気分転換、大事です
ジョーは優しくこずちゃんに話しかける。
「怒るっていうのも自分が正しいって思うもののために怒るものだし」
ジョーの橋を渡る。
しっかりした石橋の上を軽やかに走っていく。
「恥ずかしいっていうのも自分を守るために行うものなんだぜ」
「良い面と悪い面があるってこと?」
「そういうことだ」
ジョーは答える。
「そういう感情をコントロールしていけるようになると良いぞ」
こずちゃんはぽかんと口を開ける。
「まだ難しかったかな」
「うん。でも大切なことと思うから覚えておくわ」
「それは良い心がけだ」
「でもどうしたら、こんとろーるできるようになるの?」
「気分転換することも答えのひとつだ」
ジョーは少し考えてから、こずちゃんに話す。
「きぶんてんかん?」
おうむ返しにジョーに聞くこずちゃん。
「そう。音楽を聴いたり、歩いたり、踊ってみたり、日記を書いたり――」
「それで気分は変わるものなの?」
ジョーが話し終える前に、こずちゃんはさらに質問する。
そんなこずちゃんに、ジョーは優しく答える。
「ああ。夢中に没頭できる何かがあればそれで良いのさ。寝るのも良いぞ」
「覚えておくね」
こずちゃんの言葉を聞いて、ジョーはうれしそうに笑う。
「道がでこぼこしてるから、揺れるぞ。しっかりつかまっててな」
景色は草原から地面がむき出しとなったものへと姿を変える。
ジョーの言葉通り、道には小石があちこち落ちていた。
強めの風も吹き、揺れが増す背中に、しっかりと鞍にしがみつくこずちゃん。
その道をしばらく行くと、ログハウスが見えてきた。
ジョーの背中から降りたこずちゃんは、ぐるっとログハウスを一周りする。
矢印はずっと、ログハウスを指している。
「ここが届け先なのかな?」
「それっぽいな」
こずちゃんのつぶやきに答えるジョー。
ログハウスの階段を上り、こずちゃんは扉を軽くたたく。
コンコンコン、コンコンコンと三回ずつノックする。
「留守かな……あれ?ドアに看板がかけてある」
こずちゃんは看板の文字を読もうと背伸びをする。
「『カードを使って扉を開けてください』って書いてあるぞ」
見かねたジョーがこずちゃんに話す。
「よーし。カードね」
こずちゃんはポケットに手を入れる。
「あれ?」
ポケットにはカードが一枚だけ入っていた。