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第二話

 っ嘘だろ……。

 絨毯の上で寝ている様な心地を味わいながら、目を覚ました。けれど、そこは幼馴染で最近出来た彼女の部屋であり、彼女の飼い猫のキャビィの背中の上であった。

 今動いたら死ぬか。なら止まっておくか、どっちにしろ、キャビィが起きたら死ぬか。

 既に視界に映っていた天井に焦点を当て、口元に右前足を当てた。

 世界は残酷だ、と頭の中では、進撃の巨人のエンディング曲『悪魔の子』が流れ始めていた。

 虐められていた女の子の事を考えていた記憶を頭の端に思いながらも、しかし、人間は所詮他人事はどうでも良く、結局自分が可愛くて、次に自分を有利にしてくれる人が可愛いくて、と自覚させられ、その上で、自分の事を考えた。

 そもそも、俺は、どうして、まだ生きてるんだ。能力的なのが与えられていて、死んでも生き返るのか。だったら、今悩む必要はないし、即行動をしてもいい。けれど、いや……死ぬのはアウトで、気を失うのはセーフ、且つ、気を失った場合ワープが出来る、だった場合は、いや、気を失う方法を考えるのではなく、今どうするべきか、を考えないといけないよな。

 内心、死んでも良い、と思っていた為、冷静にゆっくりと、周囲を見渡し、その上、また女の子の事を考えていた。

 そもそも、どうして彼女は虐められているのだろうか。暗くて地味だからか、女子はそんな事で虐められるのか。いや、それが思いついているだけで、多少はそう思っていたのだから、暗くて地味なのは理由になるのか。差別みたいなものか……。

 とにかく静かに飛ぶか、と結論が出て、足を立て、羽を動かす。足先が毛先を離れる、その瞬間、空気が震えた。部屋の扉が開く音だと理解すると同時に、ゆっくり、の文字を忘れ、飛びたっていた。肉球は直ぐそばの空気を切り裂いた。

 あっぶね。

 キャビィから離れ、本棚に着地し、辺りを見渡した。扉の前には、寝巻き姿の彼女が居て、ベッドにダイブし、キャビィを撫で回す。

 猫は人生楽で良いよな、昔そんな事を言った様な気がして、彼女から逃げる様に出ていくキャビィを、目で追った。

 オーマイグッネス、ワッツハプン……。

 一〇分後、彼女の喘ぎ声を聞いていた。無心で恐らく真顔で聞いていた。

 ヤンデレ彼氏に、が何とかというタイトルのシチュエーションボイスを聞き、女が受けのNTR小説を読む彼女を眺めながら、俺死んだんだよな、と額の様な場所に前足を当てた。

 更に一〇分後、暗くなった部屋で、虚しさを覚えながら、飛び出した。糞を撒き散らかすことに何の抵抗もなくなり、撒き散らしながら、しかし、自分をトムクルーズだと思い込み、威勢よく声を張った。

「ミッション開始だ!」

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