お届け先についたけど
「もっとあったのに」
こずちゃんはポケットを探す。
別のポケットにも手を入れる。
どこを探しても出てきたのは手に持っているカード一枚だけだった。
「ジョーさんの背に乗ってるときに、落っことしちゃったんだ……」
途方に暮れるこずちゃん。
(届ものしたらカード使っておうちに帰ろうって思ってたけど、どうしよう……)
「どうする?探しに戻るか?」
ジョーが提案すると、強い風が吹き、よろめくこずちゃん。
(カードも飛ばされちゃったかも)
こずちゃんの頭に悪い考えがよぎる。
「どうした、こずちゃん」
心配したのか、こずちゃんに声をかけるジョー。
「そういう気分になったら、どうしたら良いと思う?」
「そっか。きぶんてんかん!なら、歌うね」
こずちゃんは歌いだす。
お母さんがよく歌う歌を、テレビでやっている歌を、こずちゃんは歌う。
「落ち着いたか?」
「うん。ありがとう、ジョーさん」
ジョーにお礼を言うこずちゃん。
「カード使うね。そのあとはその時考えるよ。明日は明日の風が吹くもの」
こずちゃんはジョーに話しかけ、カードをかざし、魔法を唱える。
――言葉よ言葉、言の葉よ
目の前にあるこの扉
鍵を開けてくださいな
魔法を唱え終えると、ジョーの背についた鞍が消え、カチッという音がなる。
こずちゃんがドアノブを回すと、扉が開いた。
「お邪魔しまーす」
扉を開けこずちゃんは、ログハウスの中に入る。
ログハウスの中には箱があった。
箱の前には立札がある。
『人形はこの中へ』
こずちゃんはリュックから木の人形を出し、箱の中に入れる。
箱に入れ終えると、こずちゃんのおなかが鳴る。
「お腹すいたのか?」
ログハウスに入ってきた、ジョーが尋ねる。
「うん」
「なら、帰ろうか」
ジョーが言葉を発すると空間がゆがむ。
「そっちの空間を通ると、元の世界に帰れるぞ。それともこっちに来るか?」
ジョーは扉の先に鼻を向けて、こずちゃんの答えを待つ。