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ドラゴンの転生  作者: 藤塲美宇
第二章 鑑定と紋章
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「フフフ……僕が? どうして?」


「あなたは手段を選ばないハンターたちに、わざと魔眼所有者の情報が渡るようにしていた。オークションで競り落とした人のだけではなく、元々持っている人の物も……。以前、私達が捕まえたトレジャーハンターが言ってたわ。『あの山に行けば必ずいるはずだ』って……」


 ああー。俺を襲ってきた奴か。


「何故、僕が『魔眼球』の強奪に関与していると? 僕にはハンターの知り合いはいませんよ」


「ハンターと接点がなくても、あなたの顧客があるでしょう? その男の雇い主に事情聴取をしたら、あなたから聞いた、と言っているそうですよ? 中川テオさん。この会場にいたあの男も同じ雇い主のようですね。今さっき、父さんから連絡があったから……」


「…………」


「その雇い主は、あなたの顧客リストにバッチリ名前がありましたよ」


「……仮に、僕が情報をその人に渡したとして、それは彼らが勝手にやったこと、僕には関係ないですよね?」


「でも、あなたにとって、魔力を奪うのに『魔眼球』が何か不都合だったのでは?」


「魔力を奪う? 僕がしているとでも?」


「……なぁ、葉月。人間は他人から魔力を奪い取って何になるんだ?」


「えっ? あー……魔力を必要になるときは、緊急事態で魔力が足りなくなってしまったとき。それか、なにか禁術を使用するとき」


「ふーん……で? どうしてコイツかやったって思うんだ?」


「五年ほど前……テオさんの環境が大きく変わったことが起きたの。それをきっかけに、今まで付き合いのなかった人たちと関りを持つようになった。それから、何故か急にその人たちが体調を崩すことが増えていったのよ」


「…………」


 中川は、葉月を探るように、黙ったまま睨みつけている。


「母さんと弥生も、五年ほど前から体調を崩すことが増えていった。調べてみたら原因は魔力が枯渇してしまうことだとわかったの。母さんは元々そんなに魔力があるわけではないから、そのせいだと思っていたんだけど……弥生は今、成長期で、体力と共に魔力も増えていくはずなのに、全く安定しない。何かに取り憑かれているなら、私や父さんが気づけるはず。そんな時……変な噂を耳にしたの」


「噂?」


「『中川テオは、禁術を使用するために魔力を集めている』って」


「禁術……」


「もしかしたら、何らかの形でテオさんが関わっているんじゃないかと思ったの」


「? まって、姉さん。まさか、うまく魔力が使えなかったのは、中川のせいだったのか?」


 葉月は何も答えずじっと中川を見た。弥生はそんな葉月を見て中川を睨む。


「でも、まだわからないことがある。どうして、魔力奪うのに『魔眼球』が邪魔だったのか。昊の魔眼球の情報をどこで知ったのか。事件解決のために昊を囮にしようと言ったのか」


 あ……俺、囮だったのか。


「あなたはいったい……誰? 今のあなたはまるで別人。以前のテオさんだったら、人を囮にしようなんて言わないわ」


「ハハ……ちょっと待ってください! じゃあ、どうやって僕が魔力を奪っていたと言うんです? 証拠もないのに疑うなんてひどすぎませんか?」


「そ……それは」


 葉月は、中川がどうやっているのかまでは分からなかったのか、急に黙ってしまった。

 だが俺は、さっきからずっと誘発剤のせいで、あまり知りたくない情報も見えていた。


 そうか、葉月たちはアレが何なのか気づいていない。確かに魔眼球の力じゃないと見えないしな……。


「昊……」


 葉月が中川に聞こえないように小声で言ってきた。


「ん?」


「昊は何か見えてるの? さっき、弥生の肩に何かしていたでしょう?」


 あれ? 注意してたのに見られてたのか。


「あの時以降、弥生は魔力を取り戻してる」


「ん? あー……あれね……あっ!」


 そうか。あの紋章……思い出した。あの時見たものだとしたら……。


「……昊?」


「それで? 僕がどうやってるか、分かっているんですよね?」


「どうやっていたのかは、俺は分かってるけど?」


「!?」


 中川はさっきの余裕の顔から一転、急に焦りだした。

 もう一度俺は、魔眼球の力で中川を凝らして見た。


 やっぱりそうか、俺の記憶が間違っていなければ……。


「そ……昊? 本当なの?」


「ああ……えっと、誘発剤? のせいでさっきから不快だったんだよ。お前、実は悪魔だろ?」


「な……そ……昊さん? 何を言っているのですか?」


 明らかに動揺してるな。


「あの紋章、どっかで見たことがあったんだ。魔力を吸い上げる人につける目印。あれは悪魔の紋章。あの紋章の形は確か……セー……」


「言うなぁぁぁぁぁ!」


 いきなり中川は大声を上げ、俺の言葉を遮った。


「これだから、魔眼持ちは……」


 ブツブツと独り言を言い始め、表情が鬼の形相となっていく。


「そ……昊? 紋章? 悪魔ってどういうこと?」 


「んー……悪魔はそれぞれ紋章を持っている。それが泉さんと弥生の肩についていた。今回の魔力の奪取方法は他の人にも目印をつけておいて、死なない程度に魔力を奪っていたんだろう」


「そんな……悪魔の紋章? でも、どうして……私にはその紋章? 見えないの?」


「葉月は魔に属していないから……基本、人間には見えない」


「魔に……属する?」


「魔眼球は魔の産物だから見えるんだ。葉月だけじゃなく、樹さんや他の魔眼球をもっていない人間は、魔力があってもたぶん見えない。存在を感じることはできると思うけど」


「そう……なの」


 葉月は少し落胆しているようだった。多分このことは知らないことだったのだろう。


「でも、目印をつけたとしても、ある程度近づかないと奪えない。だから、目印をつけた人の近くに『魔眼球』を持っている人がいると邪魔なんだ」


「それで、魔眼所有者を襲わせてたの……何てことを」


「俺も魔眼球でコイツを見るまで張本人とは思ってなかったけどね」


「でも、昊のことは? どうやって知ったの?」


「悪魔は魔の物は見分けられる。所有者かどうかは、『魔眼球』をただ持ってるだけでも分かるんだ」


「それじゃ……(うち)に依頼しによく来てたから……結構前から分かってたってこと?」


「たぶんね。でも中川は自分がこの事件のことで疑われているのは薄々感じていたんだろ? 葉月にハンターを誘き出すために、俺を囮にしろと言って事件解決させるフリして、本当はコレクターたちに、この場で『魔眼球』を奪わせるのが目的。違うか?」


「フフ……魔眼球の前では、ボクの存在は隠せませんか」


 中川は開き直った様子で、降参したというように軽く両手を上げて見せた。


「ソラ君……何故君は、ボクの名前を知っている?」


「まぁ、信じてもらえるかわからないけど……確か、伝説の時代……前世で会った悪魔の中の一人がこの紋章に似ていた気がしたんだ」


「ハハ……伝説の時代に生きていた? ということは、君の前世は魔物か……なるほど、どおりで良い眼を持っているはずだ」


「もしかして、あの時、テオさんのことを『人間か?』って聞いて来たのは……それで?」


「葉月は中川が何か違うと思ってたよな?」


「五年前を境に『魂』が違ってるようには感じてはいたけど……」


「中川を初めて見た時から何か気持ち悪かった。人のようで人じゃない……でも、魔物でもない……言ってしまえば、何かと混ざり合っている」


「混ざり合う? 悪魔なのに人の姿をしてるから?」


「いや、そうじゃない……そうか、お前……その人間の魂を喰ったのか?」


 中川は、それを聞いた瞬間、薄気味悪い笑みを浮かべていた。


「……ほぼ正解。確かにボクは主の魂を喰った。だが、それは主の願いだ」


「その人間が喰えと言ったのか? お前に? 何故?」


「……それとハヅキさん。確かに魔力を集めたのはボクですが……それは、『禁術』が使われた後です」


「え? あ……」


 中川は俯き悲しみをこらえているようだった。


「五年前、『中川テオ』は『禁術』でボクを呼び出した。そして、この男はボクにこう言った。『どうか、僕の代わりにこの体で人生を全うしてほしい』と」

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