聞いてしまった男
語り方が上手くリスナーに絶大な支持を受けているラジヲジョッキーがいた。
彼のファンだというリスナーたちは語る。
「彼が話す怪談は聴く者の想像力をかきたてて、俺のように心霊系ホラーを聞いても全然恐いと思わない奴でさえ、気がつくと汗ビショリだった身体から汗が消え寒いとさえ思わせる話術は見事だと思うよ」
「熱帯夜に彼の怪談を聴くと涼しくなるんで、エアコンの電気代が減って助かるよ」
などのような意見が数多くあった。
だが世の中には彼らのようにホラー大好き人間だけでは無い。
熱帯夜が続く夏の夜、ある男性が熱帯夜にも関わらず布団を頭から被り熱中症で死亡しているのが見つかった。
発見者は、偶に男性の住むアパートに泊まりに来ることのある大学生の従兄弟、彼はアパートの合鍵を男性から預かっていて、その夜も泊まらせて貰おうと来訪したとの事。
布団の側にあったつけっぱなしのラジヲからは、ラジヲジョッキーの深夜番組が流れていた。
現在警察は、男性が何故? 茹だるような暑さの熱帯夜に布団を被っていたのか捜査している。