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ドラゴンの転生  作者: 藤塲美宇
第二章 鑑定と紋章
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 傍から見れば、ふざけ合っているようにしか見えない光景を樹さんは怒るでもなく、ただ微笑んで見ている。


「ん? 昊君どうした?」


「あ……いや。あの、弥生……魔力のコントロールがうまくできないって……」


「ああ、人によって成長期は安定しないことがあるから、日によって使えない時があるんだ。昊君の場合、暴走だけどね」


「ああ、あれってそういうことなんですか?」


「まぁ、弥生の場合、ちょっと異様に多いのが気になるけれどね。もう少ししたら、魔力は増えて安定してくと思うんだが……そうだ! そろそろ昊君も、『魔眼球』のコントロールを覚えていこう」


「コントロール? 魔眼球にコントロールが必要ですか?」


「以前は魔力のストックに使っていたのかな?」


「はい。でも、それ以外に使い道が?」


「あとは、使っている人から聞いたけど、導師を見ると得意な魔法の属性がわかるとも聞いたな」


「得意属性? あ……そう言えば皆って、どうやって魔法を使ってるんですか?」


「導師は精霊と契約して使ってる。地・水・火・風。それと、一部の人しか使えないけど光・闇だね。精霊の力を借りるから、呪文を言わないと使えない。ただ一人を除いて、ね」


「? 一人?」


「『魔導師』と言われる、何千年も前からいる私たちの始祖だね。その方は唯一呪文がなくても使えちゃうんだ」


 唯一呪文がなくても? あれ? 昔……どこかで……みたような?


「始祖ってことは導師に力の使い方を教えた人ですよね?」


「そうだよ。私も小さい頃に一度だけお見かけしたんだ」


「? 始祖に会った? 始祖って今も生きてるんですか?」


「あー……いや、それが……昔から姿が変わっていないから、噂じゃ『不老不死なのでは?』って聞いたな」


 んん? あれ? 何か似たような奴を知ってるけど……。


「ああ……でも、呪文がなくても使えるというのは、手に持っている杖のおかげだって聞いたな」


「あのー、その杖って、結構長くて不格好な形をしていませんか?」


「あー! そうそう! そうなんだよ! あれ? 昊君、何で知ってる?」


 はい! 決定! アイツだ! 前世の俺を殺した奴! いやいや……待て待て、実際に会うまでは本人かわからないな。アイツも『不死』とか言ってたけど、噂だしな。


「あー……。前世で似たような杖を持っていた奴が、呪文言わずに魔法使ってたなーって思っただけです」


「そうだったのか。やっぱり杖のおかげなのか? でも実際、魔導師様が不死だったとして、何年生きてらっしゃるのか、気になるな」


 同感。


「魔物は契約とかないから、使い方が違うみたいだけど?」


「魔物は基本的に使える属性は一個か二個です。力が強くなってくると使える属性も増えていきますが……生まれつき持っている力なので体の中から湧いてくる感じです」


「へー! ちなみに君は何の属性を使えたの?」


「……ほぼ……全部」


「ほぼ? 上位クラスは全属性使えるの?」


「全員がそうではないと思いますが……全部使えると言ってもやっぱり、得手不得手はあります」


「得意な属性は?」


「闇属性と……火属性……でした」


「闇と火かぁ! いいね! ドラゴンっぽい!」


「でもこの間、力を使おうとしたら……全く使えませんでした」


「今まで、魔力発散のために使ってたよね?」


 うぐっ。敢えて言ってなかったのに、やっぱりバレてたか……。


「……昊君が、その属性の力を使おうとしたのは初めて?」


「はい……火属性を使おうとしたら……」


「使えなかった、か。心当たりは?」


 俺は静かに頷く。


「有り……か。まぁ……今は無理に使わなくても大丈夫さ……たぶん」


「た……たぶん?」


「そうかー。魔物は呪文がなくて力を使えるなんて、私らからすれば羨ましいな」


「でも前世の時と何か……違うんです」


「それはそうだろう。現世は人間だ。魔物の時とは体の勝手も違う。人間としての魔力のコントロールを覚えないとな」


「……そうですね」


「と、言うことで! まずは魔眼球の使い方を覚えよう」


「はぁ……はい」


「うん、とりあえず……試してみようか。瞑想で魔力の流れも、だいぶ感じられるようになってきただろう?」


「はい」


「使い方は、魔力を眼に集中させるイメージ。そうすると物に対するオーラみたいなものが見えてくると思う。やってみな?」


「眼に集中……」


 体に流れている魔力を眼に集中させると、普段見えているものとは違う、別の色が見えてくる。


「な……なんだ……これ?」


 あまりに驚いてすぐに目を瞑ってしまい、また開くといつもの色に戻った。


「魔眼球って……こんな使い方ができたのか?」


「魔物のときと見え方が違う?」


「はい。魔物のときは変なモノが勝手に見えてたけど……」


「変なモノ?」


「幽霊とか……魔に属してるものです。今は見ようとしないと見えませんけど」


「そうか……まぁ、これは人間が発見した使い方だよ。魔眼球を持っている魔物も一部しかいないんだろ?」


「確か……そうですね。他の魔物もストックに使っていたくらいかと……」


 前世では、魔眼球に日頃の魔力を溜めておき、枯渇しそうになったらそこから取り出し、回復するくらいにしか使っていなかった。

 それも、この眼は確かに稀で、上級クラスでも持っていない魔物もいた。しかも、個々が単独で動くことが多いから、どう使っているかなんて話したこともない。


「『魔眼球』は魔道具としてかなり重宝されている。研究されてはいるが、まだ解明されてないことも多いらしい。君のように生まれつき持っている者もあまりいない」


「魔物から取り出したものは、どうやって使っているんですか?」


「使わないときは球体に加工して、使うときになったら目に移植する。けど、移植すれば普通の目に戻す事はできない」


「……もしかして奪うときは、抉り取るんですか?」


「そう! だから……気をつけろ」


 その場の空気が一瞬ピリつく。

 いつもニコニコしている樹さんの表情が突然真顔になり、鋭い目つきで俺を睨む。


 これは樹さんからの警告。それほど、この『魔眼球』は貴重で、ただ持っているだけでも狙われるものなんだ。


「……はい」


「大丈夫! そうならないし、させないから!」 


 俺が返事をすると、樹さんはいつもの笑顔で返してくれた。


 なぜか、樹さんの言葉は説得力があるんだよな。


「さぁ、もう一度やってみよう」


 魔眼球の力をもう一度試してみると、周囲の色が鮮やかに彩られる。草や木、花、水まで綺麗な色を発している。


 それにしても、魔眼球にこんな力があったなんて……。


 その時、泉さんが朝食の時間を知らせに、修練場の入口に立っていた。


「みんなぁ。そろそろご飯にしないと、遅刻するわよー」


「よーし! 二人ともそれまで!」


「わぁ! 母さん、もう少し早めに来てくれない? 私、シャワー浴びたいのに!」


「あらぁ? そうだった、そうだった! ごめんねぇ! 明日から気を付けるわね」


「ごめん! 先行く! 弥生! しっかり掃除してから来なさい」


「へーい」


 葉月は修練場に一礼した後、忙しく母屋に向かっていった。


 残った俺たちで早々に掃除をし、最後に修練場から出ようとしていた時、泉さんが話しかけてきた。


「……どうかした? 昊くん」


「え……? いえ」


「そう? なら、いいんだけど」


 いつも笑顔を見せている泉さんは、昨日に比べれば確かに顔色は良い。

 だが、今さっき魔眼球を発動中、泉さんの肩に異様なものが見えた。属性とかそういうものではない、暗く禍々しい何かに感じる。

 それが何なのか、今はまだわからない。

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