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Now Playing... 5

「もうここには慣れたでありますか?」


「うん!えっと、あなたは…」


「ホーク司教の補佐のアラン。補佐司教という位を頂いております、アランであります」



 昨夜『リウ』の部屋へと案内してくれた補佐司教───アランが、食堂にいた『リウ』を迎えに来た。

 アランに連れられて『リウ』は食堂を出て、どこかへと向かう。


「アラン!よろしくね!」


「ええ。神の愛し子と話せるだなんて、俺は幸福でありますね」


「えっと…神のいとしごって?」


「リウ様の『女神の加護』は、女神様に愛されている証拠であります。だから、愛し子」


「そうなんだ…?」



(アラン…!?)


 名前を聞いたリウは驚愕の表情を浮かべる。動かせる表情は無いが。リウは、目の前の青年を凝視した。

 短い赤髪に、タレ目の緑色の目。へにゃりと笑う顔からは、一切の敵意は見当たらないが───同時に、なんの感情も読み取れない。

 ただ、緑色のその奥には強い光が宿っている。


(アランって、あの…?教会にいるのは知ってたけど、まさかこんな近くに!)



「えっとね、アラン。リウ、まだ何もわかってないの」


「ええ。そう言ってたでありますね。それに、ホーク司教様の望むことには従わず、リウ様のやりたいことをやると。それで…何をしたいか決まったでありますか?」


「…リウは、なにができる?それを知らないと、きめられない」


「……こちらの言うことには従わず、自分で決めると言い、だが情報を求めると………リウ様は欲張りでありますね」


「リウは、リウにとってだめなことをしたくない。けど、何も知らないでいるのはダメだし、何かができるなら行動しないのはダメ」


「そうでありますか。俺は従うだけであります」


 またもやへにゃりと笑う。穏やかな顔だ。目だけが強い力を持っていることを除いては。


 ◆◆◆


「ついたであります」


「ここは?」


「ここは、教室であります。今は孤児院の教育用に使っていないので、リウ様貸し切りとなりますね」


「きょうしつ…」


 教室とは言っても、机と椅子が一組しかなく、あまりにも広い。黒板にはチョークの粉ひとつまみすらも残っていない。

 無機質な部屋であった。白い壁にはかすかな汚れすらなく、白い床はどこまでもずっと続いているように思える。

 ここにいたら頭がおかしくなりそうだと───リウは思った。


「少しここでお待ちくださいであります。すぐ教師が来るであります」


「うん!」


 精神だけになっているリウの方が、この部屋は消耗が激しい。何しろリウは、『リウ』が起きている間、世界から目を逸らすことができないのだから。


(ここが教育部屋…!マナーとか、一般常識とかを教えられる場所!)


 リウは拙いゲームの知識を辿る。

 マナーを覚えさせられるのは、神の使徒として貴族と同様の扱いになると決まってから。

 一般常識は最初から。教会に引き取られた子供は全て習うとのこと。



「……」


「……」


「………」


「………?」


「こ、来ないでありますね…ちょっと見てくるので待っていて欲しいであります」


「うん、わかった」



 教室に入ってから十数分経ったが、教師は来ない。戸惑った顔をしてアランが部屋から出ていく。

 アランが部屋を出ていき足音が聞こえなくなった時、ガチャン、と鍵が閉められて『リウ』はびくりと驚く。ドアノブへと咄嗟に駆け寄り回そうとするが動かない。


「なになに…!?」


 耳をドアへと押し当て、聞こえてきたのは遠ざかる複数の足音と、子供の笑い声。人を馬鹿にするような響きを含んでいた。


「と、とじこめられちゃった…!?」



(これは、覚えてる!リウのことを新しく来た孤児と勘違いしての嫌がらせ!ここは、多分…)



【机の中を探す】【大声で叫ぶ】


(やっぱり!選択肢!)



 ここでの選択肢が、後で大きくルートを変えるのだ。


(どっちを選んでも今はあまり関係ないけど…うーん)


 【机の中を探す】では、【アランと見知らぬ人が写った写真】が見つかる。【大声で叫ぶ】では、天井の照明器具から【ルーカスの母の形見のリボン】が落ちてくる。何故こんな所にあったのかは誠に謎である。


 ……ああそうだ!確かにゲームの中の第1章にアランはちゃんといた!

 アランがいるのはこの教会で、ちゃんとゲームに登場していた。でなければここでこのアイテムが名前付きで出てくるわけが無い!


 モヤが晴れたみたいだとリウは思った。ごちゃごちゃになった記憶が正しく整頓されていく感じ。


 ふう、と息を吐く。吐ける体は無いが。感動している場合じゃない、と意識を今に向ける。



(これが出てくるのってすっごく後の…学園に行く時のだったよね?……そこまでリウたどりつける?)


「どうしよう……」


 ちなみに、リウが選択肢を選ぶまで『リウ』は行動せず、このようにうろうろしたり何かを話したりしている。ちなみにタイムオーバーとなるのが怖いので、リウは放置したことは無い。



(アランの写真選んだら、後々一緒に写ってる人より誘拐へ…ルーカスの場合はルーカスの友達に殺されかける……アランもルーカスもやばいのに、その周りの人の方がよっぽど色々こじらせておかしいのなにこれ?)


 リウは悩み続ける。学園で話を進めたいならルーカス、教会へと戻って話を進めたいならアラン。

 考えるのはただ1つ。どちらが、バッドエンドへと繋がりにくいか。


(アランと一緒に写ってる人…“ボス”って呼ばれてることしか分かってないけど、ボスとの会話が選択肢多すぎて大変!質問が多すぎるうえに、どっち選んでも、選択肢間違えた?みたいな話し方するし……あと、ボスのことが大好きな…えっと、名前なんだっけ…その人に殺されかけるし……)


 アランの写真を選ぶと、難しいのが質問に対する答え方。


(ルーカスの友達は学園の先生をやってる。理科室のあの火が出るやつとか、闘技場にいるモンスターを使って殺されかけるから、先回りして罠を潰さないといけない。…あれ、1回死んでから戻って死因を無くしていく感じだった)


 ルーカスのリボンを選ぶと、難しいのが初見殺しの躱し方。



(どっちも難しすぎる!かろうじて…うーん…アランの方がまだマシ…?)


 ▶【机の中を探す】


「机の中になんかあるかな?」



 『リウ』が机の中を覗き込むと、何かが見えた。


「写真?アランと…これ、だれだろう?」


 頭を傾げた『リウ』の耳に、走り寄る足音が聞こえた。慌てた『リウ』はその写真をポケットの中へと押し入れた。

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