魔力を与えるつもりだった」


「え?」


「ボクのために……ソラ君が?」


「他の人間の魔力を吸い取っているより、俺の余っている魔力を吸い取ってもらったほうがいいと思って。俺も何かで発散しなきゃいけなかったし」


「フム……それも悪くない。魔物の魔力を貰うなんて滅多にない……それもソラ君は上位クラスでしょう?」


 そう言うと中川は上唇をペロリと舐めて、俺に顔を近づけた。


「少し……味見をさせてもらっても、いいですか?」


「ん?」


 じわじわ中川の顔は近づいてくる。口と口重なろうかと思った瞬間、中川の襟元を掴まれ、一瞬で引き離された。


「ダメダメダメダメダメー! 何やってるのよ!」


 葉月の力が強かったのか、引き離された中川は壁に頭を強打していた。


「は……葉月アレ、大丈夫か?」


「大丈夫でしょ! 悪魔なんだからアレぐらいじゃ死なないわよ」


「外身は人間だぞ?」


「そ……昊も昊よ! 何で抵抗しないワケ?」


「?」


「すみません。少々ふざけすぎましたね」


「まったく! いったい何、考えているのよ!」


 葉月と中川が話しているのを見て、ふと、思い出したことがあった。


「あ、そう言えば葉月に聞きたかったことがあるんだけど……」


「え? 何?」


「中川が依頼しに来た日、何か渡されてただろ? あれって……」


「ああ、あれ? 魔力が回復すると言われてる霊薬を扱っているお店のメモよ? 母さんと弥生に買ってあげられないかと思って……まさか、悪魔に調べさせていたとは思わなかったけど。……? それがどうかした?」


「あ……そーなんだ。いや、何でもない」


 それを聞いて、予知夢を見ていたせいで、疑心暗鬼になりすぎていたことが恥ずかしくなった。



 その日の夜。

 久しぶりになかなか寝付けない。昼間とは一転、静まり返った渡瀬家は妙に気持ちがざわつく。一階に降り庭を眺める。すると、中川も二階から降りてきた。


「ソラ君……眠れないのですか?」


「んー……体は疲れてるんだけどな。薬とか打たれたし……中川もか?」


「まぁ……そうですね。今日のことはソラ君に助けられました。薬の件は申し訳ない」


 あんな大勢の前で魔眼球を晒したから、これからがもっと大変なことになりそうだけど……。


「そう言えば……お前の名前」


「……はい」


「お前の主のために、明かさないほうが良いみたいだな。俺が言ったところで、どうなるわけでもねーんだけど、悪魔祓いとかに見つかると厄介だろ?」


「そうですね。そうして頂けると、助かります」


 中川は安堵の表情を見せた。それはまるで、愛しい人を思っているようだった。


「呼び方は『中川』のままでいいいよな?」


「それは、もちろん! しかし、前世では君は上級の魔物だったから、まぁ……良しとして、人間の年齢的にはボクの方が上のはずなのに、何で君はボクに対して偉そうなんですか?」


「んー……何だろうな? 俺、第一印象、中川のこと嫌いだったからなぁ」


「何か……酷いですね」


「今は、そう思ってない」


 俺は頭を掻き照れながら言うと、中川は最初きょとんとしていたが、すぐにクスリと笑った。


「あ、そうだ……ソラ君。君に聞きたいことがあったんです」


「ん? 俺に?」


「はい……君は前世で『魔王』に会っていますか?」


「『魔王』? ああ……『バアル』の事か? あいつ異界にいるんだろ? あの時にいた、ほとんどの魔物は異界にいるはずだよな?」


「いえ……実は、『バアル』はずっと人間界にいます」


「……え?」


「人間界のほうが面白うそうだから……と」


 今、最も会いたくない奴なんだけど……。


「はは……アイツらしいな。でも、そんなにひどく暴れてる様子がないが?」


「フフ、そうですね。これは、ボクがこの体になる前に会う機会があったのですが、おかしなことを言っていました」


「おかしなこと?」


「十年ほど前に会った時、探していた『人間』が見つかったと言っていたんです」


「探していた人間?」


「はい。かつての同志……『ドラゴンの転生者』を……」


「!」


 その後しばらく、中川の話が頭に入ってこなかった。

 ここまで読んでいただき、ありがとうございます! 第二章完です。

 第三章から不定期掲載になります。準備ができ次第、載せさせていただきますので、お話によってはお時間がかかってしまうかもしれません。大変申し訳ございません。


 どうぞ、これからもよろしくお願いいたします。

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