蔵の中で探し物
神社の境内を母と手をつないで歩くこずちゃん。
午後のうららかな日差しの下、鳥居にとまった鳥のさえずりが聞こえる。
鎮守の森が風にさざめく。
緑に囲まれた神社の中を歩き、母とこずちゃんは蔵に到着する。
「えーと、石はっと」
「石?どのくらいのおっきいの?」
「探してるのはね、こずちゃんの肩幅ぐらいの白くて平たい石三つ」
「なら私あっちさがすー」
「下手に触ると、積んであるものが崩れてくるから。一緒にいようね」
「はーい」
唇を尖らせ、母の言うことを聞くこずちゃん。
「あら、電話だわ」
あちこち探していると、母のバッグから携帯電話が鳴った。
「すぐ戻るから、ここにいてね」
「はーい」
母は電話に出て、外に向かい歩いていく。
「ヒマー」
母が電話に出ている間、こずちゃんは長持に座り、足をぶらぶらさせる。
ふと見ると長持の上に本がある。
「なんだろ?絵本かな?絵本だと良いな」
こずちゃんは本に手を伸ばす。
そして本をめくるこずちゃん。
「字がいっぱいだ……」
字がびっしりと書かれた本を見て。顔をしかめるこずちゃん。
「この紙なんだろ?」
本に挟まっている、魔法陣が書かれた紙を手に取るこずちゃん。
こずちゃんがその紙を青空にかざすと、紙が輝きだした。
★
こずちゃんが気づくと、霧の中にいた。
広い空間にポツンと一人でいるこずちゃん。
「ここどこー?お母さーん」
こずちゃんは母を呼ぶ。
声はあたりに木霊する。
「おや、お客さんかい?」
誰かの声がする。
こずちゃんは周囲を見渡す。
近くには一本の木があるだけだった・
「だれか後ろにいるのかな?」
「くすぐったいなあ」
こずちゃんが木に手を当てて、後ろに回ろうとすると、木が話し出した。
よく見ると、気には目と口がついていた。
「しゃべった!」
「そりゃあしゃべるさ。ここは異世界なんだから」