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4日目の、陽も傾きかけた頃に、私たちは王都の城壁の中へ入った。
美しい尖塔が次第に近づいて、馬車は王宮の敷地に滑り込む。
私たちは、宮殿と庭園を挟んで向かい合う、賓客の館に通される。
案内役の侍従が、祭主へ、今夜使節を歓迎するための祝宴が予定されていることを告げる。
祭主が、刻限を確かめてから承知すると、侍従は、拝謁の手順と祝宴の大まかな流れを説明して、拝謁の時間に迎えにくることを伝えて退出した。
「さて、皆さん。これからが、使節の務めの始まりです。教団の、公会の代表として、恥ずかしくない振る舞いを心がけて下さい」
そのあと、一人ずつ割り振られた部屋に、自分の荷物を運ぶ。
部屋は、信じられないような場所だった。
広さは、寮徒の部屋の数倍はあり、床一面、毛足の長い絨毯が敷きつめられている。
部屋の要所要所には、落ち着いた色の、しっかりとした造りの家具が置かれ、座って化粧を整える、鏡の付いた机まである。
寝台には天井があり、そこから飾りの幕が垂れ下がり、枕や寝具も今まで触れたことがない、柔らかな物だった。
大きく広い窓からは庭園が見渡せ、窓の帷は、厚手のものと、向こうが透けて見える薄手のものの二重だ。
どちらにも、華麗な刺繍が施されている。
扉を開けた瞬間、思わず歩くのを忘れて立ち止まってしまったけれど、気を取り直して中へ入り、荷物を収めて身支度を調える。
そのあと、最初の部屋に集まり、みなで降餐の祈りを済ませた。
しばらくして、侍従が私たちを呼びに来たので、侍従の後ろに付いて謁見の間へと進む。
庭園を横目に回廊を歩き、宮中へと入る。
建物は大きくて立派だけれど、建物の造りそのものは、どちらかと云えば簡素で力強い。
けれど、端々の意匠や細工は、細かなところまで行き届いていて、建物の主が、特別な人物だと伺わせるのに、充分だった。
特別な場所に見合う、調度と装飾に満たされた廊下をしばらく行くと、大きな両開きの扉あって、左右に侍従が控えている。
案内の侍従が一礼して使節の到着を告げると、両脇の侍従が扉を開けた。
とても幅の広い廊下のような部屋の中央に、一本の緋色の絨毯が敷かれ、この部屋の主への道を示している。
右側の奥の壁際には、数人の侍従と重臣が立つ。
正面の奥は一段高くなっていて、その左にクレイズが佇む。
そして一段高い中央に玉座、そこに王が座す。
年は四十歳くらいだろうか。
端正な顔立ちに金色の髪で、雰囲気が、どことなくクレイズに似ている。
背は高く細身で、恰幅が良いという感じはない。
けれど、さすがは王。ただ玉座にいるだけで、思わず頭を下げさせる威厳を漂わせている。
「祝宴でも、改めて礼を述べるつもりだが、まずは大儀であった」
王が、私たちを労った。
祭主が、恭しく礼をとり、
「陛下には、こたびの我々の訪問をご承諾いただき、感謝にたえません。この出会いが良きことをもたらすよう、願っております」
王が大きく肯いて同意を示し、侍従に目配せすると、それで謁見は終わりとなり、私たちは控えの間に案内された。
控えの間で待つほどもなく、私たちは大広間に案内される。
大勢の着飾った男女が左右に立つ中を、正面に座る王のもとへ進む。
王は使節を労い、感謝の意をあらわす。
祭主が答えて、王への感謝を述べる。
挨拶のあとは、今日の出会いに感謝する乾杯へと続き、終わるとともに演奏が始まった。
聞いたことのない楽器が、聞いたことのない音楽を奏でる。
澄んだ音を奏でる様々な大きさの弦楽器や、大きさから形まで違う色々な種類の笛。
その音色の強弱と高低が見事に絡み合って、一本の美しい旋律により合わさってゆく。
時々、卓子の上に並んだ食事に手を伸ばしながら、とても幸せな気分で音楽を聴いた。
ときどき、聖謡を音楽に重ねそうになり、慌てて口元を押さえることを何度か繰り返すうち、三曲目の途中で、侍従達が卓子と腰掛けを壁際に移動させ始めた。
私は、あっと思って、階段を昇り、広間を見下ろす回廊に避難した。




