助けてくれたその礼に
「良いの?」
「ああ。乗り掛かった舟ってやつだし、助けてくれたお礼だ」
「ありがとう、ジョーさん」
ジョーは伏せる。こずちゃんが座りやすいように姿勢を低くした。
「むー」
「どうした、こずちゃん」
「さっきみたいにに、荷物みたいに運ばれるのはちょっと」
「またがるにしても鞍がいるからな……」
「それよ!」
ジョーのつぶやきに、こずちゃんは答え、ポケットからカードを出す。
――言葉よ、言葉、言の葉よ
落下防止も兼ね添えた
ジョーさんの背に乗る鞍を
背中につけて現れて
ジョーの背中に鞍が現れる。
「よいしょっと」
「登れるかい?」
「もうちょっと……」
ジョーはさらにしゃがみ、おなかが地面にべったりとくっついた。
「登れた!」
鞍を登り終え、ジョーの背にまたがるこずちゃん。
こずちゃんの肩幅以上に大きいジョーの背に、しっかりと座った。
「オーケー。それじゃあ出発するぞ」
「うん!」
「しっかりつかまっているんだぞ」
「はーい!」
こずちゃんは鞍にしっかりとしがみつく。
ジョーはゆっくりと歩きだし、徐々に速度を上げていく。
揺れる背の上で、心地よく吹く風の中、こずちゃんは野道の花を眺めていた。
「しっかし、どうして動物たちに追われていたんだい?」
ジョーがこずちゃんに話しかけてきた。
「木が倒れて、私のほうに向かって走ってきたの」
「なるほど、だから逃げちゃったのか」
ジョーは苦笑して答えた。
「すごく怖かったんだよ!」
「そうだな。怖かったら逃げる。あたりまえだよな」
ジョーは話す。
「そうなの?」
「ああ。起こったらどなる。恥ずかしかったら隠れる。そんなもんさ」
目の前に段差があり、ジャンプするジョー。
「なんだか怒ったり怖かったり恥ずかしいって気分が悪いものに思えてきた」
「こずちゃん。そういう気分は、大切なものなんだぞ」
「どういうこと?」
「怖いっていうことは、危険を教えてくれるものなんだ」