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ドラゴンの転生  作者: 藤塲美宇
第二章 鑑定と紋章
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 結局、訳が分からないまま最後まで打ち合わせに参加していた。

 打ち合わせが終わり、俺はこの居心地の悪さから解放されると思うとほっとする。


「あ、そうだ。葉月さんにお渡ししたいものがあるんです」


 中川が帰りの支度を終えると、唐突に言ってきた。


「ああ、じゃあ葉月を呼んできましょう」


「俺、呼んできます」


「庭にいますと……伝えてください」


 早くあの男のから離れたくて仕方がなかった。それに、さっき葉月とすれ違った時、中川に対して嫌悪感を持っていることが気にかかる。

 何があったか俺が聞いていいものなのか? 何で気になるんだ? そう思いながら、葉月の部屋のドアを叩く。


「葉月? あのお客さんが葉月に渡したいものがあるって……」


 返事がない。さっき少し様子が変だった気がする。


「……葉月?」


 もしかしたら寝ているのかも、と少し小さめな声でもう一度言うと「今、開ける」と返事が返ってきた。

 葉月は制服からすでに部屋着に着替えていて、不機嫌そうに部屋から出てきた。


「あ、ありがとね。呼びに来てくれて……テオさんが渡したいもの? なんだろ?」


「え……?」


 葉月があの男を下の名前で呼んだことに、一瞬ぎくりとした。


「? どうしたの?」


「いや……なんでもない」


「そう? テオさんどこにいるって?」


 なんで……さっきは、あんなに嫌そうにしてたのに……。


「昊?」


「ああ……庭にいるって」



 葉月より遅れて一階に降りると、二人が庭先で話している姿が見える。

 俺の前では、葉月はあんなに不快感を露わにしていたのに、中川と一緒にいる今は、笑顔も見せている。何故か二人の話をしている姿が気になって仕方がない。


「……くん……昊君」


 樹さんがいつの間にか隣にいたことも気づかず、ハッとした。


「あ……はい」


「どうかしたか?」


「いえ、何でもないです」


「ふむ……そうか」


「ただいまぁ。あれ? 昊……誰か来てる?」


「弥生、お帰り」


 そう言って、俺は庭にいる葉月たちのほうを指さした。


「ゲッ! 中川がいる。オレ今回の依頼パース!」


 嫌そうにしている弥生の肩に、樹さんはポンと手を置いた。


「弥生、今回はお前も行くんだよ。昊君のサポートとして……な!」


 弥生は相当嫌なのか、震えながら涙目で俺を見てきた。


「嘘だろ? 昊」


「本当」


「今回は魔道具の鑑定だから弥生は余裕だろ?」


「ええー? オレ、あれ嫌いなのにー」


「じゃあ、弥生も帰ってきたことだし、今回の依頼について話しておこう。二人とも応接室に来てくれるかい?」


「はい」


「うう……マジか」


 俺と樹さんは対座し、弥生はブツブツ文句を言いながら隣に座った。


「今回の依頼は魔道具の鑑定だ。そこで昊君の魔眼球が役に立つ。例えばこれだ」


 そう言って、樹さんは青い綺麗な小さな玉を取り出した。


「ビー玉? ですか?」


「一つは本物の加工した魔石、もう一つは偽魔石。昊君は魔眼球を使って、手を触れずに見てみようか」


 そう言われて魔眼球を使うと、二つともゆらゆらと炎のようなものが見える。


「? 二つとも同じように見える」


「そうしたら、見たいものに標準を合わせて魔力を集中してみるんだ」


 目を凝らして魔力を集中させると、片方に炎の揺らめきの中に発光するものが見えてきた。


「もしかして、これが……? 二つの……見え方が違う」


「うん、分かったみたいだね。じゃあ、弥生これ鑑定して」


「……へーい」


 弥生は二つの魔石を手のひらに乗せると、目を閉じて集中する。しばらくして、大きく息を吐くと静かに目を開けた。


「うん、じゃあ弥生そのまま目の前に置いて、二人とも本物だと思う方を指さして」


「「せーの」」


 二人同時に指した物は同じだった。


「うん、二人とも正解! 昊君、初めてにしては見極めがうまくできたね」


「もしあれが本物のサインだとしたら、わかった気がします」


「魔眼球を持っていると、素早く見分けられるんだよ。普通は弥生のように実際に触って魔力の流れを呼んで判断するんだ。触れないで鑑定することもできるけど更に時間がかかる」


「そうすると、確かに魔眼球で見たほうが早いですね」


 ふと、視線を感じて弥生を見ると、震え上がり驚愕している。


「昊……お前、目が……」


「え?」


「目が……魔物化してる?」


「え? 嘘?」


 手で目元を触ると、血管が浮き出ているのを感じた。


「うわ! 何だ? これ」


「あーあ、気づかせちゃったか」


「樹さん? 今朝も、もしかしてこうなってたんですか?」


「うん……まぁね」


「何で言ってくれなかったんですか?」


「いやー……まだ完全に魔物化してるわけじゃないから様子見してたんだよ。でも、目の色が綺麗だから、見惚れちゃうっていうのもあるけど」


「昊って、魔力使うと眼が黄金色に変わってるから、一瞬ドキッとするんだよね。でも、ここまで魔物のようになってるのは、オレ初めて見た」


「眼が黄金? そ……そうだったのか」


「ちなみに君は、本当の姿に戻ろうとするときは、眼が赤黒くなってたみたいだよ」


「あ……この間の……ですか?」


「そう、葉月が言ってた。駆けつけた時、姿は人だけど眼だけはしばらく治らなかったって……まぁ、魔物化のサインだね。せめて、目の周りの魔物化はどうにかしないと、今後狙われやすくなるかもね」


「これって出ないようにできるんですか?」


「うん、できると思うよ。コントロールがうまくなればね。まぁ、今回の依頼は危険はないと思うが、昊君! 本当に君の目は……」


「そうだよなー。確か『魔眼球』って、オークションに出でると落札価格が他のより跳ね上がるもんな。隠せるようにならないと昊のソレ。本当に狙われるんじゃないのか? 見つかったら、その場で出品されたりして……」


 一瞬、その場が凍りついた。


「うわっ! まじビビってる? 昊、大丈夫だって! オレたちの前だけで使えば、バレない! バレない!」


 俺と樹さんの反応を見て弥生はケラケラと楽しそうに笑う。

 だがそれより、先程から鑑定の力で気になるものが見えていた。弥生の肩に泉さんと同じ黒い影が見える。よく見ると何かの紋章ようだ。それは昔、どこかで見た形だった。

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