✒ 大航海 10
──*──*──*── 翌日
おっかないバユーダ海域に入ってから2日目の朝、霧は嘘みたいに晴れていた。
霧は無くなっていたけど、別の物が海面にプカプカと浮かんでいた。
これが障害物なのかも知れない。
マオ
「 セロ──、この海面に浮かんでいる障害物って何なのかな? 」
セロフィート
「 あぁ…これ等です?
死体です 」
マオ
「 し…死体?!
死体って…何の?? 」
セロフィート
「 大鯨,大鮫,大鯱,海竜…等々の──特に体の大きな海洋生物の死体です 」
マオ
「 え゛ぇ゛ぇ〜〜…… 」
セロフィート
「 此処はバユーダ海域の中ですから、死体は腐敗せずに漂流してます 」
マオ
「 じゃあ…この船は漂流してる死体の中を進んでるのか? 」
セロフィート
「 そうなります。
暫くはこの光景が続きますよ 」
マオ
「 …………マジかよ…。
死体が浮いてる中を進むのかよ……。
何で腐敗しないままなんだ? 」
セロフィート
「 “ バユーダ海域だから ” としか言えません。
ワタシも原因迄は知りません 」
マオ
「 そうなんだ…。
どの道、死体を見ながら食事は出来ないよ…。
セロ、朝食は船内でしようよ 」
セロフィート
「 はいはい 」
セロは指定席にしている1人用のクッションから腰を浮かせて立ち上がると、船内へ向かって歩いてくれる。
多分だけど、セロは死体を見ながらでも平然と食事が出来ると思う。
オレには到底出来ない事だ。
だけど、セロはオレに合わせてくれる。
別にセロがオレに合わせる必要なんて何処にもないのにだ。
こういう些細なセロの優しさが嬉しい(////)
元々惚れてるけど、益々惚れちゃうよ!!
セロフィート
「 マオ──、どうしました?
船内で食べたいのではないです? 」
マオ
「 今行くよ! 」
セロに呼ばれて船内へ向かって歩こうとした時、真っ黒なフード付きマントを羽織った人影が見えた。
マオ
「 誰か居た!?
あれは…舟……だった?? 」
セロフィート
「 マオ、どうしました? 」
マオ
「 セロ!
今、舟に誰かが乗ってた! 」
セロフィート
「 ははぁ…。
大方バユーダ海域から出られない行方不明者達でしょう 」
マオ
「 えと……人間が居るのか? 」
セロフィート
「 稀に見掛けますよ。
見付かっても面倒ですし、外からこの船は見えないようにしてます 」
マオ
「 助けないのか? 」
セロフィート
「 はい?
助けるとは? 」
マオ
「 バユーダ海域の中から助けるんだよ!!
セロなら簡単に出来るだろ?
転移魔法を使って元の大陸へ帰してあげる事ぐらい朝飯前だろ 」
セロフィート
「 はぁ?
ワタシに人間助けさせる気です?
マオ…、ワタシは『 人間助けは嫌いです 』と何度も言ってるでしょう… 」
マオ
「 それは知ってるよ!
だけど、さ迷ってるんだから助けてあげようよ! 」
セロフィート
「 嫌です。
駆除はしても人間助けはしません 」
マオ
「 セロ… 」
セロフィート
「 聞き分けてください、マオ。
バユーダ海域内は他の魔の三角水域と繋がってます。
全ての行方不明者を元の大陸へ帰す事は出来ません 」
マオ
「 そんな…… 」
セロフィート
「 そんな顔をしないでください、マオ 」
マオ
「 だってさ……魔の三角水域に入った日からずっと出口を探して、さ迷ってるんだろ?
オレには…セロみたいに何とか出来る力なんて無いよ!
無力で役立たずだけど──、それでも何とか出来る方法があるなら、何とかしてあげたいんだ!! 」
オレはセロの腰に抱き付いた。
何とかセロに助けてほしくて、オレは必死に懇願に近いお願いし続けた。
セロフィート
「 マオ…。
気は済みました?
済んだなら朝食にしましょう 」
駄目だった…。
オレが熱心にお願いした所で、セロは人助けをする気にはならないみたいだ。
オレは本当に無力で役立たずな奴だ……。